ヤキモチ

次の日、梨寿りじゅと井田さんは、やってきた。


「二階に持ってくよ、荷物」


「ありがとう」


10年間過ごした荷物は、まだ全然仕分け出来てなくてあちこちに梨寿の物があった。


「井田さんの荷物、全部いれられるかな?」


「井田さんじゃなくて、真白ましろでいいですよ」


「真白さんの、荷物はいりますか?」


「荷物は、少ない方ですから…。減らせばすみますし」


「ベッドは、どうしますか?」


「私が使ってたのは、シングルだから。真白のがいいよね?セミダブルだし」


「そうだね。」


「俺も、千尋が使ってたセミダブルにしたんだよ。二人のベッドは、捨てに行くまで真ん中の部屋に置いてるから。」


「そうなんだね。」


「近いうちにトラック借りて、捨てに行くよ。真白さんの物も、いらないのは持っていきますよ。」


「家の解約は、来月になるので、取りにきてもらえますか?」


「構いませんよ」


俺は、梨寿と真白さんの荷物を持っていく。


「ごめん。俺も手伝うよ」


「千尋、おかえり。よろしくね」


千尋は、探偵に早坂さんを探してもらう依頼をして帰ってきた。


「どうだった?」


「来週、また連絡くれるって」


梨寿と真白さんが、持ってきた荷物を運び終わった。


「今日は、向こうに帰る?」


「うん」


「明日、ベッド取りに行こうか?トラック借りて」


「そうだね。お願いするね」


「わかった、じゃあ下にいるよ。」


俺は、千尋と降りていく。


「千尋、ヤキモチ妬いてる顔してる」


「やっぱり、奥さんに敵わないなぁー。俺」


「何で、そうなるんだよ」


「だって、さっきの由紀斗さんの笑顔見てたら、そう思った。10年は、長いよ」


「不安にさせて、ごめんな」


俺は、千尋を引き寄せて抱き締めた。


「由紀斗さんが、奥さんをまだ愛してるのわかるよ。二人は、まだ戸籍上は、夫婦だから」


「俺と梨寿の愛は、千尋や真白さんへの愛とは違うものだよ。」


「わかってる。それでも…。二人の絆は、すごいよ。子供が出来ない事なんかどうでもよかったんじゃないのかな?」


「そんな事、言わないでよ。千尋」


千尋のヤキモチが、堪らなく可愛い。


「もう、二人が降りてきたらどうするんだよ。コーヒーいれてきて」


千尋は、顔を真っ赤にしてあっちに行ってと言った。


「ごめん。終わったから、帰るね」


「コーヒーいれるから、梨寿は、カフェインレスいれるよ。座って」


「ありがとう」


梨寿は、真白さんを呼んだ。


真白さんは、千尋を睨んでいる。


「コーヒーどうぞ」


「どうも」


「真白さんは、千尋が嫌い?」


「イケメンは、好きじゃないし、梨寿が、誘惑されたら嫌」


「千尋は、そんな事しないよ」


「そんなの、わからないから嫌なの」


梨寿も、少し困っているようだった。


「きっと不安なのは、梨寿が他にいっちゃう気がしてるからでしょ?だけどね、元旦那からのアドバイス。梨寿は、この人だと思ったらその人しか見ていないよ。10年間、傍に居た俺が保証するから。後、千尋もこんな風に見えて一途なんだよ。」


その言葉に、真白さんは泣いていた。


「ごめんね。また、ヤキモチを出さなくなっちゃった。私が悪いんだよね」


「ううん。私が悪いんだよ」


梨寿が、真白さんを好きなのはよくわかる。


「せっかくだから、飲みませんか?」


「私が、運転するから真白飲みなよ。」


「なんか、食べ物頼もうか?」


「それなら、私と梨寿さんが作ります。」


「買い物行こうか」


「うん」


二人は、家を出ていった。


「千尋、ずっと黙ってなくてもよかったのに」


「何か言う方が、神経逆撫でするでしょ?現に、梨寿さんは、魅力的だよ。昔の俺なら振り向かそうとしたよ。」


「千尋」


「今はないよ。由紀斗さんが、すげー好き。ううん、好きじゃ足りないし、愛してるでも足りない、何て呼べばいいかな?」


「さあな」


俺は、キッチンに向かった。

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