ポーカー、終末、カッター

 私はカードゲームで負けた事が無い。

 何故なら負けそうになったら、隠し持ったカッターで刺し殺すからだ。

 相手が死ねば負けは無い。むしろ勝ちだ。常勝無敗である。


 先日もポーカー勝負で負けそうになったが、無事に刺し殺して勝利を得た。

 だというのに見物連中は私を銃で撃って来た。仲間が負けた腹いせとは情けない。


 何にせよ私にカードで勝てる者は居ない。居るとしたら刺し殺しても死なない存在だ。

 そんな人間は居るはず無いので、間違いなく私がカードゲーム最強である。

 カードゲームなら何でも勝てるだろう。たとえルールを知らないゲームだとしても。


 そして最強の私の噂は世界中に広がっており、正々堂々の勝負を放棄する者達も多い。


「居たぞ! 殺せ! あいつだ!」

「クソ女が、良くも兄貴を!」

「この街から逃げられると思うなよ! 絶対に殺してやるからな!!」


 カードゲームで挑んで負けたというのに、それを認めずに機関銃を持ち出す連中だ。

 流石にカードゲーム最強の私でも、銃にはかないっこない。お手上げだ。

 隠れている壁にチュンチュンと跳ねる銃弾がとても恐ろしい。


 そんな無法は終末の世界ででもやって頂きたいものだ。

 地方都市とはいえ、法治国家でこんな暴挙が許されて良いのか。

 全く情けない。カードで負けたのだから、カードで挑んで来ないか。


「逃げたぞ! あっちだ!」

「馬鹿が、そっちに逃げ場なんざねえよ!」

「俺は向こうから追い詰める! ぶち殺してやれ!」


 いやはやこれは参った。カードで挑んでくれたら負けはしないのに。

 このままでは追い詰められて、穴を沢山増やされて死んでしまう。

 アレだけの銃の数で有れば、痛みを感じる前に死ねるだろうか。


 いやいや死にたくはない。まだ私は生きていたい。もっとカード勝負をしたい。

 賭け事をしている時のスリルを、負けそうになった所から勝つ快感を味わいたい。

 という訳で事前に準備していた爆弾をぽちっと。背後で盛大な爆発音が響く。


 これで追いかけて来た連中は吹き飛んだだろう。正義は勝つのだ。

 全く本当に情けない話だ。カードで負けたから重火器などと。

 カードの負けは正々堂々カードで覆すべきだろう。


 さて今日も無事に生き残れた事だし、次の勝負の場を探しに行くか。

 もうこの街で花が知られ過ぎて勝負を受けて貰えないし、また他国へと行こう。

 とはいえ最近は本当に名が売れすぎて、一勝した時点で素性がバレてしまうが。


 強すぎるというのは悲しい事だ。だが私が最強なのだから仕方ない。

 そして私はこれからも最強であり続けるのだろう。


「うう・・・キチガイ女が・・・!」


 おや、生きている人間が居た様だ。運がいい。つまりカード運も良いかもしれない。

 彼なら私に勝てるだろうか。もしかしたら有り得るかもしれない。

 そう思い死にかけの彼に勝負を提案した。一発勝負のハイ&ローだ。


 彼が勝てば彼を助けよう。負ければそのまま見捨てよう。

 そう提案して彼に勝負を告げ、彼は罵倒しながらも承諾した。

 わき腹を何度か蹴ったのか効いたのだろう。全く聞き分けの無い者達だ。


「ロー・・・だ・・・」


 掠れた声で告げられたのを聞き、カードを捲ると同時にカッターで刺し殺した。

 出てきたカードの数は小さかったが、彼が死んでしまったので私の勝ちだ。

 いやはや強くて申し訳ない。それでは君はこのまま放置させて貰うよ。


 さて、次はどんな勝負が出来るだろうか。次こそ負ける事が有るだろうか。

 そんな事あるはずはないか。何せ私はカードゲームでは最強だからね。

 次も負けそうになるながらも勝つ。その快感を求めに向かうとしよう。うむ。

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三題噺纏め。 四つ目 @yotume

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