第4話 ファイドの町

結局、町を出るごとに交代しようという形で話はまとまった。

やはりみんなマサオと行動したいのだろう。一緒にいるとなんだかほっこり

するからね!


さらに、なんやかんやで付いて来たときそれぞれに名前を付けてあげることにもなった。

今回ついてきてくれたゴブリン2人には、ゴブタ、ゴブヤスという名前を付けた。

これが後38人分あるのかと思うとバリエーションが途切れないか少し心配になってきた。大丈夫かなぁ…。


マサオからの情報によると、ここから1番近い町は『ファイドの町』というところらしい。特にこれといった特産物もなく、いかにも最初に訪れる町といった場所みたいだな。1時間半ぐらいかかるみたいだからマサオたちと話しながら向かえばすぐ着くのではないかな。


「そういえばマサオはどうしてあの大岩の下敷きになっていたの?」

「そ、それはだな、話せば長くなるから簡単に話すけど、ある魔法使いに襲われてしまったんだな。その魔法使いはとても強くて不意打ちだったから反応もできずに気づいたらあの大岩が降ってきたんだな。幸い近くにリュウジがいたのと、おでが高い再生能力を持っていたから何とかなったっていうのが事の真相なんだな」


なんと!こんなに優しいマサオを襲う輩がいるのか!?


「で、さっきリュウジがゴブノスケとゴブキチと話しているときに、その場にいたゴブリンにそのあとどうなったか聞いたら、そのファイドの町の方に行ったって言ってたから、出来ることなら何故そんなことをしたのか聞きたい気持ちはあるんだな」

「そんなの許可しないわけないよ~。むしろ僕戦闘力ないから応援しかできないけど僕に出来ることなら何でもするから遠慮せずに言ってね!よし!1番最初の目標はその変な魔法使いを探すで決まりだね」


まじめな話から少しふざけた話を繰り返しているうちにファイドの町と思われる柵に囲まれたいかにも田舎町みたいな場所が見えてきた。


「よし、ファイドの町に近づいたから町に入る手順を確認するよ?」


ここに来るまでにどうやって町の中へ入るのか話し合った結果、いくつかの案が出たうえで『物心ついた時から一緒にいたんだよ作戦』が1番効果的だろうという形となった。もちろん名付け親はこの僕だ。


策に囲まれた中で、唯一は入れそうな門のような場所に近づく。


「っ!おい!魔物だ!魔物が攻めてきたぞ!」


あっ!そうかそうか…。

マサオたちと仲良くなっていたから忘れていたけどこの世界では魔物は共通の敵だったんだよね…。それは警戒されるわけだ。


「ま、待ってください!僕たちは敵じゃありません!このゴブリンも危害を加えなければ何もしません!」

「な、なんだ。テイマーか。それだったら最初から出てきてくれればいいのに」

「す、すみません」


へー。

この世界にはテイマーがいるんだ。それは都合がいい。テイマーの所有している魔物だと思わせておけば襲われる確率も減るだろう。


「で?このファイドの町に何の用だ?」

「はい。僕、物心ついたときから一緒にいるこのゴブリンたちと初めて自分の村から出てきたんですけど、どこに行けばいいのかわからなくなってしまって、遠くに見えたこの町へ来てみたんですけど、中に入るにはどうしたらいいですか?」

「なんでぇ、坊主。他の町に来るのが初めてだったのか。それじゃあ教えてやる。町へ入るにはな、通行証ってのが必要なんだ。本来なら通行証は500G必要なんだが坊主。金持ってるか?」

「すみません。お金は持ってないです」

「そうか。じゃあ今回は特別にタダで発行してやる。3日間はこの町に滞在できるか ら安心しな。それからここに住むか出ていくかは自分で決めな。ちなみにこの町に住むためには税金として10000G役所に払わなくちゃならねぇな」

「そんなにですか!?」

「まぁそんな大金払えねぇよっていうんだったら”冒険者”になるっていうのも1つの手だな」

「っ!やっぱりそんな職業があるんですね?」

「あるにはあるが厳しい試験を受けなきゃならねぇらしいぜ?」

「や、やらせてください!どこで受けられるんですか!?」

「お、おう。それだったらこの道をまっすぐ行くと見えてくる、”冒険者ギルド”っていうでかい建物で受けられるぜ」

「あ、ありがとうございます!頑張ります!」

「ケガしないようにな。坊主、お前なんて言う名前なんだ?」

「リュウジといいます」

「リュウジか。覚えておくぜその名前。俺はヤムザっていうんだ」

「ヤムザさんですね。ありがとうございました、ヤムザさん!」

「おうよ!」


厳しい試験かぁ…。簡単に受かるといいんだけどなぁ…。


「旦那様、例のゴブリン共仕留めてまいりました」

「うむ。ご苦労でしたな。これであのお方の杞憂もなくなったことでしょう。私からあのお方へお口添えをしてあげましょう」

「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます!これからも精一杯働かせていただきます!」

「ほっほっほ。期待してますぞ。しかし、万が一でも捕まるなんてへまはしないでくださいね。あなたはこの町、いやこの国でも顔が知られているものですから」

「承知しております。では、失礼します」


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