十三小体育館の解決 その①

 ぼくは完太かんたくんの話を聞き終えた。

「ってわけだ。四十万しじま友達ともだちったらお前くらいだろ。脱出するのに手をしたんじゃないか」

「それはちがうよ」

 ぼくはなぎちゃんにいっさい手をしてなどいない。

 そして彼の友達ともだちであるところのぼくには一つだけ、完太かんたくんにはわからない謎がとけていた。


「でも、謎めいたメッセージの意図いとはわかったよ」

「本当デスか? 早くないデスか?」

「やっぱこいつ、グルじゃないデスか?」

「グルじゃないよ。気づけたのはぼくの頭がいいからというより、みんなが知らないことを知っていたからだけど」

「オレたちが知らないこと?」

「うん。ぼくたちは、昨日の4時にいっしょに帰る約束をしていたんだ」


 グループチャットにメッセージが来たのは4時すこし前。そして4時にゲタ箱にあらわれたときのなぎちゃんは体操着ではなく、かつ、息をきらしていた。


なぎちゃんは教室にいた完太かんたくんたちがジャマだったんだよ。体操着から私服にきがえるためにね。だからみんなを教室からどかす必要があった」

 三人が教室を出ていってから、なぎちゃんは私服にきがえた。そして4時に間に合うようにゲタ箱に走っていったというわけだ。そう考えると、ぼくの前では息をととのえて、なにごともなかったかのように本を読んでみせていたのが可愛らしい。


「あいつって、スマホ持ち歩いてるのか?」

なぎちゃんは学校には持ってきてないはずだよ」

 一応、ぼくもそうだ。

「じゃあどうやってメッセージを送ったのかは謎のままだな」

「でも、そこは大した謎じゃない。実はこっそり持ってきていたとか、いくらでも方法はあるからね――。さて。じゃあ体育館にいこうか」

 完太かんたくんは目をまるくした。

「いくって、なんでだよ?」

「決まってるでしょ」


「十三小体育館が、本当に密室みっしつだったのかどうかをたしかめるのさ」

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