4-5


「キャットタワーは、、ですヨ」

「平気? 安全って事? でも危ないって、言ったよね?」


 すると、ハヤテは上手く伝えられない事に、うーん、うーんとまゆを曲げてうなり、


「ヘイキとは、アブナイ道具、デス」

「あ、アブナイ道具……?」

「キャットタワーは、タクサン、ネコ、ケガ、します」

「!!!!!?」

「だから、アソコ、アブナイ。はてな島、アブナイ」

「でも、でも、タイツさんは、キャットタワーは、神様のお船だって……」

「違うマス。ヘイキです。とかい島も、似たモノ、アル」


 真実を知った僕は、話が終わるまで待てずに、すっくと立ち上がった。


 そしてハヤテをその場に置き去りにし、無我夢中むがむちゅうで中央広場に走った。

 キャットタワーの前には、さっきと変わらず、竹ぼうきで掃除を続けているタイツさんが居る。


「タイツさーん! タイツさーん!! 大変にゃー!! キャットタワーから離れてー!!」

「な、なんにゃ!?」

「キャットタワーは危ない道具だって! 猫がたくさん怪我するって!!」


 と、真実を真正面ドストレートに告げると、タイツさんの顔がみるみると赤くなるのが目に見えた。

 そして爆発ばくはつした。


「ん、ん、んな訳、あるかー!!!! 神聖な船だぞ!! この悪ガキ猫がぁああ!!」


 怒りのあまり、頭から蒸気じょうきを出しているタイツさん。


「うにゃあああ!!」


 竹ぼうきをぶんぶんと振り回し、僕へと迫って来るタイツさん。僕の本能は危機を覚えて走り出す。


 ――しかし、追われている途中で気が付いた。

 

 怒ったタイツさんから追われるのは超怖いけれど、僕がしている事はキャットタワーから離れるっていう目的としては、成功だ。


 このまま、タイツさんをソックスの家まで引きつけて、ソックスに押し付けてやろう…………なーんて思っていたら。


「あにゃ?」


 ふと後ろを振り向けば、タイツさんは追って来なくなった。

 

 あれれ? と走った道を戻れば、何事も無かった様に、中央広場の掃除を再開するタイツさんが居た。

 ありゃりゃ。作戦失敗。


 確かにおじいちゃんだからソックスの家まで走る体力も無ければ、キャットタワーを崇拝すうはいしているタイツさんは、昼間は離れようとしないだろう。



 そうなれば!



 (ΦωΦ)&(ΦωΦ)))))



「えー!? 俺やだよ、じっちゃんの説得せっとくなんて!」


 創作意欲そうさくいよくに燃えて、空飛ぶ乗り物を考えていたソックスを、無理やり連れ出す僕。

 猫背を押して、中央広場へと押し進めた。

 ソックスのサンダルが、土をけずわだちになって行く。


「お願いだよ! タイツさんと口論こうろんで勝てるのは、ソックスしか居ないんだよぉ!」


 僕はソックスの背中を押しながら、ハヤテに聞いた恐ろしい話を伝えた。


 そして、すぐに伝えた事を大後悔だいこうかいする。


 たぶん、はてな島で一番教えちゃいけない猫に、キャットタワーの真実を教えてしまったのだから。

 聞き終えたソックスの背中が、急に軽くなった。

 僕に押されなくても、自分の足で中央広場に進み始めたのだ。


「……ソックス?! 説得してくれる気になったんだね!?」

「いいや、全然。それよりもさ、キャットタワーが兵器とはな! タワーの中身、見てみたくね!?」


「!?」


「行ってみて、中に入ってみようぜ♪」


「な、んにゃとー!?」







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