第3話 ジョブ習得

「お前。何考えているのか知らないけど、冒険者よりもマシな仕事ぐらいあるだろう」


 ギルドの建物から出ると、青年はカノンから手を離して怒った。


「すみません。家から追い出されてしまって……他に頼れる所を知らないんです」

「はんっ。親と喧嘩でもして家出でもしたのか。さっさと帰れよ」


 くだらない理由で冒険者になろうとする少女を、青年は鼻で笑った。

 そして放っておいてギルドの建物に入ろうとした。

 でもカノンの次の言葉で足を止めた。


「家は無いです。お父様の借金に取られてしまいました」

「……ああ、そうかよ。その親父はどこにいるだ?」

「分かりません。待っているように言われて、今日まで待っていました」

「…………」


 18歳の青年はただの家出少女と思って話を聞いていた。

 でも家族に捨てられた少女だった。

 しかも勝手な想像で、手元に残った金で冒険者になろうとしている、根性のある少女だと高評価している。


「何だよ、そういう事情かよ。ジョブは何を習得しているんだ? 冒険者向きなんだろう」

「ジョブ……? それは何ですか?」

「マジかよ。極悪人じゃなければ15になれば、誰だって習得できるもんだぞ」

「そうなんですか?」


 世間知らずのお嬢様には一般常識がない。

 屋敷で教わったのは、政略結婚相手に気に入られる方法だけだった。

 お茶と下手なダンスは、あまり役に立たない。


「仕方ないから教会まで案内してやるよ。ジョブを習得するには1000ギルド必要だからな」

「本当ですか‼︎ ありがとうございます!」


 青年は呆れながらも、カノンに協力することにした。

 下に手のかかる弟と妹がいるから、面倒見がよかった。


「冒険者になるなら、武器も道具も必要だ。素手で出来る仕事は少ないからな」

「武器ですか? 本よりも重たい物は持ったことないです」


 教会に連れて行けないパトラッシュを馬小屋に残して、二人は教会に向かった。

 教会に到着すると、カノンは青年に教えられた通りに寄付して、祈りの間で神様に願った。


「神様、私にジョブを授けてください」


 天井のガラス越しに日の光が入り、真っ白な神聖な祈りの間を明るく照らしている。


「わぁ~!」


 カノンの祈りが通じたのか、驚くカノンの足元に青白く輝く魔法陣が出現した。

 丸い魔法陣の中に、ステータス、ジョブ、スキルがスラスラと青文字で書かれていく。


【名前=カノン・ネロエスト 種族=人間(女) 

 レベル=1(必要経験値0/10) HP=162/180 MP=70/80

 力=6 体力=6 知性=7 精神=8 器用さ=5 素早さ=5】


【ジョブ=見習い道具師

 スキル1=道具の情報を見ることが可能

 スキル2=MPを消費して、壊れた道具の修復が可能

 スキル3=所有権のある持ち物に経験値を獲得させて、レベルアップさせることが可能

 スキル4=進化レベルに達した道具を、MPを消費して進化させることが可能】


「わあ、わあ、わわわわっ⁉︎」


 魔法陣に全てが書き終わると、文字が浮かび上がって、力がカノンの中に入り込んだ。

 HP、MP以外のステータスの女性平均は13だから、ステータスは半人前以下だった。

 でもジョブとスキルには恵まれた。


「あっ、終わったんですね。急がないと」


 カノンは儀式が終わったのに気づくと、外に急いだ。

 青年が待ってくれている。

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