友達は、嫌だけど…

話を聞いて、ますます大宮さんが好きになった。


友達は、絶対に嫌。


でも、こんな風に過ごせないのはもっと嫌だった。


「店長は、好きな芸能人いますか?」


「いますよ。ナリミです。」


「あー。モデルさんから女優になった。綺麗な顔ですもんね」


「そうですね。演技もうまくなってきてるんですよね」


「こないだのドラマ見ましたよ。(昇る月の青さには…。)です。」


「見てくれました?あの、ミナミ役も最高でした。」


「そうですね。」


一緒にドラマを見れたら楽しいだろうな…。


ネグレクト…。


大宮さんは、そんな感じに見えないのが不思議。


虐待されてるように思わなかった。


「温かい飲み物いれましょうか?」


「いえ、大丈夫ですよ。」


「いれてきますね」


私は、キッチンに行った。


寝る前に飲む、カフェインレスの紅茶をいれてあげよう。


大宮さんの手を繋いで歩く日がいつかこないだろうか?


電気ケトルで、お湯を沸かす。


私は、紅茶をいれる。


これから先の大宮さんの事を支えていくのは、私がいい。


「はい、カフェインレスです。お砂糖とミルクいるならどうぞ。」


角砂糖を二ついれた。


大宮さんは、角砂糖二つ。


覚えたよ。


「美味しいです。これって、茶葉からですか?」


「はい。寝る前ように、買ってます。」


「茶葉からは、美味しいんだ。」


キスをしたい。


抱き締めたい。


くっつきたい。


邪な気持ちが、駆け巡っては消えていく。


でも、女だから来てくれたんだよね。


裏切りたくない…。


「大宮さんは、ご家族はお姉さんだけですか?」


「はい、今はそうですね。店長は?」


「私は、妹がいます。父母共に健在ですが、絶縁しています。いわゆる毒親ってやつですね。」


「毒親ですか?」


「虐待とかではなく、女の子はこうしろ、ああしろって言うタイプです。型にはめたがるってやつですね。」


「優等生を作りたいって感じですか?」


「そう、それです。まあ、そのお陰で店長になってるんですけどね。妹は、絵にいたような真面目ちゃんですよ。まあ、何年も会っていませんが…。」


「生きてる間に、許さなくちゃダメですよ。」


大宮さんは、私の手を握りしめてそう言った。


「どうしてですか?」


「言葉を交わせるうちに、許さなくちゃ…。私みたいに、ずっとしこりになって、前に進めなくなりますよ。私は、足を見る度に振り出しに戻ります。あの日、嘘でも許すと言えていたら違ったのかもしれません。」


大宮さんは、紅茶を飲む。


涙が、紅茶にはいるのが見えた。


痛みや苦しみを取り除いてあげたい。


私が、出来る事を全部してあげたい。


「いつか、許せる日がきたら一緒に会いに行くのついてきてもらえませんか?」


「いいですよ。」


そう言って、笑ってくれた。


「歯ブラシ出しますね。ストックあるので」


ドキドキを誤魔化す為に、洗面所に歯ブラシを取りにきた。


息が止まるかと思うぐらい、鼓動が速くて、窒息するかと思った。


「大宮さん、歯ブラシどうぞ」


「ありがとうございます。」


沢山泣いて、自分の心を見せた大宮さんは疲れて眠そうだった。


「歯磨いて、寝てください。こっちです。」


私は、大宮さんを洗面所に案内した。


歯を磨いてる大宮さんを見てると一緒に住んでるみたいだった。


うがいをして、大宮さんが私を見た。


「朝、シャワー浴びにいったん帰りますね。」


「はい、送ります。」


「映画は、昼からですね。楽しみです。」


また、心臓が速くなる。


「こっちです。ベッドに寝てください。」


「悪いですよ」


「いいんです。」


「お風呂はいってないですし…」


「私もたまにお風呂はいらない日ありますから」


「じゃあ、一緒に寝ませんか?」


「えっ?」


「店長が、歯を磨き終わるまで待ってます。」


「じゃあ、先に横になっていて下さい。」


「はい」


大宮さんは、横になって目を閉じた。


一緒に寝るなんて、心臓が持つだろうか?



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