第18話 その夜…


学園に入った恋たち6人は、まず関口さんと龍弥で傷の手当をしていた。

龍弥は美紀の手当をしていた。

「お前…ひどいな。女にこんなになるまでやるなんて…」

「あ…ありがとう…」

「ったく!最近のガキどもは加減ってもんを知らんな」

「っいた!」

「滲みるだろ?ちょっと我慢しろよ!」

「う…うん…」

美紀は恥ずかしさで顔が赤くなっていた。

「おまっ!顔赤いぞ!熱出た?」

「ち…違います…」

「ん?そうか?」

この時、美紀の心の中に龍弥に対する恋心が芽生えようとしていた。

「よし!これでいい!次は?お前だな」

龍弥は次々と手当を進めて行った。

恋は関口さんが治療していた。

「恋ちゃん、痛くない?」

「うん。大丈夫」

「ねぇ、恋ちゃん。さっき私に謝ってくれたでしょ?謝るのは私の方なの」

「どうして?」

「私がもっと恋ちゃんの気持ちに寄り添うべきだったと思ってる。恋ちゃんにとって、みさき先生は特別な人だったわけだし、私なんかが急に来て、嫌な気持ちにさせちゃったなって」

それを聞いた恋は否定した。

「それは違うよ!全部わたしが悪いの。わたしが勝手に被害妄想しちゃってたから」

関口さんは恋の手をとって

「これからでも遅くないと思うの。恋ちゃん、みさき先生の代わりはできないけど、わたしは恋ちゃんが大好きだから、絶対まもっていくから…」

恋は関口さんの胸に飛び込んだ。

「ありがとう…佳奈さん…」

「恋ちゃん…」

「佳奈さんの胸、柔らかくて気持ちいい!」

「コラコラ。うふふふ!」

「へへへ」

初めてふたりが心を通わせた瞬間であった。

「そうだ!お風呂沸かしてるの。みんなで入っておいで」

「うん!」

「きっと滲みるぞぉー」

「あぁ…覚悟しなきゃ」

龍弥も恋ところにきた

「恋、大丈夫か?」

「龍兄、ごめんなさい。そして助けてくれてありがとう」

「まぁ、俺は何もしてねぇけどな」

「あれ?まぁ兄は?」

「あぁ、あいつはナシつけに行ったよ」

「えぇ!そこまで?」

「今回の事で一番怒ってたのはまぁやんだ。帰ってきたらしっかり謝るんだぞ!康二にも!なっ?」

「はい…」

「はい!って言ってくれる子は可愛い」

そう言って恋の頭を撫でた。

「よし!風呂行ってこい」

「うん」


その頃、まぁやんは雷斗の事務所を訪れていた。

『コンコン』

「どうぞ」

「雷斗…ケジメつけに来た…」

「わかってる…」

すると雷斗は床に手をついて、まぁやんに土下座した。

「まぁやん!今回の件、全て俺の責任だ!許してくれ!」

「雷斗…」

まぁやんは雷斗の体を起こした。

「やめてくれ…俺はお前にそういう事させようとするために来たんじゃない」

「でも…」

「元はと言えば、俺の責任でもあるんだ。恋があんな風になっちまったのには俺に責任がある」

「お前の?」

「あぁ、だからよ…今回は痛み分けだ。それでいいだろ?」

「まぁやん…」

「ただな、一つだけお前にお願いがあるんだ」

「なんだ!何でも言ってくれ」

「あいつらにケジメ取らせるの…やめてくれ」

「いや…そういうわけには…」

まぁやんは話そうとする雷斗を抑えて話し出した。

「あいつらには十分お灸を据えたから…そして、二度とバカな真似やドラッグを扱うことはさせないでやってくれ。もしシノギがきついなら、それをフォローしてやってくれ。あいつらも…お前の組のことを考えてやったことだ。やり方は間違っていたけどな」

「まぁやん…お前…」

雷斗は涙を流した。

「ちょっ!何泣いているんだよ。何も泣かしてないじゃないか!」

「ちげーよ!泣いてないよ…」

「泣いてんじゃねえか」

まぁやんは相手の事も考えて、きっちりと今回の騒動に幕を引かせた。


恋たちはみんなでお風呂に入ってた。

「恋はこんな広いお風呂に入ってたの?」

「交代でね。でも時間に厳しいんだよ」

「あー!滲みるぅー」

「麻衣子、あざ残っちゃうかもね」

「大丈夫!残っても、このあざ見て今日のこと思い出すことが出来るし」

「よっちゃんは?大丈夫?」

「うん。いい湯だよ」

「そっちじゃないよー」

みんな普段の明るさが戻ったようだった。

身体を洗ってる恋の隣に、美紀が来た。

「ねぇ…恋。龍弥さんって、付き合ってる人いるのかな?」

「んーどうだろう。あのふたりのそういう話、あまり聞かないからねぇ…って美紀!もしかして?」

「いや…ちげーよ!ほら…その…あれだよ!」

美紀は顔を真っ赤にして慌てた。

「美紀可愛い!みんなー美紀ねー」

「ちょーストップ!だから違うんだって!」

みんな修学旅行みたいな感じでお風呂を楽しんだ。

お風呂から上がると、着替えが用意されていた。

「サイズ合うといいんだけど…」

関口さんが用意してくれたものだ。

『ありがとうございます』

「今日は泊まってって!」

『はい』

たまたま部屋に空きがあったので、3にんずつに分けて部屋に入った。

「ただいまー」

まぁやんが学園に戻った。

恋は急いでまぁやんの元に行き、

「まぁ兄!」

と言って抱きついた。

「恋!綺麗になったな!」

「お風呂入ったからね」

「ちげーよ!大人になったなってことだよ」

その一言が恋の胸に突き刺さった。

突然、心臓の鼓動が速くなったのを感じた。

「ん?どした?恋」

恋はまぁやんの胸に顔を埋めて

「なんでも…ない」

と一言だけ呟いた。

まぁやんは恋の頭を優しく撫でて

「恋、ごめんな。寂しい思いさせて。あと約束守れなくて…ごめんな」

「…うん…」

「言い訳はしない。許してくれるか?」

「…うん…」

「そっか…」

「まぁ兄?」

「なんだ?」

「助けてくれて…ありがとう…かっこよかった…」

「なーに言ってんだ。当たり前だろ?あとな恋、明日はちゃんと康二に謝れよ?」

「わかってる…」

「俺もついててやるから…」

「ありがと…」

「よし、今日はもう眠れ。疲れただろ?」

「うん…まぁ兄、お願いがあるの」

「ん?」

「眠るまで…そばにいて?」

「たくもー甘えん坊がぁ。わかったよ!じゃあ俺の部屋で寝ろ。関口さんが用意してくれたから」

「うん…」

恋はまぁやんの手を握って、頭を優しく撫でられながら、眠りについた。

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