第15話 広告忍者撃退作戦

そいつに化けていたのは、広告忍者アド・ニンジャという暗殺専門のアド・ロイドだった。奴らは人間は直接襲わないはずであったが、スパム・ボムを作成した俺たちはそうもいかないらしい。正体を現したUAGの広告忍者はアド・クナイを逆手に持って目にもとまらぬ速さで俺らに襲い掛かり、あいさつ代わりに二人を切り捨てた。


「スパム・ボムは既に我々が預かった。パルチザンにしてはなかなかの出来だったと誉めてやろう・・・おかげでこの戦争、我々UAGが優位に立てる・・・」

「ふざけるな、あれを返しやがれ!」

「返してほしくば拙者を倒すんだな。最も無理な話だろうが・・・では、御免!」

「野郎ども!奴は接近戦型だ、近接格闘に切り替えろ!!」

「遅いっ!」


そいつの動きはまるで人間の目視できる速度ではなかった。捉えたかと思えばすでにそいつは同士の喉笛をかっきって次の得物に移っているのだ。一人、また一人と同士が殺されていく中、俺はただ、その有様を目に焼き付けるしかなかった・・・


「神宮、逃げろ!・・・ぐあああ!!」


ああ、なんてことだ。とうとうボスまでが切り殺されてしまった。俺たちはまんまと罠にはまってしまったのだ。それを後悔することもなく殺されてしまった・・・それなりに死線を潜り抜けている皆が束になっても勝てないのだから整備士上がりの俺なんて到底かなうはずがない・・・逃げなければ!!


俺は恐怖で震える体をどうにか動かしトラックのキャブへと縋りついた。だが・・・


「仲間を見捨てて自分だけ逃げようとは、なんとも卑怯な輩だ。」

「ひいっ!!」


奴はすでに俺を捉えていた。腕をつかまれた俺はそのまま引きずりおろされて奴に仰向けに組み伏せられてしまった。クナイの刃先がすでに俺の首と紙一重の近さまで突きつけられている。いよいよ俺もおしまいか、もうここまでなのか、くそっ。


「こ・・・殺す前に、一つだけ、聞かせてくれ・・・」

「・・・言ってみろ。」

「お前たちUAGや・・・μ社にはもう”人間”は居ないのか?武器開発も全部機会がやってるのか?」

「・・・μ社の事は存ぜぬが、少なくとも我々は現時点全ての部門において人間を排除済みだ。無論、武器開発もな。」

「!!・・・じゃあ、一体お前たちは何のために、この戦争を続けてるんだ。この戦争はもとはと言えば人間が始めたんだろう!?」

「拙者の知る限りでは、戦が始まったときには、既に広告社の意思決定は全て機械に置き換えられていた。」


俺は再びなんてことだと驚愕した。この戦争は広告社の人間が起こしたものではなく、機械即ちアド・ロイドたちが起こしたというのか!今の今まで知らなかったという事から、二社による情報統制の精度の高さがうかがえる。ただの商売敵同士の競争がなぜ戦争になるのかはなはだ理解できなかったが、機械がその発端だった、と言われると不思議と腑に落ちてしまう。大方、競争原理が過激化してとうとう戦争にまでなってしまったのだろうか。


「では、もういいだろう。貴様を仲間の所へ送ってやる。」

「・・・やるなら早くやれ。」


戦争自体金がかかるというのに、自分らが相手よりもいっぱい設けて出し抜くためにわざわざ多額の金をつぎ込んで戦争をするなんて・・・狂ってる。意思決定の場から人間ストッパーを排除した時点で、既に暴走は始まっていたのだろう。俺たちはその暴走に振り回されて、いつか滅びてしまうのだろうか・・・いや、もういくら考えても無駄だ、俺はもうすぐ死ぬのだ、死にゆく人間が人間の行く末を憂いてどうする・・・


クナイがギラリと光を反射して、俺に振り下ろされた。俺はもう覚悟を決めて瞼を強く閉じた。その瞬間だったろうか、その言葉が聞こえたのは。




「アヨガン!!」




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アド・ウォーズ~広告戦争~ ペアーズナックル(縫人) @pearsknuckle

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