第15話 裏切り者

ヴィラン町まで戻ってきた私達は、衝撃を受けた。ヴィラン町の家は全て壊されていた。そして、1人の女性が現れた。あの時の人だ。


『あなたが私のお父さんを殺したんですよね。私はまだ許してませんからね』


『いや……勘違いじゃないわ。その顔……。私は1度も忘れた事が無いから』


あの時の言葉が今になって全てわかった。私は、前前世でヴィラン女王となり、この町をワイバーンで破壊してしまった。


「また……あなたがやったの?」


「今回は違う。でも、あの時は本当にすいませんでした」


「人を殺して許されると思ってるの?私達に罪は無いのに……」


「すいません……」


あの時は復讐心で心も頭も一杯だった。でも、今考えてみれば、全て悪かったと思う。


「早くここから出て行って……」


「はい……」


「待って!!お姉さんは悪く無いよ」


さっき出会ったクリスが私たちを守ってくれた。


「いや、私が悪いの……」


「だって私を助けてくれたもん。本当の悪者なら助けてくれないよ……」


「クリス、また嘘をついてるの?」


クリスのお母さんなのかな……。


「嘘じゃ無い!!本当だよ」


パチン


その女性はクリスにビンタをした。


「全てあの女が悪いんだよ!!早く出て行け!!この異世界から。」


「分かりました……」


「待て。ティランだけはこっちに来い」


「え……どうしてティランの名前を知ってるの?」


「……気づかなかったんだね。私の正体に。私はクリスティーヌ。第3代ヴィラン女王だ」


「何で……ここに居るの?」


「ミッションお疲れ。私は、あなたを異世界から追い出すためにこのミッションを計画したの」


「え……どういう事?」


「私がヴィラン女王になった時、あなたがこの世界に戻ってきた。あなたが初代ヴィラン女王と知っていたから、もし記憶が戻れば……私の権力が危ういと思って、現実世界に帰らせるためにミッションを計画したの。でも、あなたは変わったのね。もう初代ヴィラン女王の面影が見えないわ」


そうだ……。私は現実世界でお父さんと出会い、お母さんに優しい人間として育てられ、変わったのかもしれない。私は、異世界に居るより現実世界に居た方が楽しいかもしれない。


「クリスティーヌ。私を現実世界に帰らせてくれてありがとう。あなたにこの異世界を任すわ。ティラン、またいつか会おうね」


「うん。ビラ、ありがとう……。私もすぐにビラの元に行くよ。来世で……」


「待ってるよ」


1人、ヴィラン町を後にした。体力も無いボロボロの体で来た道を戻ろうとしていた時、目の前に正気を失ったワイバーンが現れた。


「待って。お母さん。もうやめてよ」


後ろを振り返ると、そこには海斗がいた。海斗がワイバーンに話しかけていた。


「ねえ、思い出してよ。僕だよ……。名前はクロン」


ワイバーンは声を上げた。そして、海斗を背中に乗せて上空を飛び回った。


「思い出したんだね……。お母さん、大好きだよ」


「ウォーーン」


そして、私の目の前に海斗は降りてきた。


「真澄、ごめんね……」


「何が?」


「僕も全て思い出したんだ……」


「何を?」


「僕、お母さんをヴィランが操っていたと知って、復讐しようと思って……。現実世界で殺したの」


「え……」


私を殺した犯人って……海斗だったの。絶対に犯人じゃない……。そう思っていたのに。でも、海斗が死んだ後に私が死んだ。辻褄が合わないような……。海斗は全てを話してくれた。私と海斗が異世界で出会った後の話を。

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