第4話左足靴下がクルクル回る呪いにかかった彼女を好きになった彼の話(後編)
「大丈夫です、私はあなたの味方をします!だって私……九条ネギが大好きなんです!」
(!?え?俺のことが、大好き?……う、嘘だろ?こんな可愛い女の子……俺はどこで会ったんだ?会っていたら、絶対覚えているはずなのに……?)
女の子からの告白に頭が真っ白になった俺に、彼女は自分の言葉に嘘はないと安心させるように俺に微笑みかけて、そう言ってくれた。俺は彼女の言葉と優しい笑顔に心を鷲掴みされて、ゴクンと唾を飲み込んで赤面してしまった。
(なんて可愛くて、情熱的な人だろう……。それに、こんなに小さな女の子が俺を守ろうとしてくれるなんて。なんて勇気がある女の子なんだ!こんな素敵な女の子に好かれているなんて、俺は何て幸せなんだろう!)
俺は高鳴る心のままに彼女を見つめた。彼女はまた男達の方を見ると、俺をかばうために自分の心をさらけ出してくれた。
「皆さんが九条ネギを好いていないからと、それを全ての人が嫌いだと決めつけないで下さい!少なくとも私は好きなんです!背が高くって、ピンと背筋が伸びている姿も凜としていて、とても好きですし、あの緑色も目に美しいし、私は最高に大好きなんです!それに九条ネギは、どんなお料理にも合うし、叶うならば毎日食べたいくらい大好きなんです!」
彼女の爆弾発言に俺も俺を虐めていた奴らも顔をこれ以上はないというほど赤くしてしまった。
確かに俺は国立魔法師団の中で一人庶民だったので、皆よりも身分が低いと陰口を叩かれるのが悔しくて負けないように、いつも背筋をピンと伸ばして歩くようにしていた。……きっと、どこかで、その姿を彼女に見られていたのかもしれない……。今まで真面目に生きてきて、本当に良かった。俺の翠の目が美しくて、最高に大好きだなんて……何て愛らしいことを言ってくれるんだろう!……それに。
「「「「「「「な!?毎日食べたい!?」」」」」」」
「!?そ、そんなに情熱的に俺のことを!」
(な、何て積極的な!?これって、これって、もうプロポーズだよね!?プロポーズに決まってる!ああ!俺、もう、すっごく、この子が好きだ!俺もこの子と結婚したい!彼女が望んでくれるんだから、毎日俺を食べてもらおう!そして俺も……キャ!子どもは何人でもいい!子育ても頑張るからね!)
俺は立ち上がると俺をかばってくれる女の子を後ろから抱きしめた。
(何て柔らかくって、良い匂いがするんだろう!)
「キャ!」
あんなに情熱的な公開プロポーズをしてくれたのに、俺が抱きしめると女の子は可愛い悲鳴を上げて、しかも顔や首筋、耳まで赤らめ出した。
(あんなに情熱的な告白をするのに、男性に慣れていないんだ……。何て可愛すぎだ!もう絶対離さないからね!)
「君の気持ちはわかった。俺も……今日、初めて会ったが君を好ましいと思う。……俺も好きだ。俺で良いなら毎日俺を食べてくれ!俺も君を毎日食べたい!じゃ、そう言うわけだから、俺、《召還の儀》いらない。俺は下りるからお前達に譲るよ。だって、わざわざ異世界から呼ばなくとも、こんなに可愛い女性がいるんだもん!傍にいても魔力酔いを起こさない女の子が俺を愛してくれていて、結婚したいと言ってくれて、お、俺と毎日……毎日、キャ!俺は一足先に幸せになるから、お前等も幸せになってくれ!」
「「「クッ!畜生!こんな可愛い子が!」」」
「「なんて羨ましい……。いいなぁ……」」
「「あんなに情熱的な告白……俺もされたい」」
「?あの、何のことで、キャッ!」
俺は女性と両想いになったら、絶対にしてみたかった
(何だ、この柔らかな生き物は!ああ、俺、一生、この子を大事にしていこう!)
善は急げって言うし、彼女の気持ちは決まっているんだから早速神殿に行こうと俺は考えた。
「じゃ、早速、籍を入れて結婚しよう、愛しい人!」
「え?」
~~~~~
俺は魔法で転移し神殿前に着くと彼女を横抱きしたまま彼女の左足首を触り、魔法を発動させた。
「あっ!私、実は左足に靴下がクルクル回る呪……」
彼女が何か言いかけていたが、俺が魔法をかけたことに驚いて言葉を飲み込んだ。
「……嘘、左足が……痛くない……」
「もう大丈夫だ。随分古い傷みたいだけど治ったよ」
俺はさっき少しだけ引きずっていた女の子の左足が気になっていたので、彼女の足には傷か病があるのかと思い、治癒の魔法をかけたのだが、どうやら古傷のせいだったらしい。
「私ね……小さな頃に交通事故に遭ったの……。両親もその時に亡くなって左足も、その時に……。靴下がクルクル回るようになったのも、それからで……。皆に理由を説明すると皆が変に気を遣うから、それ以来、私の左足には呪いが掛かっていると言っていたんだけど。まさか、この古傷が治るなんて思わなかったわ!ありがとう!あの、あなたのお名前はなんて言うのですか?」
「え?」
「え?」
「「え?」」
~~~~~
俺は知らなかった。彼女が異世界から来た女性で、
後で誤解だとわかったときは俺は恥も外聞もなく泣いてしまったが、その時にはもう、彼女は彼の姿に一目惚れしたのと、俺が彼女の左足に魔法を掛けて靴下が一生クルクル回らないようにしてあげたことに心底感謝して、惚れてしまったと言ってくれて、本当に彼女がプロポーズしてくれたので俺はさらに感激し、……それ以来、念願の幸せで情熱的な新婚生活を毎日送っている。
……ちなみに彼女がこちらに来るときに持ってきていた九条ネギという薬草を栽培し、増やしたところ、これを食べた女性は魔力酔いを起こさないと判明し、《召喚の儀》は、その年限りのものとなった。
そうそう、今年限りの《召喚の儀》で召喚された黒髪黒目の乙女は随分我が儘な性格の女性だったらしく、5人のネギ達は誰も乙女を引き止めずに乙女を元の世界に送り返したらしい。
彼女が何故、《召喚の儀》を通さずに、俺の元に来たのかは謎だけど、でも彼女が……。
「きっと私達は、運命の赤い糸……ううん、運命の緑の九条ネギで結ばれていたのよ」
と、大きなお腹を撫でながら言ってくれたので、俺もそうだなと言って彼女にキスをした。
〈完〉
左足靴下がクルクル回る呪いで転んだら、何故か異世界に行っちゃった私 三角ケイ @sannkakukei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます