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 タイツさんは、僕の質問にわらじわを作り、ニヤ~とほほほころばせた。


「おお! ソラマメ、お前もキャットタワーの神聖な歴史に興味が出たのか!?」

「う、うん、まあ……」

「これはな、遥かいにしえに、猫神びょうしん様が乗って来た船にゃ」

「にゃ!?」

「実はお前達が見ている部分、これは船の船首せんしゅなんだ!」


 トウモロコシ型の黄金色の部分は、船首の部分!?


「じゃあ、この下に……?」

「ああ、船の下方部が埋まっている。我々の祖先である猫神びょうしん様は空の彼方から、この船に乗り、この豊かなはてな島に降り立った。それから、我々猫はキャットタワーから知恵ちえを頂き、繁栄はんえいし、二百数年が経ったのが、今にゃ」

「にゃあ……知らなかったにゃあ! 凄いにゃあ!」

「そうだろう、そうだろう。この島のモンは全然過去にこだわらないからな!」


 ウンウン、と自分がめられたかの様に、嬉しそうなタイツさん。

 でも僕は、今の話で少し気になった部分があった。


「でもさ、タイツさん。キャットタワーから知恵を貰うって、どういう事?」

「にゃ?」

「だってキャットタワーってお船なんでしょ? お船から知恵を貰ったの? 神様から知恵を貰ったんじゃなくって?? その間、神様は何していたの? 今、どこに居るの?」

「にゃ、にゃに……?」


 タイツさんは、目を泳がせて言葉に詰まり、固まった。次第に足先から、ブルブルとふるえ始め、突然、竹ぼうきのをガツン! と地面に叩き付けた。

 跳び上がる僕とコマリ。


「ええい! とにかく、キャットタワーから知恵を貰ったんだ! 貰ったからには貰ったんだ! それで良し! 神聖な物に、疑問なぞ抱くな!」

「そ、そんな無茶苦茶むちゃくちゃな!」


 竹ぼうきをブンブンと振り回し始めたので、僕は、ぼけーっとしていたコマリを引き連れて、中央広場から逃げた。


「逃げるなー! そして、新聞に記念祭はキャットタワーのご神体しんたいが見れると書いておけー!!」

「は、はいぃ~!!」



 (ΦωΦ;)&(*ΦωΦ*)?===333



 中央広場から逃げ切った僕たち。

 街道で立ち止まり、ハアハアと息を整えていると、コマリがプッとき出した。

 そして、ケラケラと笑った。


「マメ、オモロ」

「にゃ?」

「マメ、ココ、オモロイヨ」


 コマリが指差した僕の頬を触ると、左右のひげがうねうねと波打なみうっていた。がむしゃらに走っていたせいだろうか。

 僕はピンピンと引っ張って直すが、より一層波打った。

 細かくウェーブした髭を見て、お腹を抱えて大笑いするコマリ。

 そんなコマリを見ている内に、僕も何だか楽しくなって、二匹して草原に転げてずっと笑い合った。



 ――しばらくしてから、お互い落ち着いて。笑い疲れたお腹を休めるために、草原で寝そべっていると、コマリの方から、すーすーと寝息が聞こえてきた。


「……にゃ? コマリ?!」


 顔をのぞけば、眠っている。

 うそ、寝ちゃったの? 寝つき早いな。さすが、お姫様……。

 起こそうかと思ったけれど、あんまりに気持ちよく寝ているので、起きるまで僕も少し昼寝するかなぁ……と、目をつぶった時、


「コマリ? ソラマメ?」


 ハヤテの声がして、パチリと目を開けた。

僕を覗く美形猫は、その片手にはくわがあり、肩で担いでいた。


「お昼ネ、デスカ?」

「うん、そうだよ。ハヤテは、お仕事、終わったの?」

「ハイ」


 ハヤテは、運動神経が抜群ばつぐん。だから最近は町のお年寄り農家の畑に、お手伝いに行っている。お仕事をしないと、アパートの家賃が払えないのにゃ。現実はきびしいのにゃ。


「ソラマメも、オシゴト、終わりマシタ?」

「うん、外回りはね。今ね、キャットタワーに行ってきたんだよ」


 そう言うと、ハヤテも顔つきが厳しくなった。そして、しばらく考え込んだ後、口を開いた。


「……ソラマメ、キャットタワーは、アブナイヨ」


「……にゃ?」

「キャットタワーは、危険きけんダカラ、アソコに、行かないが、ヨイ」


「……にゃ……?」


 ハヤテは、コマリが寝ているのをさいわいとばかりに、詳しい話をし始めた。

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