第5話
「準備は出来たな?倒さなくていい!退ける事を目標にしろ!!…領主にも念のために応援を要請した!すぐに応援が来るだろう」
ここの領主はこの街に住んでいる人のほぼ全員から好かれている。苦しんでいるものを助け、悪を罰し、平等に接する。善人という言葉をそのまま表現した感じの人だ。
「だが、応援を待っていればもしもの事がある!そうなる前に我々、勇気ある冒険者が行かなければならない。今回はあのダラダラしているクソギルマスにも動いてもらう事になってる。…話が長くなった。行くぞ!!この街は我々が守るのだ!!」
『おぉぉぉぉー!!!』
地面が揺れる…冒険者達の声に振動しているからだ。
「…うるさい」
「我慢しようか」
そんな事をミルアに言っていると、冒険者達が移動し始めた。
「…行こうか」
「うん」
僕もミルアもついて行く。…何故かミルアが手を繋いできた。緊張感とは?でも、緊張感は和らいだ。
◆
「ここから全員気を引き締めろ!普通の魔物も現れるからな!そして、竜を見かけても何もするな!向こうが襲ってくるまで何もするな!それで向こうがお帰りになってくれれば誰も死なずに済む!」
…ここに幼生竜が居るのか。
「居る…」
「居る?」
「凄い気配を感じる。何かが居るのは確実」
そう言うミルアの手が微かに震えているのが分かった。僕は先程よりもミルアの手を強く握る。
「っ!」
「大丈夫」
「っ、うん」
ミルアの手の震えが収まった。そして、代わりに強く握り返してきた。
「行くぞ!!」
サブギルマスの一言に全員が武器を構え、森へと入って行く。
「ミルア、手を離そう。僕たちも警戒しないと」
「………………うん」
「…間があったな。ちゃんと全て終わった後に手握ってあげるから」
「…うん、約束」
「あぁ」
僕とミルアも手を離し、僕は武器を構える。ミルアは魔力を高めてる。
「…全員止まれ、居たぞ」
『っ!!』
「どうやら寝ているようだ……近くに血の後、恐らくインビジブルウルフを食べ終えたのだろう」
…あれが幼生竜。でかい…
「っ!気付かれた」
サブギルマスがそう言った瞬間、幼生竜の目がカッ!と開き、鋭い瞳孔がこちらに向けられている。
「何もするなよ…向こうが襲ってくるまで」
『……』
ここで攻撃を仕掛ける馬鹿は居ない。そこまでの愚か者は居ないからだ。
幼生竜は動かない。ただ、こちらを見ているだけ…
こちらも動かない…全員、バラけて緊張しながら幼生竜を見ている。
「ッッギャァォォォォ!!!」
『っ!!』
耳をつん裂くような、思わず耳を覆いたくなるような声を幼生竜が叫んだ。
「各自!自分の命優先で戦え!!来るぞっ!」
サブギルマスも剣を抜く。それと同時に幼生竜が起き上がり、羽を広げた。
僕も剣を抜く。…始まってほしくはなかったが、本気でやろう。
幼生竜が空を飛び、こちらへと――正確にはサブギルマスに向かって――物凄いスピードで口を開いて突っ込んできた。
「っぬぅぅ!!戦闘開始!!」
サブギルマスが剣で幼生竜の噛みつき攻撃を一人で耐えた。…やっぱ化け物だな。
『おぉぉぉ!!!』
「近接戦は無理に仕掛けるな!!確実に隙を見て仕掛けろ!魔法はどんどん使え!主に翼を狙え!他にも出来たらこいつが口を開けた瞬間、体内を狙え!!おぉぉぉ!!」
周りから魔法が幼生竜の翼目がけて次々と放たれる。幼生竜が声をあげる。…微かに翼に傷がついてるだけだ。
サブギルマスの体が赤く光る。身体強化系の魔法を使った。そして、サブギルマスが徐々に幼生竜を後ろに押し始めた。……水を差すようで悪いが、幼生竜相手に力で勝ってる、っておかしいだろ。
「っミルア、魔法をあの口の中めがけて放てるか?」
「可能、やってみる!!やっ!!」
ミルアの両手から拳程度の火の塊がかなりのスピードで飛んでいき、綺麗な幼生竜の口の中へと入った。
