第17話

 丘頭警部が「おっはよ〜」の掛け声と共にやって来た。お土産は、テスタロッサカフェ駒形店の浅草シルクプリンだ。絹のような滑らかさにこだわりを持っている浅草名物である。

 例によって全員揃って「おっはだっきま〜す」とおはよう+いただきますの挨拶で早速食べ始める。

静は今日はコーヒーを淹れている。


 警部が美紗をジロリと一瞥「頬の腫れひいたな」と呟く。

美紗は苦笑い。

金谷は全部で10人の女性を殺害していた。家宅捜査の結果、すべての写真が残されていたのだ。 

 過冷却水に放り込んだ時の、驚き、恐怖、苦しみの表情や動きが一瞬で氷で止められる。息のできない苦しさも受け入れるしかない、もがくことすら出来ない。その様子を見たときの感覚を一度経験したら忘れられなくなった、とゲロった。

 娘の殺害には抵抗はあったが、川の事故での娘の行為は許されない。自首を言ったがいう事を聞かなかった。それなのに自分には自首すれという、その事に腹を立て殺害を決心したと告白した。

そんな話を警部がした。

「一助、あんた銃撃つの上手いな。練習したのか?」警部は自分の銃を取られたことにショックを受けているのだ。

「俺、憲重を仇と思って、いつか撃ってやろうと思って、隠れて練習してた」

「あの厚いガラスの同じ場所に3発続けて当たったから、穴が空いたらしい。私じゃ無理だった。危機一髪で美紗が助かったのは、一助の腕のお陰だよ」

「いや、もう銃は触らない。怖いから、打った後震えてたの知ってた?」

「うん、それが良い。銃は私に任せて。下手だけどね」

笑いに包まれ、事件が決着した。

「一助、彩香ちゃんに連絡したか?」

「うん、一応もうじきくる」

「そっか、きたら奥の部屋で話そう」

「あ〜、だけどダメだと思うよ」と悲しげな一助。

「お前、本当に女心の分からない奴だなあ」美紗は哀れに思う気持ちを顔に貼り付けている。


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