XはYにふさわしい

 今回は「XはYにふさわしい」という構文を考えてみましょう。

 Web小説では、この構文のニュアンスが合っていない文を度々たびたび見かけます。

 皆さんもこの機会に考えてみてください。


(A1)タナカさんは工場長にふさわしい。

(B1)工場長はタナカさんにふさわしい。


 2つの文はどちらもタナカさんが工場長になることに好意的ですが、タナカさんと工場長のどちらをよりポジティブな情報としているかに関して、ニュアンスが違っています。

 いつも通り主語と述語で考えても良いのですが、この場合は一旦否定文を作った方が、より分かりやすくなると思います。


(A2)タナカさんは工場長にふさわしくない。

 この1文は、タナカさんではなく別の人物が工場長になるべきだと言っています。

 このとき、タナカさんはネガティブな要素で、工場長はポジティブな要素です。

 タナカさん<工場長


 一方、

(B2)工場長はタナカさんにふさわしくない。

 この文は、タナカさんは工場長ではなくもっと上の役職に就くべきだと言っています。

 このとき、タナカさんはポジティブな要素で、工場長はネガティブな要素です。

 工場長<タナカさん


 肯定文の(A1)、(B2)も同様、つまり、(A1)は「タナカさん<工場長」、(B1)は「工場長<タナカさん」です。


(A1)タナカさんは工場長にふさわしい。

 → タナカさんは、工場長という名誉ある役職にふさわしい。

 → タナカさん<工場長


(B1)工場長はタナカさんにふさわしい。

 → 工場長という役職は、タナカさんという優れた人物にふさわしい。

 → 工場長<タナカさん


 図式化すると、「XはYにふさわしい」という構文では、「X<Y」、すなわち、Yの方がよりポジティブな情報という位置づけになる、ということです。

 主語と述語に関して言えば、主語(X)よりも補語(Y)の方がよりポジティブな情報になるので、注意してください。

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