こっちは本気(マジ)でやってんだよ!

 街中でゾンビの集団が出現。周囲は迎撃の態勢に入り、ゾンビを迎え撃つ。

 迫りくるゾンビの集団の中で……。


(以下、日本語で記しますが、本当はゾンビの言葉で話しています)


「先輩。許せねぇっす!」


「そんなことはない」


「え? 何がですか」


「前回、君はそう言って機動隊に突っ込んだでしょ。最終的に僕の身にも危険及ぶんだよねー。今回もそんな気がして」


「まるで俺が無鉄砲みたいな言い方止めてください」


「無自覚……。で、何? 人間たちを襲ってるんだから、集中しなよ」


「それなんですけど……」


「あぁー。やっぱり、人を襲うのに抵抗がある感じ? 別におかしいことじゃないよ。特にルーキーにはよくあるよ。ゾンビになったばかりの時は気が高ぶってるけど、冷静になると罪悪感があるみたいな。むしろ、今までの君の言動の中で一番まともな気がするよ」


「何言ってるんすか?」


「ん?」


「人を襲うことに罪悪感なんて感じてたら、ゾンビなんてやってられませんよ! プロとしての心構えが足りてないんじゃないですか?」


「ゾンビの鏡かよ! ルーキーから出る言葉ではないけどね」


「人間を泣き叫ばせ、恐怖に打ちひしがれ、地べたを這いずり回らせながら絶望の淵で神に助けを求めさせる。そしてそれを無慈悲に蹂躙してこそ、ゾンビの価値ではないですか?」


「サイコパスか! 人間の頃の倫理観をどこに置いてきた? 破綻してるよ。でも、ゾンビとしては正しいことだとも思う!」


「倫理観は人間の頃の名前と一緒に100均に置いてきました。許せねぇって言ってるのは、あいつらのことです」


「あぁ、あそこにいる人間たちね」


「笑いながら、ゾンビを殺してますよ。まるでスポーツ感覚です」


「ああいう輩、たまにいるんだよねー。僕らはさ、動きが遅いじゃん。だから、格好の的にされることもあるのよ。ほら、また1人やられたよ」


「血も涙もないクズどもですね」


「さっきの君が人間にしようとしていたことも、割とゲスいけどね」


「何言ってるんですか? 全然違いますよ! 俺たちは人間を襲うことに命かけてるんです。いつだって全力で。それを遊び半分でヘラヘラ笑われながら相手をされるなんて、屈辱じゃないですか! こっちは本気(マジ)でやってんだよ!」


「分かった分かった。そんなに熱弁されなくても分かるよ。熱量の差ってのが嫌だってことね」


「こっちは本気で告白したのに、ふざけ半分に気持ちを弄ばれてる気分です」


「分かるけど、恋愛の例える必要性よ。経験談?」


「……無いことも無いです↷」


「あぁー、ごめんごめんごめんごめんー。ごーめーんーて。そんなに落ち込まないでよ。分かった分かったから。2度と言わない。誓うよ。そんなことより、あの輩どもが許せないんでしょ?」


「そうなんですよ! こっちの気持ちを踏みにじりやがって! やった方は軽い気持ちでも、やられた方は一生心に傷を負うことだってあるんだぞ!」


「私怨じゃん! あの輩たち関係ないじゃん」


「ゾンビがどうこうとか、この際もうどうでもいいんですよ!」


「本音出たよ! 建前が崩壊した」


「俺たちゾンビの心(マジ)を踏みにじりやがって! やっぱ許せねぇんで、俺、あいつらヤッちゃってきますわ!」


「おい、狂戦士(バーサーカー)。血の気が多すぎて溢れちゃってるよ。あの圧倒的な不利な状況に突っ込んで、無謀だとは思わないのかね?」


「先輩、俺……肉体は腐っても、ゾンビの魂までは腐りたくないんで」


「やかましーわ! ほとんど八つ当たりのくせに」


「え、でも先輩、あいつら腹立ちません?」


「僕? ムカついてるに決まってるだろ! 大っ嫌いだよ。ああいう輩は」


「じゃぁ、一緒に行ってくれますか?」


「もちろん……行くね!」



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