53. 気持ち分かるよ

53. 気持ち分かるよ



 王都のギルドから直接未開のダンジョンの調査依頼を受けた私たちはその準備をすることにする。今は街に行って買い物をしているところだ。


「ポーションは少なめで、マジックポーションを多く持っていかないと……あとは解毒ポーションと麻痺解除ポーションも多めに持っていこうかしら。ルシルには回復魔法をメインに使ってもらいたいし」


「買いすぎじゃないエステル姉さん?そんなに買ったら重いけど……?」


「備えあれば憂いなしよ。本当にキルマリアは文句しか言わないわね?」


「文句じゃないよ!心配してるんだよ!」


 また荷物ももたないくせに、このおしゃべりアサシンは……まあ私を気遣ってくれているのはわかるからいいんだけどね。


「ふむ。これくらいでいいか。次は武器屋に行くわよ。」


「えぇ~あたしお腹空いたんだけど……おなすい!おなすい!」


 うるさい。キルマリアがグズり出したので先に食事を取ることにした。


「うぅ……美味しい……」


「ちょっとキルマリア!それ私のハンバーグですわよ!?」


「早い者勝ちだよーん!ミルフィ姉さん!」


「あんたら子供かっ!恥ずかしいわね?」


 食事中の二人のやり取りを見て私は思わず突っ込んでしまった。まったくもう……。


「あのミルフィさん。ボクのハンバーグ半分こにしましょう?」


「でも、それはルシルのですわ。悪いですわ。」


「大丈夫だから!ほら半分こにしましょう?」


 そう言って自分の分のハンバーグを差し出すルシル。なんだかんだいって仲良さそうだなぁ……。微笑ましい光景だ。


「じゃあお言葉に甘えて頂きますわね?ありがとうルシル。」


 ミルフィはルシルに笑顔で答えると、ルシルは顔を赤くして俯いた。本当に可愛い反応するなこの子。


「ん?どしたのルシルそんな赤い顔して?」


「べ、別になんでもありません……」


「こら。元はと言えばキルマリアがハンバーグ食べたのがいけないんでしょ?」


「あはは。ごめんなさい。つい美味しくてさー」


「まったくもう……」


 本当に騒がしいわね……私より年下だし、まだ子供だから仕方ないけど。ご飯を食べて私たちは武器屋に向かう。


「へえ。いろんな種類の剣があるんだね。」


 店に入るとそこにはたくさんの剣や槍などが飾られていた。こんなにあるなんてすごい数だ。


「ここは王国一品揃えが良いって有名なんですのよ?それに安いですし。」


「そうなんだ。ミルフィさんもここで買い物をするの?」


「ええ。大体ここに来ていますわ。あ、このナイフとかすごく綺麗ですわね。」


 ミルフィは短剣を手に取りながら話す。確かに刃の部分がキラキラしていて美しい装飾が施されている。値段を見ると銀貨5枚だった。安くはないが高いとも言えない金額だ。


「そうだエステル。あなたも短剣くらい装備したほうがいいのでは?扱いならキルマリアが得意でしょうし、教えてもらえますわよ?」


「おお!それなミルフィ姉さん!あたしがおけまるになるまで教えてあげるよ?」


「あなた人に教えることなんてできるの?

 なんか不安だわ。」


「失礼だなぁエステル姉さんは!何回もあたしの暗殺術見てるじゃん!」


 別に私は暗殺術を学びたいわけじゃないんだけどね。でも確かにミルフィの言う通りではあるので、そのナイフを護身用に買うことにした。


「ねえミルフィさん。もし良かったらボクのローブ選んでほしいんだけど……?ダメ?」


「え?私はローブは分かりませんけど……?」


「似合うやつ選んでほしいの。お願いミルフィさん!」


「そ、そこまで言われたら断れませんわね。じゃあ一緒に選びましょうか?」


「うん!ありがとミルフィさん!」


 ルシルったら意外に強引ね……肉食系なのかしら?まあいいか。それからしばらく店内を見て回ったあと、結局ルシルの防具を選んだ。白いワンピースタイプのローブにフード付きの物を選んであげた。


「どうルシル?これなら動きやすいし、汚れにくいと思うわよ。」


「そうですわね。とても可愛らしいですわ。」


「あ、ありがとう!ミルフィさん!嬉しいな!」


「ふふっ。喜んでいただけたみたいでよかったですわ」


 あれ?私は?私も選んだけどさ……。ルシルの中に私の存在が消えてるのかな!?ちょっと寂しいんですけど!?


 なぜかその様子を見ていたキルマリアが「その気持ち分かるよエステル姉さん」と言っていた。キルマリアとは一緒にされたくないんだけど……。


 何はともあれ、こうして未開のダンジョンへの準備をすすめていくのでした。

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