アピール

次の日、大宮さんは普通に出勤してきた。


「体調大丈夫?」


「はい、ご心配おかけしました。」


「大宮ちゃんいないと寂しかった」


「今日は、俺が米炊くから」


「お願いします。」


大宮さんがやってくるとみんなが大宮さんを囲む。


イライラする。


「あら、明後日から出張なの?今日は、早く帰らなきゃね」


「はい」


帰したくない。


丁度よかった、試作品届いてたんだ。


大宮さんに味見してもらおう。


大宮さんは、6時にあがる。


「お疲れ様でした。」


「大宮さん、ちょっと残れますか?」


「えっ、あっ、はい」


早く帰したくなかった。


「これ、味見してもらえる?」


「はい」


大宮さんが、食べたフォークで食べる。


「何かチーズの味気がないですよね?」


「塩足してみる?」


「足してみましょう」


私は、塩をふった。


「どうかな?」


「うん。いい感じですよ」


「本当だね、本部に報告するね」


私は、大宮さんの腰を持った。


「店長みたいに痩せてないですよ。」


頬を赤らめてる。


「ムチムチしてていいと思いますよ。私は、太れないから」


わざともっと引き寄せた。


「あの、何か恥ずかしいです」


可愛くて、キスしたい。


「大宮さん、足大丈夫?」


「はい、大丈夫です。」


わざと、大宮さんのお腹をじかにさわった。


「店長、あの冷たいです。」


「冷えちゃうよね?ごめんね」


「今、あの生理なんでお腹痛くなってしまうので」


ギューって抱き締めてしまった。


「えっと…どうしました?」


「どうしても、こうしたいの」


「無意味なのに、生理きちゃって落ち込んでたから嬉しいです。私、女として無駄ですよね。変わってあげたいな。女の子になりたい人と。だって、私は女性の無駄遣いでしょ?」


「何で、そんな事いうの?そんな事ないよ。大宮さん」


大宮さんを支えて、守りたい。


いっそう強く込み上げた。


でも、抱き締めてあげるしか出来ない私が情けない。


「店長、優しいですね。女の人に抱き締められたのって、昔仲良かった友達以来です。嬉しかったです。」


私は、全身で愛を伝えたいぐらい大宮さんを愛してる。


「スッキリしました。ありがとうございます。」


「もう少しだけ、このままでいさせて」


「はい、わかりました。店長も辛い事があったんですね」


大宮さんは、優しく私の手を握る。


このまま、大宮さんを抱きたい。


こんなに、愛しい気持ちが沸き上がって止まらない。


泣きそうなぐらい好きだよ。


「ごめんね。ありがとう」


「いえ、では帰ります。」


「お疲れ様」


一時間半も引き留めていた。


もう、気持ちに嘘がつけない。


どうにかして、私のものにしたい。


「店長、お疲れ様でした。」


「お疲れ様です。」


23時に閉店した。


「黒瀬さんって、大宮さんどう思ってる?」


黒瀬さんと二人で、片付けをする。


「どうって、いい人だと思いますよ」


「それだけ?」


「できたら、抱きたいですね」


そんな綺麗な顔で笑わなくても…


「そう」


「ってのは、本音ですよ。まあ、叶わないのわかってても、俺、大宮さんに一目惚れしちゃったんですよ。別に隠す事でもないですから」


そう言って、黒瀬さんは洗い物をしてる。


私は、それをふいていく。


「既婚者ですよ」


「知ってますよ。子供いないの悩んでますよね?子連れが、弁当買いに来るとどこか寂しい顔してるんですよね。それが、切なくて胸が締め付けられるんです。あんな綺麗な人でも手に入らないものがあるんだなって…。足だって、そうでしょ?なりたくてなったわけじゃないと思うんです。」


「本当に好きなんですね」


「はい、支えてあげたいですよ。でも、不倫は駄目ですよね」


そう言って、黒瀬さんはフライパンを洗ってる。


「そうですね。」


「仕事で支えるだけで、充分です。店長も大宮さん好きですよね?」


「えっ?それは、仕事仲間として」


「違うのわかってますよ。店長は、恋愛として大宮さんが好きです。ライバルだってわかってますよ。まあ、既婚者ですから…。職場で、支えましょうね」


「そうだね」


黒瀬さんに笑いかけられて、頷いた。


バレてるとは、思わなかった。


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