第16話 復讐

私がクロンを城に呼んでから、1年が経った頃。


クロンが城で迷子になった。


私がクロンを探しに行くと、ガラスの中にいたワイバーンをずっと見ていた。


「ねえ、お母さんは何でここに居るの?」


「私がワイバーンを使ったんだよ」


「何に?」


「君の町を破壊するために」


突然、クロンの顔は絶望の顔へと変化した。


「じゃああの時……。お姉さんは助けに来たんじゃなくて……」


「私はこの町に復讐しようと思ってたけど、君が可哀想な顔をしていたから君だけ助けてあげたんだ」


「ヴィラン……許さない!!」


クロンは小さい剣を持って私に近づいてきた。


「もうヴィランという名前はやめろと言ってるだろ。ヴィランという名前は知られすぎた。これからはビラと呼べと言ってるだろ!!」


クロンの剣は私の胸に刺さったが、全然効かなかった。それもそのはず。クロンのレベルは1。


私のレベルは100。


「君に私を殺す事は無理だよ。来世で頑張りな」


「……」


それから1年後、ついに来世に行っても監視できるようにカメラを作る事に成功した。


「クロン、お前はこれから一生転生を繰り返してもらう。実験台だ」


「はい……」


私が剣でクロンを刺し、クロンは現実世界に転生した。


名前を海斗と名乗って。


転生すると歳はランダムで設定される。


転生した歳は12歳。


そして、間も無くして私は病気になり、次のヴィランをティランに託して、私も転生した。


私も12歳に転生した。


その時、前世の記憶は無かった。2人は病院で出会い、仲良くした。


この時、海斗は私に恋をした。


そして、海斗は先に死んだ。


海斗は再び異世界に戻ってきた。異世界に戻ってきた時、海斗は私に抱いた恋心をすっかり忘れていた。


「クロン、記憶のカセットで思い出せ。全てを」


クロンは記憶のカセットをスマホに入れ始めた。そして、前前世の記憶を取り戻した。


「ティラン、僕には復讐したい相手がいます」


「ビラの事か?」


「はい……。僕のお母さんをあいつは……」


「私もビラには悪用されていた。権力のためだけに。この薬を飲め」


ティランはクロンに来世も転生できる薬をくれた。


「本来、転生は2回までだが、その薬を飲めば何回でも出来る。お前はとにかくビラを殺せ。そして、こちらの世界に連れ戻して来い。こっちの世界であいつを殺せば、2回転生しているからもう出来なくなるはずだ。私も、これから現実世界に行って、お前の様子を見守るから……」


「はい」


そして、クロンは現実世界に再び行った。


年齢は23歳。ティランも現実世界に行った。年齢は15歳。


そして、真夜中、海斗は私を刺した。


しかし、私が異世界に来た瞬間、突如ヴィランに名乗りを挙げたのがクリスティーヌだった。


彼女は、この世界の人間全員を殺して、孤独な世界を作ろうと考えていた。


そこで、彼女は、3つのミッションを作り上げた。


少しでも人口を減らすために……。


その考えは的中し、第1ミッションで死ぬ人がたくさん増え、第2ミッションに進む人はいなかった。


ティランとクロンも異世界に戻ってきた。


「ティラン、僕辛いよ……」


「どうしたの?復讐出来たんでしょ?」


「うん。でも、殺した瞬間、僕の心が痛くなったんだ」


「どういう事?」


「現実世界で僕はビラに恋をしていたんだ。ビラを殺した後、自分が現実世界で恋をしていた事に気付いたんだ……」


「だからどうするつもりなの?」


「僕、罪を償いたい。ビラをもう1度現実世界に戻してあげたい!!」


「どうやって……?」


「ミッションをクリアさせるんだよ」


そう言ってクロンはティランの元を離れた。そして、私の目の前に現れて助けてくれた。






「真澄、本当にごめん。復讐という目的だけでお前を殺してしまって……」


「私もごめん。海斗のお母さんを勝手に使って……」


そして、私達は抱き合った。


ピロン


スマホの音が鳴った。スマホを取り出すと、画面に現実世界に戻れる薬が現れた。それを取り出した。


「今、記憶のカセットが不足していて。僕も次の人生が最期かもしれない」


「私、もう1度海斗と会えるなら死んでも良いよ」


「僕も。現実世界で会えるなら……」


「海斗、必ず会おう。来世で」


「うん。絶対に会おう」


そう誓い合い、私達は薬を飲んだ。


そして、お互いの胸を刺しあった。


異世界より私達はやっぱり現実世界の方が良いや。


私達はゆっくり目を閉じた。

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