第24話 ケンカ


数日後、麻衣子が帰ってきた。

教室では麻衣子の話を聞きたくて、みんなが集まった。

「ねぇねぇ、麻衣子。会いたい人に会えたの?」

「それってまぁやんさんなの?」

「何話したの?」

さすがの麻衣子も困っている様子だった。

「麻衣子!わたしと売店行く約束じゃん!早く!」

っと言って恋は麻衣子を集団から引き離した。

「恋…ありがとう…」

「ううん。じゃあ、後でね」

「え?ちょっ…」

恋は詳しく聞きたい衝動を抑えて、その場を去った。

何故なら、前日まぁやんから電話をもらっていたからだ。

ー前日ー

📱「♬♪〜♫」

📱「もしもし」

📱「恋、今話せるか?」

📱「まぁ兄、大丈夫だよ」

📱「そっか…俺さ、恋に謝らなければいけなくて…」

📱「どったの?」

📱「昨日、麻衣子ちゃんと会ったんだ。軽く東京観光につきあって、飯ご馳走したんだ」

📱「うん!そっか」

📱「でな?…その…麻衣子ちゃんに…告白された」

📱「そっか…」

📱「そっかって!?お前知ってたのか?」

📱「そりゃ、友達だもん」

📱「それなら教えてくれればいいのに」

📱「教えるわけないでしょ?友情大事だし」

📱「まぁ…そうだよな」

📱「でっ?まぁ兄の答えは?」

📱「丁重にお断りしたよ」

📱「そっか…」

📱「それで、お前らの友情に傷付けることになったら嫌だなって思って…」

📱「大丈夫!そんなんで揺らぐ様な柔な友情じゃないよ!わたし達はね!」

麻衣子はやっぱりまぁやんへの想いを伝えに行ったのだった。きっと麻衣子はその事を恋に言いたいのだろう。

ー今日ー

「麻衣子!放課後ツラ貸しな!」

「う…うん」

美紀が麻衣子を放課後、体育館倉庫に呼び出した。

麻衣子は覚悟を決めた…

(私は自分の欲求のためだけに、友情を裏切った。その報いは受けないと…恋…ごめん…)

そして放課後‥

麻衣子は恐る恐る、体育館倉庫の扉を開けた。

「美紀?恋?朋子?祐奈?」

麻衣子が体育館倉庫に足を踏み入れた次の瞬間!

『パーン!パパパン!』

クラッカーが数発鳴った。

「ひゃ!」

麻衣子が驚いて尻もちを付いた。

「麻衣子!まぁやんさんにフラれちゃったんでしょ?」

「今日は、麻衣子の残念会だよー!」

「麻衣子!パンツ丸見えだぞ!」

みんな麻衣子に歩み寄って、取り囲んだ!