「エクスプロージョン!」
「ぬおぉ!!?」
火の塊が爆発し、幼生竜の口の中を燃やした。…サブギルマスが慌てて後ろに下がった。
「ナイスだ、ミルア。でも流れ弾に気をつけろよ?」
「…ごめん」
「全員よく聞け!!この竜はまだ戦闘に慣れてない!経験を積む前に倒しきるぞ!!はぁぁ!」
サブギルマスが剣を振るう。すると、幼生竜の硬い鱗ごと肉を切り裂いた。
幼生竜が悲痛な声を上げた。
僕もこの隙を逃さず、身体強化系の魔法を使い、剣を構えて接近する。どうやら僕と同じ考えの人も何人か居たようで剣や斧、大剣などを持って幼生竜へと近づいている。
「【終斬】!!」
自己流の剣技の一つ。それに僕が編み出した独自の魔法技術を組み合わせた剣技。
直接武器に魔力を纏わせ、それに微細な振動を掛け合わせる事で倍以上の切れ味を一時的に生み出す事が出来る。これの難しい所は攻撃、防御の瞬間に魔力に微細な振動をさせることだ。
常時振動させることも出来なくはないが、そちらに意識を何割か持ってかれるために戦闘に集中出来ないからやってない。
僕が振るった剣は幼生竜の目に深い傷を与えた。返り血を体に浴びてしまった……うぇぇ、顔だけでなく体全体に。
「ギャァァァォォォォ!!」
不味い、防御魔法!
「っ!うぐっ!」
幼生竜が痛みで叫んだ後、顔を乱雑に振り回した。それは、運悪く僕に当たり、僕は衝撃で飛ばされてしまった。
なんとか剣でガードはできたがやはり竜の体当たり…刀身が折れてしまった。これではもう使えそうにない…
「あいつに続けぇ!!」
『おぉぉ!!!』
僕に続いて他の冒険者も攻撃を仕掛けている。ほとんどの人が顔か尻尾、翼を狙っている。それに、少数だけど胴体の硬い鱗に傷を付けている人もいる。…あ、一人吹っ飛ばされた…けど、受け身は取れているから死んではない。
「レオ!大丈夫っ?」
「ミルアか、大丈夫だよ。ちゃんと防御魔法で防御できたし受け身もとった。多少体は痛いけど、足も手もどこも折れてない」
ミルアが僕の体をペタペタ触って怪我がないか探している。…くすぐったい。
「…良かった」
「まだ安心はできない、幼生竜は倒れてないから」
「…うん」
…でも、僕は戦えないかな?剣も折れちゃったし。
「…私頑張る」
「うん?」
「レオはそこで見てて、吸血族の能力の本質を」
そう言うと、ミルアは自分の手を噛みちぎった。…慌てかけたが、ミルアの能力を思い出して冷静になれた…心臓には悪いが。
「血よ、敵を束縛せよ」
ポタポタと滴り落ちてる血の一つ一つから糸みたいなのが発射され、それらは幼生竜へと不規則な動きで向かっていった。
「うぉ!?なんだこれ!?…あ…?味方の魔法か?」
サブギルマスが驚いている。その間に血の糸?が幼生竜まで辿り着き、そして絡みついた。……液体なのに弾力性のある物体みたいだ。
「固まれ」
ミルアが右手を握ると、絡みついている血の糸が硬質化した。
「ギャォ!!?」
無理矢理破壊しようとしているが…破壊出来てない様子だ。…両翼に鋭い爪を持つ手、両足が綺麗に縛られた幼生竜は最早逃げることも防御も無理だろう。
「っ誰かは知らないがよくやった!!全員!尻尾、そして頭とブレスに気をつけてタコ殴りにしろ!!」
冒険者達が一塊となって幼生竜へと突撃していき各々攻撃を仕掛けている。幼生竜も負けじと動こうとしているが拘束のせいか、頭と尻尾しか動いていない。これでもう、幼生竜は悲鳴を上げながらただやられていくだけの存在になった。
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後書き書くのめんどくさくなったので、やめまーす。あと、次回更新日もやめまーす(めんどくなった)
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