第3話 侵入


 社長……彼が取り調べを受けて、10日ほど経った頃でしょうか。


 私が夕方、散歩で近くの森を歩いていたときに、視線を感じました。


 それは彼、ジョンでした。とても悲しそうな顔しながら、彼は私を見ていました。彼は、やつれて無精ひげを生やしていました。彼は、私が気づいた事がわかると、逃げようとしましたが、私は追いかけました。


 彼は「来るな!」と言いましたが、私は構わず彼の手をつかみました。


 途端に、手に刺すような痛みが走ったのです。手に何かが入ってくるのを感じました。手には傷があり、私は、最初、何が起こったのかわかりませんでした。


 彼は、突然、獣のように叫びました。驚いた事に、彼はすぐさまナイフを取り出して、私を刺そうとしたのです。わけがわかりませんでした。


 とても悲しそうな表情をしながら、彼は追いかけてきて、私は必死に逃げました。しかし、彼の足は異常に速く、すぐに追いつかれてしまいました。


 私は、彼に訴えました。


「お願い! 殺さないで! 私のお腹に子どもがいるの。あなたの子よ!」


 彼は、最初、私の言った事が理解できなかったようです。しかし、事実がわかると、膝をついて「なんということだ……」といいながら泣き出しました。


 私が、彼を抱きしめようとしたら、彼は言いました。


「触るな!」と。


「何があったの? ちゃんと話して!」


と私が叫ぶと、ジョンは話し始めたのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る