「麻衣子!わたし達に内緒で告白ったぁ!許せないな!じっくり話聞かせてもらうからね!」

美紀が麻衣子の肩を組んで、ニヤッとした。

「はは…落ち込んでる暇もないんだから」

「当たり前だろー!今んとこ、美紀だけが彼氏ゲットだからね」

麻衣子も徐々に明るくなってきた。

「麻衣子」

「恋…」

ふたりは向かい合って、

「麻衣子、どぉ?まぁ兄に想い伝えて」

「恋…ごめんね…抜け駆けみたいな真似して…」

「いいんだよ。まぁ兄、何だって?」

「うん…ちゃんとフッてくれたよ…」

「そっか…」

恋は麻衣子を抱きしめた。

麻衣子は泣いた。やっと素直に感情を出すことができたのだった。

「恋…ほんとごめんなさい…」

「バカね!いつまで謝ってるの?」

恋は麻衣子を抱きしめながら、頭をポンポンした。

「よし!今日は麻衣子の残念会だ!カラオケに直行だー!」

『おぉー!』

「じゃあ、わたしはカラオケ着いたら、美紀のおノロケ話をたくさん聞かせてあげようではないか!」

恋がそういうと、美紀が真っ赤な顔をして

「ちょちょ!なにそれ?何で知ってるの!」

「龍兄に聞いたんだにゃん!」

「れーーーーん!」

みんな一斉に走り出し、カラオケ店へ向かった。


恋たちは、いつも行くカラオケ店に着いた。

受付を済ませて部屋に入ろうとした時、恋はある男の子とぶつかった。

「痛っ!」

恋はドンっと尻もちをついた。

「いたたぁ〜」

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

恋が見上げると、同じ歳くらいの高校生が手を差し出していた。

「ありがと…」

恋はその男子生徒の手を取って引き起こしてもらった。

「すみません…よそ見してました」

「ちょっとぉ!気をつけなさいよ!」

美紀が怒った。

「美紀!いいの。わたしもよそ見してたし…」

恋はお尻をパンパンっとほろった。

その男の子は、金髪でロン毛という見た目とは裏腹に、とても礼儀正しかった。

「お怪我は…大丈夫でしたか?」

「はい…大丈夫です」

「よかったぁ…ほんとすみませんでした」

と言って、去っていった。

「何あいつ…」

美紀は気に入らない感じだった。

「恋、いこ?」

「うん…」

恋と美紀はカラオケの部屋に入って行った。


数日後ー

恋は一人でドラッグストアで化粧品を見ていた。

お気に入りのファンデとアイライナーを買おうとレジに並んでいると後ろから

「あれ?この間の…」

先日カラオケ店で恋にぶつかった人であった。

「あ…」

「偶然ですね」

彼の手には口紅や白粉などのお化粧品が多く持っていた。

「それって…」

「あっ!いや…実は俺、ビジュアル系のバンドをやってるんだ!」

「自分のお化粧品?」

「そう!ちょっと恥ずかしいんだけどね。はは!」

「バンドですかぁ。何やってるんですか?」

「ボーカルです」

「そうなんだぁ。わたしの兄も昔やってましたよ。ビジュアル系バンド」

「お兄さんがいるんだ。お兄さんは何やってたんですか?」

「兄はドラムです。兄と言っても血の繋がりはないんですけどね」

恋は話しやすかったのか、彼に自分の生い立ちも話した。

「ねぇ、もし良かったらどっかで話しない?」

「え?えぇ…いいですけど」

「じゃ、こっちにマックがあるから行こうよ」

「はい」

恋は彼と一緒に近くのファーストフード店に入った。

「あっ!改めて。俺、杉浦まことっていうんだ」

「わたしは上田恋です」

「恋さんかぁ。いい名前だね」

「そうですか?」

「今度さぁ、俺のバンドのライブあるんだけど、来てくれないかな?」

「ライブかぁ。どんなところ?」

「すごく盛り上がるよ!お友達も良かったら。出来ればそのお兄さんにも見てもらいたいなぁ」

「兄は今遠くにいるから来られないと思う。友達だったら誘ってみるけど」

「OK!ありがとう!これ、チケット」

「いくら?」

「今回は招待でいいよ。恋さんに見てもらいたいから」

「ありがとう」

「じゃ!待ってるね」

恋とまことは連絡先を交換して別れた。

(まことくんかぁ。バンドやってるって何か親近感湧くなぁ)

その日から、恋はまことのことが気になり始めた。


翌日、恋は学校でまこととの出会いをみんなに話した。

「それでね。お化粧品を自分で選んでるんだって」

「ヘェー。ビジュアル系バンドかぁ」

「ライブ見てみたいね」

「一緒に行こうよ〜」

だが美紀だけは曇った表情をしていた。

「ん?どったの?美紀」

「ねぇ…恋。そのまことくんだっけ?私はちょっと苦手というか、雰囲気がねぇ」

「そぉ?美紀が心配するような人じゃないよ」

「でも…」

「美紀も行こうよ。ライブ」

美紀は気乗りはしないが、何か一抹の不安があった。恋のことが心配だったので、行くことにした。

「わかった!いこっか」

ライブ当日。

ライブハウスに来た恋たちは、盛り上がるライブに狂喜乱舞した。

日頃のストレスがスッキリするように、ライブを楽しんだ。

恋たちはライブ終了後に、楽屋に呼ばれた。

そこにはまことを始め、バンドメンバーもいた。

「まことくん!お疲れ様!すごかったよ」

「そぉ?喜んでくれてよかったー。あっ!紹介するよ。うちのバンドメンバー!」

まことは一人ひとりメンバーを紹介した。

「なんだよ?まこの彼女か?」

「違うよ。まだ。友達だよ」

「可愛いじゃん!よろしくね」

恋は徐々にまことに心を許していった。

「じゃあ、わたしたちそろそろ行くね」

「今日は来てくれてありがとう。また連絡するね」

「うん」

恋たちはライブハウスをあとにした。

「楽しかったねー」

「まことくんって何か可愛いね」

「でもライブの時はすごく迫力があって…」

「恋、好きになったの?」

「そんなんじゃないよ!ただ悪い人ではないかなって」

「恋が恋をしたー」

みんなが盛り上がる中、美紀だけは元気がなかった。

「美紀?最近どうしたの?」

美紀は思ってる事を勇気を出して恋に伝えた。

「恋、あの人はやめといた方がいいよ」

「ん?どして?」

「いや…なんか…恋には合わないんじゃないかなって」

「どう言う意味」

「なんかあの人、いい人じゃない気がする」

「美紀…美紀に何がわかるのさ」

「恋…」

「美紀、まことくんと一回も話してないよね?それなのに何でわかるの?」

「恋…違うの…私は…」

「美紀、酷いよ。自分は龍兄と幸せなのに、わたしに良さげな人ができたらやめておけって!」

「恋…聞いて…」

「美紀!わたしもう知らない!」

恋は走って帰って行った。

みんな、突然のことで呆然としていて、

「美紀…どうしたのよ…恋とケンカするなんて」

「みんな…ごめん…私も帰るね」

美紀も帰って行った。

恋と美紀がケンカするのは、これが始めてであった。



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