第31話 幼馴染の初お泊まり②

「え? どうしてそんな大きな声出してんの??」


 俺はあえてきょとんとした感じの声でそう尋ねた。 すると姫子は声を震わせながら俺にこう言い返してきた。


『あ、あんた……自分で何言ってるかわかってないの!?』


(いや余裕でわかってるけど? でもそれが何か??)


 いつも通り発想を逆転してみるけど、もしこれ元の世界だとしたら、一人暮らししてる女の子の幼馴染(スタイルどちゃくそエロい)がもう夜遅いから今日は泊っていきなよって言ってきてるっ感じでしょ? いやそんなん絶対にパニックになるに決まってんじゃん。


 いやでもさ、そもそもだけどこんな夜遅くに異性の幼馴染の家に来ようとしてる時点で姫子もワンチャン俺の事狙ってんじゃねぇの?? ……いや普通にあり得るよな?? ふぅん、もしそうだとしたら……姫子に理解させてやるしかないよなぁ??


「え? 全然わからないんだけど、一体何なんだよ??」

『い、いやいや! ア、アンタさぁ……私は女なのよ?? それでアンタは男の子なわけじゃないの!』

「うん、そうだけど。 それで?」

『そ、それでって……一人暮らししてるアンタの家に、わ、私が泊まったとして……も、もしも何か間違いが起きたらどうすんのよ!』

「え!? 姫子は俺と間違い起こす気なの!?」

『え、えっ!?』


 俺がわざとらしく大きな声を出してそう言うと、姫子はさらに声を荒げながらこう言ってきた。


『ち、違うわよ! 例えよ、例え!! わ、私がアンタなんかに欲情とかするわけないじゃないの!』

「あ、なんだー。 勘違いしそうになっちゃったわ。 それじゃあ姫子は俺みたいな奴とは絶対にエッチな事はしないって事で合ってるか?」

『え、えぇ、そうに決まってるじゃないの! だ、だいいち! 幼馴染のアンタをそんないやらしい目で見た事なんて一度も無いわよ!』


 いやでも俺は今まで何度も姫子の事をいやらしい目で見て来たけどね? 全然姫子とエッチ出来るなら俺はするけどね? 据え膳食わぬは男の恥だからさ。


「ふぅん、じゃあ大丈夫じゃん! 姫子がそこまで言ってるんだから絶対に大丈夫って事だろ? それに姫子の学校は俺の家から行った方が近いんだし、どうせこっちに来るんだったら泊まった方が都合良いだろ?」

『う……そ、それはまぁ、そうだけど……』

「だよな? やっぱり姫子もそう思うだろ? それじゃあ別に良いじゃん、他に問題ないんだったらさっさと泊まりにこいよ。 あ、それともあれか? さっきから色々となんか俺に言ってきたけど……本当は泊まるの恥ずかしいとか??」

『えっ!?』

「あ、ひょっとして図星かー?? あはは、なるほどなー! どうせ俺に寝てる姿を見られたくないとかそんな感じだろ? ふふ、お可愛い事ですねぇー??」

『っ!? そ、そんなわけないじゃない! 幼馴染のアンタ相手にそんな姿見られても何も恥ずかしくないわよ!』

「あ、そっかそっかー、またまた俺の勘違いだったかー。 いやそれは申し訳ない! うーんでもさ、それなら別に俺の家に泊まっても大丈夫じゃないのか? だって姫子は幼馴染の俺相手には間違いは絶対に起こさないし、それに恥ずかしいって気持ちも全然ないんだろ?? なぁ?? そうなんだろ??」

『ぅ……ぁ……わ、わかったわよ! それじゃあ御言葉に甘えて泊まらさせて貰うわよ! ほ、本当に良いのよね??』

「あぁ、もちろん良いに決まってんじゃんー! それじゃあ部屋掃除して待ってるわ。 じゃあなー」

『え、えぇ、それじゃあまた後でねっ……!』


―― ぴろん♪(姫子さんとの通話が終了しました)


 そう言って姫子とはそこで電話を切った。


(……計画通り!!)


 俺は心の中でそう思いながら笑った。 いや想像以上の結果だったけど。 という事で姫子を家に泊まらせる事を無事説得する事が出来た。 あと数十分後には姫子が俺の家に泊まりに来る。 よし、とりあえず部屋の掃除をしとかなきゃだな。


(うーん、それにしても……)


 それにしてもさ、姫子と話してて思った事が一つあるんだけど……アイツやっぱり俺の事めっちゃ意識してるんじゃないの? もし逆の立場だったら俺もワンチャンは絶対に狙うはずだから、正直姫子も俺の事を狙ってる気しかしないわ。 何だかそうなってくると、鹿島さんなんかよりも姫子の方が圧倒的にチョロそうな気がしてきたわ。


(んー、まぁそれでもこっちから手は出さないけどね!)


 そう、俺は姫子の事だけは俺の方から“先”に手を出す事は絶対にしないと決めていた。 いやこれは何というか、幼馴染としての意地というか矜持というか……やっぱり幼馴染相手だとさ、先に手を出した方が負けみたいな悔しい所あるじゃん? だから姫子に関しては俺の方から先に手を出す事は絶対にしない。 何とかして姫子が俺を襲ってくるように仕掛け続けてやるんだ。 あ、ちなみに鹿島さんとか桜井さんに関しては俺の方からガンガンと手を出す気満々だけどね。

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