灰・透明・小鳥

 灰の舞う空を見上げ、息苦しい中で浅い呼吸を繰り返す。

 何処からか鳥の声が聞こえ、視線を動かすと小鳥が飛ぶのが見えた。

 逃げ遅れたのか、それとも動けなかったのか、どちらにせよどんくさい。


 タタタタタと音がする中、その被害に遭うのは人間だけでは無いのだから。


「・・・どうでも良い事しか頭に浮かばない・・・死ぬ前ってこんな感じなのか」


 撃たれた所が動かない。重症なせいか痛みも感じない。

 何だか熱い気がするってぐらいだろうか。

 余りに大怪我だと痛みが無いのは本当だったんだ、なんてのんきな事を考える。


「・・・放置されたのか?」


 音が若干遠ざかっていくのを感じ、とどめを刺されなかったのだと思った。

 どちらにせよこのままでは死ぬだろうから、早いか遅いかの違いでしかないけれど。

 倒れた者はもう居ない扱いなのかもしれない。居るのに居ない。透明人間かな?


「あー・・・タバコ吸いたい」


 一応持っているんだけど、残念ながら腕が動かない。

 片腕は吹き飛んじゃってるし、もう片方は穴だらけだ。


「・・・くっだらない人生だったな・・・終われるならそれも良いか」


 子供の頃から銃を持って、気が付けば山賊をやって、軍から物資を奪った事もある。

 そんな人間の結末としては、まあこれが妥当な所だろう。

 どこの誰にも看取られず、森の中で穴だらけで死ぬ。ははっ。


「・・・なんだ、お前が看取ってくれるのか?


 先程見かけた小鳥が、間抜けにも戻って来たらしい。

 しかも何故か俺の胸の上に止まり、俺を見つめて首を傾げている。

 まだ安全になった訳じゃないのに、やっぱり間抜けな鳥だな。






『力が欲しいか』






 突然そんな声が聞こえてきた。え、何これ待って。


『ならばくれてやろう』


 え、いや、俺答えてないけど。待って待って、何突然。どうしたのこれ


『すべてを滅ぼすが良い!』


 誰もそんなこと望んでねぇ!!


『ギャオオオオオオオオオオオオオ!!』


 待って待って待って。なんで俺巨大化して叫んでんの。

 つーか原型が無い! 怪物! 怪獣! 後勝手に動く!

 あ、なんか人に気が付かれ・・・痛い痛い痛い! また穴だらけにされてる!!


『ギャオオオオオオオオオオ!』


 あ、俺強い。尻尾で一掃した・・・尻尾!? 何で!? 何で尻尾生えてんの!?

 もう確実に人間じゃないじゃん! 後自由意思ないの酷すぎない!?


『さあ、行け』

『ギャオオオオオオオ!』







 この後滅茶苦茶ミサイル撃たれた。


 勝った。

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