第26話ゴンドラ

理久は、クロと同じくライトブラウンのマントを着て頭からそのフードを被った


そして、町へ行くなら、てっきりドラゴンの背に跨り大空をひとっ飛びと…


淡い期待をしていた。


だって、遠くの空には、人が乗っているだろうドラゴンがかなり飛んでいた。


しかし、現実はそんな簡単な事じゃないらしい。


クロは一匹のドラゴンに、理久を前にして二人で跨りはしたが…


理久が不慣れで空から落ちたら大変だと

、ドラゴンに地上を歩かせ城を出た。


ドラゴンは、鞍のお陰もあるが、歩く速度は速いが理久が想像したより遥かに乗り心地いい。


そして彼らは、水の中をも泳ぎ獣人や荷物を運ぶ。


正に、陸海空なんでもいけるオールマイティだった。


背後には、従者のレメロンもドラゴンに乗り後を付いて来る。


他の獣人騎士達は、私服に着替え、それぞれ町に秘密裏に潜伏し理久とクロを警護する。


クロは、獣人の余り通らない裏道を行く


城は、小高い丘陵にあって、下る前から遥か遠くに巨大な城壁が見えて…


町がかなり大きい事、


その中を水路が張り巡らされてる事、


家が無尽蔵に立ち並ぶのが、竜の背の理久にも確認出来た。


だが理久は、落ちないようにと、クロが後ろから抱き締めてくるのに焦っていた


強さもそうだが、密着度合いが半端なかった。


特に、クロの股間が理久の下半身にグイグイグイグイ押し当てられる。


そして、竜の背の振動が、それに更に拍車をかけた。


理久の気のせいか?…


クロのアソコが固くなっている気がする


摩擦を生みながら擦れる部分が、燃えそうに熱い。


そして、だんだん理久自体のアソコもおかしくなりそうで…


(これは、ただドラゴンに乗ってるだけだ…意識するのがおかしい…それにクロは…あの犬のクロで…俺とクロは男同士で…)


理久は、額に薄っすら汗をかきながら…


動揺をなんとかしようと心の中で何度も何度も呪文のようにそう呟くが、一行に収まる気配は無かった。


やがて、そうしている内に…


ただ回りを木々に覆われた、人のいない静かな石のブロックの水路の船着き場に来た。


そこには、すでに一艘の美しい赤いゴンドラがあって、ゴンドリエーリ(ゴンドラを漕ぐ人)の獣人も乗っていた。


クロは、竜から先に降りるとニッコリ笑い理久をお姫さま抱っこし、そのまま歩いてゴンドラの近くへ行く。


「えっ!クロ!クロ!」


理久は、恥ずかしいのとクロの高校生男子を軽々抱く怪力に戸惑う。


「理久!お前、船とかカヌー好きだったよな。以前キャンプ行った時、カヌー何回も乗ってただろ?今度はこれに乗るぞ!ゴンドラからなら、町がよく見えるぞ!」


クロは理久を下ろすと、次に理久の右手を握り先導し、水路に造られた短い階段を降り一緒にゴンドラに乗り込んだ。


そして、理久とクロは、ゴンドリエーリに促され前方に座る。


確かに理久は、父運転の車で家族と犬のクロで山梨にキャンプに行った。


その時楽しくて、クロを乗せて、理久は何度もカヌーに乗った。


あの時クロは、賢く大人しくお座りして尻尾を振りながら、青いキレイな瞳でずーっと理久を見詰めていた。


(それを知ってるって、やっぱり…アレクサンドルさんは、犬のクロなんだ…)


今更だが理久は思い出し、今は獣人のクロを見詰め、胸に込み上げるモノがあった。


あの時のクロは本当にかわいくって、一緒に何処へ行っても、何をしても幸せだった。


と、同時に今やはり、目の前の獣人のクロにまだ違和感があり戸惑う。


「どうした?」


クロが、理久を見て微笑み尋ねた。


だが、やはり獣人になっても、変わらないクロの優しい深い青の瞳。


「ううん…何でも無いよ…」


理久も、クロに笑い掛けた。


「後は頼んだ」


クロが、レメロンに向かい言った。


レメロンは、理久と朝食前初めて挨拶を交わした時からずっと表情を崩さず真顔だったが…


「どうかお任せを…ごゆっくりなさって下さい」


今も又、ひたすら眉一つ動かさずに、左手を胸に当て頭を深々と下げた。


「さぁ、出してくれ!出発だ!」


クロの掛け声に、ゴンドリエーリが、理久とクロから少し離れた船尾から長いオールを動かし始めた。


スーッと、ゴンドラは動き出し、陽が反射して煌めく水面をゆっくり滑るように進む。


やがて…すぐ…


木々ばかりだった左右の景色が一変した。


「わぁ!!!」


理久の目の前に驚きの光景が広がり、思わず声を上げてしまった。














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