45. 謎ムーブ

45. 謎ムーブ




 私たちは色々なトラブルはあったもののなんとか目的のロデンブルグにたどり着いた。書状の件はゲイルさんの知り合いの騎士団のエドガーさんに何とかしてもらったので良かった。とりあえず宿屋に行くことにする。


「なんかエドガー君が優しくて助かったね!エステルちゃんすごい!」


 優しいというよりちょろい。


「いやいやリーゼ。エステル姉さんのはある意味脅しだから。あーこわ!」


 誰のせいだと思ってんのよ。元はと言えばキルマリアが書状を捨てたのがいけないんでしょうに。


「リーゼさん。ああいう大人になってはダメですよ……にゃ」


 なんかレミーナさんも被せてくるし、にゃってキャラクター迷走してない?大丈夫?


「おい。エステル……」


「何ですかみんなして!私はただロデンブルグの依頼を受けようとしただけですけど!?」


「オレは何も言ってないぞ?何キレてんだよ?」


 うるさいうるさい!もういいもん!


「ふんっ!」


「……なんだあいつは?」


 宿に着いたら早速部屋を取り荷物を置くと、私たちは街に向かった。今日はここで情報を集めるつもりである。


「さて、まずは聞き込みから始めるとして……どうするかなぁ?」


「そうだな。ここは手分けをして聞いていくか?」


 う〜ん……。確かにそれが一番効率が良いだろうけど……この人たち誰も信用できないしなぁ……。まぁでも仕方ないか。


「わかりました。じゃあ私とレミーナさんでギルドに行ってくるので他のみんなは街の人に聞き込みをお願いします」


「ほーい。よし行くぞリーゼ!ゲイルのおじさん!あたしに続けぇ!」


「待ってよ~キルマリアちゃん~!」


「ったく。またガキの面倒を見るのかよ。」


「まあまあ。そう言わずに。では行きましょう」


 こうして私たちは二手に別れた。キルマリアたちは元気よく街の中に向かっていった……いやキルマリアだけか元気なのは。


「じゃあ私たちも行きましょうかレミーナさん」


「分かりました。……にゃ」


 なんでいちいち語尾につけるんだろう?しかもちょっと恥ずかしそうにしてるし……。それならやらなければいいのに。


「レミーナさん。無理して語尾つけなくても良いんですよ?」


「いえ、私は猫ですから。気にしないでください……にゃ」


「猫ではない。まあいいか。それでは行きますか」


「はい。お供いたします。にゃ」


 それから私たちはギルドに行き、情報収集を始めたのだがなかなか有力な情報が得られない。そんな中ある男性に声をかけられた。その男性はエドガーさんと同じ騎士団の鎧を着ており、年齢は私と同じくらいだろうか?


「すみません。少しよろしいでしょうか?」


「はい。どうかしましたか?」


「あの、あなたたちはエドガー隊長といたクラン『妖精の隠れ家』の方たちですよね?」


 あの人、隊長だったのか……知らなかった。


「ええ。そうですが……」


「やっぱり!ボクはエドガー隊長の部下でロイと言います。実は隊長に呼んでくるように頼まれまして、一緒に来てもらえないでしょうか?」


 なんだろう?なんか怪しい気がするんだけど……。しかし断る理由もないし。それにこの人が本当にエドガーさんの部隊の隊員なら一応話を聞いておきたい。私はレミーナさんと顔を見合わせてお互いの考えが同じだと確認すると彼の後について行った。


 そして連れていかれた場所は、街の中心にある、大きな建物であった。ロイさんの話だとここを騎士団とギルドの本拠地にしているらしい。


「失礼しまーす!エドガー隊長いますかー?」


 ロイさんが大きな扉を開けると、中にはたくさんの騎士たちがいた。彼らは突然入ってきた私たちに視線を向ける。


「おう。悪かったな愛しのアリシアの仲間のエステルさんよ。さっき街でゲイルにあったら「オレに聞くな。すべてエステルに任せてる」って言ってたからよ。悪いが来てもらった」


 本当にあのおじさんはしょーもない。こんな時くらい自分で説明すればいいものを……。


「別にいいですよ。それより何ですか急に?」


「ああ。実はさっき王都のギルドに問い合わせたんだが、お前たちダンジョン『王都の地下迷宮』を10階層まで踏破したんだろ?そこでだ。オレからも頼みがあるんだが……」


「何ですか?」


「ああ。実はロデンブルグの北の山の中に魔物の巣らしきものが目撃されたんだ。悪いがオレたちと同行してくれないか?もちろん報酬は払うぜ?愛しのアリシアにな!それで魔物の巣を潰して、「エドガー格好いい!結婚して!」とか言われたりしてな!」


 ……このおっさんそれが目的じゃん。あと私、この人のこと嫌いになりそうだわ。でも、魔物の巣ならそこを潰せば、このロデンブルグの平和も守れる。二度とエルランドのような悲劇を起こしてはダメだ。


「わかりました。引き受けましょう。レミーナさんもいいですよね?」


「はい。問題ありません……。」


「あれ?『にゃ』は?」


「今は猫ではありませんので」


 レミーナさんは指で自分の頭を指さす。あー猫耳のフードを被ってないからか。というかそんなところ徹底するのねレミーナさんは。私はレミーナさんの謎ムーブに呆れながらも、エドガーさんたちの提案を受けることにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る