6-10


 ムキムキの兵隊さんは僕の首根っこを捕まえると、軽々と持ち上げた。

 そして、ニヤ~といやな笑いを浮かべると、木の棒を大きく素振りする。


 ダメだ!!

 あんな棒で叩かれたら、僕のお尻が真っ赤になる。

 最悪、三つに割れてしまうかもしれない。


 すると僕の頭ン中がまた、グルグル、ギコギコとへんな音が鳴り出した。


 ど、どうしよう。

 どうしたら……?!


 すると、ハッとニクニクさんの占い結果が頭ン中に浮かんだ。

 困難こんなんには叫べ、と。


 しかし、何を叫べは良いのー!?

 またしても肝心かんじんな事を聞き忘れる僕。


「ヤッチャエー!!」

「こ、こ、コマリ……」


 大臣の掛け声に木の棒がお尻にせまった瞬間しゅんかん、僕は唯一ゆいいつ知っているとかい語を叫んだのだ。


「コマリ、ヲイモカ幸せーーーー!!」

「ヲイモカーー!!」

「もかーー!!」

「かーー!!」


 僕の声は周囲しゅういひびき渡り、荒野こうや木霊こだました。


「✕✕✕!?」

「ナニィ?」


 国王様と大臣は、僕が言ったとかい語にまゆひそめた。

 だから、僕はヤケクソになって、何度も叫んだ。


「コマリ、ヲイモカ! ヲイモカ! ヲイモカー!!」


 すると、隣に居たソックスも叫んだ。


「コマリ、ハテナヲ゛ケヅはてな島で、ヲイモカーー!!」


 僕とソックスは何度も何度も「コマリは幸せだ」と叫んだ。

 

 しかし、国王様は首を横に振って、信じてくれない。


 でも本当の事だから、僕とソックスは何度も「ヲイモカ」を言い続けた。



 ――すると、町の方から、聞こえてくるのだ。

 「ヲイモカ」の声が。


 はるか遠くから、静かに、ゆるやかに。


「コマリ、ヲイモカーー!」

「ヲイモカー!!」

「ヲイモカだーー!!」


 僕らは、それがはてな島の猫達の声だと気が付いた。

 きっと、ミケランジェロさんが、タマジロー先輩が、ワンダフルさんが、ネギが……はてな島のたくさんの猫達が、叫んでいるのだ。


 しかし、国王様は首を横に振った。


 はてな島の猫がどんなにコマリの事を言っても、信じてくれないのだ。

 


 ――しかし、不思議な現象が起き始めた。


「ヲイモカ」の声が、どんどんと近づいて来ているのだ。


 おかしい。

 だって、その声の場所には、とかい島の兵隊さんしか居ないはずなのに。

 だけど、確実に「ヲイモカ」の声は大波の様に、僕らに近づいている。


 その時、僕は奇跡を見た。


 たくさんのとかい島の兵隊さんが「コマリオリコマリ姫、ヲイモカ!!」と叫びながら、走ってくる姿を。


 にゃ、にゃ、にゃんでーー?! と思ったら、その兵隊さん達にかこまれて、コマリとハヤテも走って来るではないか!


 どんどんと声を増やし、数を増やして、僕らの元へやって来る「ヲイモカ」の声の波。


 その異常な光景に、僕を捕まえる兵隊さんの掴む手が弱まった。僕はそっと抜け出したが、どうやら気がついていない様だ。

 ラッキー♪


 そして、近づいて来るコマリの手には、一枚のヨレヨレになった紙がにぎりしめられていた。


 号外だった!






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