第7話

 次の日、10時の約束をしていた。

金谷と一緒にいかだに乗った女3人と男1人。

一心はソファにかけて待っていた。

こんにちわ〜、と階段から声がした。

ソファに招き、挨拶をする。静も美紗も数馬に一助も揃った。

「わざわざお呼び立てしてすみません。早速ですが、金谷登美子さんのことを色々お聞きしたいのですが。」そういうと4人とも顔を曇らせる。あまり思い出したくないのであろう。

「実は、金谷さんが行方不明になってまして、探偵の私にお父様から探して欲しいと頼まれた訳でして、で、色々お話を」

「いつですか?」

「6月3日です、夕方8時頃浅草仲見世で友達と別れたあと行方不明に」

「先々週?」

「それで、20年前の事故の時の話を、その後金谷さんから何か聞いていませんか?」

「僕は全然会ってないです。電話もないです」

「私も」

「俺も」

「私、話した」と言ったのは大学は別でたまたま一緒にキャンプした要りん(かなめ・りん)だった。

「私、遠辺野くんの弟が桂林くんを夫婦とも殺害したでしょ。それで、何でそんなことを?って思って金谷さんに電話したの。そしたら会って話そうかってことになって」

「場所忘れたけど、ファミレスで会ったのね、そこで、彼女、私が悪いんだっていうの、どうしてって聞いたら、自分がちょっと意地悪な気持ちで時世を水に落としたって言うの、だって、妊娠なんて知らないし、私、遠辺野くん好きだったから、やきもちって笑うの。笑うのよ!私ビックリして言葉出なかった。で、殺人事件の前、弟から金谷に電話があったみたいで、兄が、桂林が手さえ離さなかったら姉さん死ななかったって、そう言うんですけど本当ですか?って訊かれたようなの。で、彼女は、それも本当だし、私もイカダがぐらついて、彼女を押してしまう格好になっちゃってって話たらしいわ」

「それなら、弟が金谷さんを恨むってことはないですよね?」

「さあ、どうかなあ、金谷声大きいから、どっかで弟に訊かれたかも知れないし、弟がまた聞きしたかもしれないでしょう」


「私は彼女がやった本当のことを弟さん知ってたと思うわ。」傑つむぎ(すぐる・つむぎ)さんが口を挟む。

「浅草の美術館で最近写真が評判になったでしょう。私も行ったの、金谷さんに会いに行った訳じゃないから、一般客として、そしたら弟さんがじっとその写真を見てるの。睨みつけてるって言った方が良いかもしれない。私、嫌だから直ぐにそこから離れたのよ、丁度その時、金谷が写真のところへ来たの。二人で少し話て一緒に出て行ったわ。その後は知らないけど。そうそう、関係ないと思うけど、玄関から出たとこで金谷のお父さんを見かけたの、二人が出てゆくとこ見てたんじゃないかな?私嫌いだから、顔隠して逃げ帰ってきた」

「どうして、嫌いなんですか?」

「だってねえ、有名な話よ、つむぎも嫌いでしょう?」

「え〜、勿論、あんなにも潔癖症な人。何かすれば、だらしない、きちっとしなさい。雑誌見てテーブルに置いたら、ちゃんと元の場所に戻さないと!って怒るんだもん」

静が俺とか数馬とか一助をグルリと睨む。

「いや、ありがとうございました。また、何かあったら電話しますので、よろしくお願いします」

彼らは仲良く出て行った。どこかに寄るのか。


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