第4話バ課長とがっかり長

うちの課の課長はバ課長と呼ばれ、係長はがっかり長と言われている。

自分も経験したことのない仕事を僕に振り、責任も僕が取るように現場監督にした。

彼らは、夜中の仕事なぞしたことはない。

ここは公益法人で、輸出入物の第三者証明機関なのである。

夜、着岸する船に乗り込み書類を僕は作成する。

作業員は輸出入物の検査をする。

気の遣う仕事である。

書類は全部英語で作成するので、英語の辞書は必需品である。

のりが欲しくて、外国の乗組員に糊を借りようとしたが、糊の英単語が分からない。

身振り手振りで、pasteと言う単語を聞き出し、事なきを得た。


朝の7時から別の船で働き、夜中から明け方の6時まで船に乗り込み、作業員を先に帰らせて自分は事務所で書類整理をしていた。着替えて、タイムカードを押し、缶ビールを飲みながら更衣室にいると、バ課長が、

「羽弦はいいな~気楽で」

と、言いやがり、がっかり長は、

「おいっ、羽弦、お前が一番楽してんな」

とほざく!

26時間働かせて置いて、なんだこのぼんくらどもは。

同僚が近付き言った。

「羽弦君の事見てると、スゴくかわいそうに見える。今度、また、飲もうな」

僕の味方は同僚だけだ。

ろくに英会話も出来ないヤツラが上司とは。

何とも情けない。27歳の時の話だ。

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