彼は持たざる者、されど踠く者 その踠き寄せた幸運は本当に幸運だったのか

 本作は外伝ではありますが、初見の方でも安心して読める作品となっています。ただし、本編を読んでいると、たまにニヤッとするシーンがあります。

 主人公となる孤児院出の少年クロエは、お金もコネも戦闘技能も無い中、生きるため狩人になります。彼は人に会えばおどおど怯えてしまう気弱な少年であり、到底パーティーを組めるような人物ではありません。そんな彼の武器は最後まで諦めない意思、「踠く(もがく)」力であり、この過酷な世界で辛くも生き延びていきます。その泥臭い姿に人間味を感じることかと思います。

 後半では、彼のとある特異な性質に気づいた男に目をかけられ、自身の存在意義を見出していきます。しかし、果たしてそれは彼にとって幸運であったのか不運であったのか……それは読み手の判断にも寄ることでしょう。

 皆様も是非、この泥臭くも踠く少年の生き様をご覧いただければと思います。