第18話 覚醒

目を開けると、視線の先でオレルアンが驚愕の表情で立ち尽くしていた。


「そ、その姿はッ!そ、それに、その悪魔は、何処から?」


…その姿…?悪魔…?…


自分の手や腕をよく見てみると、明らかに一回り成長していて服のサイズが合わなくなっていた。


…『ステータスオープン』…


心のなかで念じると目の前に透明のスクリーンが現れる。


苦諦/―/―/―

状態:良好

肉体位階-∞

精神位階-∞

スキル:.@*#耐性、.@*#強化

、@*#魔法、.@*#術

加護:


…苦諦…?…


そして、目の前には背に闇のオーラに包まれた人の形をしたナニかが跪いていた。


…これが悪魔?…


跪いていたナニかが、顔を上げて口を開く。


「この度は、四聖への覚醒、おめでとうございます。拙は、苦諦様にお仕えするために創造されたー羅漢ーでございます。以後お見知りおき願います。」


…血と魔力を媒体に強制的な位階の引き上げを図った結果、苦諦?になったか。そして、余った血と魔力で羅漢を創造したってところかな。それにしても、何十年と自問自答していた感覚があったけど、オレルアンの姿を見る限り、あれからそう時間は経過していないみたいだ。…


「うん。よろしく。」


私達のやりとりを聞いていたオレルアンが声をあげる。


「…覚醒?…生命創造?…シーラお嬢様ッ!説明してくだ…さ…」


―「黙れ。」


羅漢が立ち上がり、右手を前にかざして声を発した瞬間、オレルアンが地面に縫い付けれた。


言霊

―璃空刻幡―


「グギャァァァッ…!」


羅漢は不機嫌そうにオレルアンを見下ろした。


「下郎が。苦諦様の許可なく穢い口を開くな。それに、”シーラ”などと穢れた名で苦諦様をお呼びするとは…不敬も甚だしい。」


ガサガサッ―


「「「「殿下ぁッ!」」」」


オレルアンのもとに、影に潜んでいたリンク王国の人間達が駆け寄っていく。


「チィッ!ゴミがわらわらと…。苦諦様。排除してよろしいでしょうか?」


私が頷くと、羅漢は深くお辞儀をして、両手を広げる。


―金剛斧―

―金剛法戟―


羅漢は、右手に長斧、左手に三又槍を召喚し構える。


「苦諦様を害するゴミどもを排除する。」


ヒュンッ―


羅漢は一瞬で距離を詰めると、次々と敵を凪ぎ払っていく。


ザシュ―ザシュ―ザシュ―…


悲鳴をあげる暇もなく部下達が倒れていく姿をオレルアンはただ見つめることしかできないでいた。


ザシュ―ザシュ―ザシュ―…


血涙を撒き散らしながら羅漢はオレルアンに迫っていく。


ザッ―


「さぁ、貴様で最後だ。苦諦様に特別無礼を働いた貴様には地獄の苦痛を味あわせてやろう。」


オレルアンは恐れおののき後ずさりをする。


ジリッ…―


「ひぃッ!」


ドサッ―


羅漢は、尻餅をついたオレルアンの腹を蹴りあげる。


「情けない声を出すな。」


ドカッ―


「カハッ…!…ウグゥゥゥゥッ!」


仰向けで悶絶していたオレルアンの肩を踏みつけた羅漢は、三又槍を振り上げた。


「地獄で懺悔せよ。」


三又槍がオレルアンの胸に向けて無慈悲に降る下ろされる。


ピキンッ―


「クッ!仕方がありません。ここは、一旦退かせていただきます。」


オレルアンは、胸に着けていたブローチ型の魔導具を握り、魔力を込めて起動させる。


―強制転移発動―


転移の魔法陣が展開され、オレルアンの姿が消える。


「空間ごと切り裂けば、どうということもない。」


妙意法

―空間渡―


グサッ―


三又槍が転移先にいるオレルアンの胸を貫いた。


「ムッ。地獄の苦痛を与えるはずが、一瞬で屠ってしまった。…苦諦様、申し訳ございません。」

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