あるパイロットの例

第7話 航空機事故

 中国帰りの空の上を気持ちよくフライトする私は操縦席に座り直した。かれこれあって、女性パイロットになり1年。今回のフライトは初めての機長なのだ。

「そろそろ、空港ですね」

「そうだね」

副機長の男性が声をかけてきた。彼は入社してから仲良くしている間柄なのだ。気が利いて、イケメンな私の後輩だ。

「それじゃあ、オートパイロットはやめて、着陸準備していかないとね」

「そうっすね」

空港にさらに近づくと、オートパイロット(自動操縦)を解除して、手動操縦になった。

まずは、副機長がランディングギアのレバーを引いた。

ランディングギアとは、飛行機の車輪を動かすレバーのことである。レバーはタイヤの形をしているから、分かりやすい。


改めて、機内放送を客室乗務員がしたのを聞き取ると、飛行機は滑走路へ向かって降下していった。この瞬間が一番ドキドキする。この瞬間失敗したら、自分はもちろん、多くの乗客とスタッフの命を失うのだ。

「着陸しますよ」

副機長が声をかけてくれた。この良い声に私は気を引き締める。

タイヤが滑走路を走っている。ゆっくりと、飛行機は止まった。


「皆様、ただいま○○空港に着陸いたしました。ただいまの時刻は午後3時35分、気温は摂氏27度でございます。安全のためベルト着用サインが消えるまでお座りのままお待ちください。上の棚をお開けになる際は手荷物が滑り出るおそれがありますので十分お気をつけください。ただいまから全ての電子機器をご利用いただけます。皆様、今日もXXX航空をご利用いただきましてありがとうございました。皆様の次のご搭乗をお待ちしております」


客室乗務員の放送が終わり、客室のベルト着用サインが消えたことが知らされると、乗客は乗務員の指示に従って飛行機を降り始めた――。


 機長第一回目のフライトは特に大きなトラブルもなく、大成功であった。

「どうだった?初機長」

「中国どうだった?」

「副機長の小田原おだわら君と上手くやった?」

パイロットの仲間から、たくさんの質問を投げかけられ、私は少し困る。

一つ一つ質問に答えると、あるベテランのおじさんパイロットからある情報を知らされた。

「アメリカで、事故が起こったらしい。一人が死亡したそうだ」

「ええ、そうなんですか?!マズいじゃないですか」

「ああ。日本の航空機ではなかったのだが、心が痛む」

「やっぱ、事故は起こさないようにですね。今回うまく言ったからって言っても、調子に乗らず頑張ります」

そうは言ったものの、その亡くなった客が哀れで仕方がなかった。


そんな時、パイロットは家に帰って事故のことを調べていた。パイロットは女性で、アメリカの川に不時着したらしい。その時に、ボートから落ち、急流に巻き込まれて一人の青年が亡くなったそうだ。何とも哀れで、どうにかしてやれないかと考えている時に、何やらサイトを見つけた。

『魂コレクターズ』

パイロットは、不思議がって、リンクボタンを押してしまった。

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