6-11


 僕らの元へたどり着いたコマリ。


 まだ息がととのわずにハアハア言いながらも緊張きんちょうした面立おもだちで、号外を国王様に渡した。


ホネハルケお父様キスヅチダルロ読んでください。 モタヲゐ私のトテレヅワ気持ちです


 国王様は何か言いたげだったけれど、号外を受け取り、歯をギリギリ、貧乏ゆすりをしながら、号外を読み始めた。


 僕らもごくりと息を飲んでその光景を見守る。


 ――すると。


 突然、そのせわしない動きがピタリと止まった。そして沈黙が流れる。


 ……ま、まさか内容が許せなくて怒ったの?! と思ったら……。



 ポロリ、ポロリ。


 コマリと同じ深い青色の目から、涙がこぼれ出したのだ。

 国王様はポロポロと、王様なのに、おじさんなのに、みっともなく、にゃいにゃいと泣き出した。


「コマリ、✕✕✕! ✕✕✕〜〜……!」


「……は、ハヤテ。国王様は何て言っているの?」


「……コマリ、ゴメン。ワルカタ、イッテル……」


 そうげるハヤテの目もうるんでいた。


 国王様はその後もあやまりながら泣きに泣き続けた。

 その光景に大臣はポカーンとし、兵隊さん達はつられて泣き出す猫が続出した

 

 ……みんな、はてな島と一緒で優しい猫達にゃ……。


 そんな中、泣き続けるお父さんの目元をやさしくハンカチでぬぐってあげているコマリを見て、僕もポロリと涙がこぼれた。



 (ΦωΦ)&(TωιT)&(*ΦωΦ*)



 国王様が泣き止む頃には、ミケランジェロさん達も僕らの元へやって来た。

 

 アズキばあちゃん家の兵隊さん達もやって来て、仲間と再会して嬉しそうに肩を叩き合っていた。


「――ねえ、ミケランジェロさん。どうして兵隊さんがいるのに、ここまで来れたんですか?」


「これに決まっているだろ!」


 ミケランジェロさんが拾った号外を僕に見せつけた。

 そして、目をキラキラとかがやかせて言ったのだ。


「コマリちゃんの思いをつづった号外が、とかい島の兵隊の心も動かしたんだ!! 読んだ兵隊が他の兵隊たちにコマリちゃんの想いを広めて、みんなが「自分の意志いし」でコマリちゃんの想いに味方したんだ……!」


「にゃ、にゃあ!!」


 すごい。

 僕たちの作った号外が、こんなにたくさんの猫の気持ちをり動かしたなんて!


 コマリが僕の方へと駆けて来る。

 そして、何か熱心ねっしんに言っているのだ。


「ハヤテ、にゃ、にゃんて?」


「兵隊、ゴミ、掃除、スルテ! モウ、コマリ、頼ラナイテ!」


 ハヤテがやくしてくれた。


「おー! 確かに数が多い兵隊は清掃係せいそうがかりに持ってこいだな!!」


 と、ソックスがウンウンと満足まんぞくそうに頷いた。 


「ソレト! コマリ、はてな島、モウ少シ、居テモ、イイテ!!」


 その言葉を聞いて、僕は涙目で笑うコマリの両手を握って「ヨカタ、ヨカタ、ヨカッター!」とその場で何回もくるくると回った。


 その光景を見た国王様がひえっ! と青くなって、僕に向かってなにやら凄く怒っていたけれど……ハヤテは苦笑にがわらいするだけで、国王様の怒った理由を最後まで教えてくれなかった。




 (Φω<)ー☆



 さてさて、そんな訳で。


 みんながみーんな、幸せヲイモカになった所で、お話はそろそろおしまいに向かおうとしている。


 コマリの「好き」を認めた国王様の素敵すてきはからいに、兵隊さん達は自分の事の様に喜び、号外を何度も何度も空へと投げた。


 それはまるで紙吹雪かみふぶきの様で、ヒラヒラと青空をう新聞はとても綺麗だった。


 僕がそれに見惚みほれていると、ミケランジェロさんが、僕の肩にガッとうでを組んできて言ったのだ。


「なあ、マメよ! やっぱり新聞は面白おもしろいなぁ!」


 僕は大空にヒラヒラと舞う新聞に両手を伸ばし、青空をぐっとにぎめて言ったのだ。


「最っ高にゃあ!!」





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