第3話



「今日も始めるか…ミルアも?」


「うん、私だって弱いままじゃレオの足手纏いになる。だから、強くなって敵を狩ってレベルを上げて進化する!」


 ミルアは両手をグッとして握り拳を作ってやる気を見せる。


「元気で何より。今のミルアは確かレベル15だよな」


「うん」


「人族は10レベルずつ進化するが、獣人?吸血族は違うのか?あんまりその辺りの事知らないから」


「獣人族は20レベルになったら一回目の進化が来る。そして吸血族は30レベルで一回目の進化」


「そんなに差があるのか…」


「うん、どちらも進化に限界はあるからその分進化レベルが高い。…私の場合はハーフだから、25レベルで進化かな?」


「なるほど、あと10レベル上げたら進化するかもしれないのか」


「多分そう?」


「頑張ろう」


「…うん!」


 幻覚か?ミルアの目が燃えている気がするな…やる気なのだろう。



「…そういやミルアって魔法しか使えないんだよな」


 この数日間、ミルアは魔法しか使ってない。あと、見てて分かったこともあった。それは、ミルアが使う魔法は無詠唱だということだ。魔法の無詠唱はとても難しいと聞いたことがある。魔法使いではないから…なんとも言えないけど。…僕が使えるのは身体強化系の魔法と自信の守りを上げる防御魔法だけだ。…厳密には防御魔法も身体強化系の魔法の一種なんだけどね。


「?違うよ、剣も使おうと思えば使える」


「ならなんで持ってないんだ」


「いいけど、血を吸わせて?」


「まぁ、倒れない程度…というより支障が出ない程度にならいいぞ?」


「なら見てて」


 ミルアがそう言ったと同時に、自分の手を噛みちぎった。


「ちょ!?何してるの!?」


 ダラダラとミルアの手から血が流れる。


「血よ、剣となれ」


 瞬間、血が意思を持ち始めたかのように一人でに動き、やがて剣の形へと変化した。


「これは吸血族の能力。己の血を色んなものに変化させることが可能。…その分体内から血液は失われるけど。でも、威力はピカイチ。やっ!」


 ミルアが血の剣を近くにあった木に向かって振るう。…しかし、何も起こって…いや、違う。


「…マジか」


 その木は切られた事に気づいていない。よくよく見ると切れ込みが木にはあった。


「ちょん」


 ミルアが剣を持っていない手で木を押すと、ズズッと木が動いて…次の瞬間、ズズンッ……と音を立てて倒れた。


「今の押しただけで木が動くのもおかしいけど…その剣凄いな」


「凄いでしょ」


 おぉ…自慢げだな。


 ミルアの血の剣が解除される。…剣に使われた血、消えたぞ?


「…でも、この能力使うと血が減るから。滅多に使わない、レベルが上がったら消費する血液量が減るからレベルを上げていったら頻繁に使うことが出来るかも?」


「へぇ〜」


「じゃあ、血!」


「…はいはい、腕?」


「首」


「…分かったよ」


「首!」


 分かったから僕の首を見て舌なめずりをしないでくれ。ゾワッする。…悪寒的な意味で。


 僕は服の一番上のボタンを外す。…別に外さなくてもよいのだが、こうした方が首元の面積?が広がってミルアも血を吸いやすいと思うからだ。


「…どうぞ」


 僕が地面に座ってからそう言うとミルアは僕の膝に乗ってきた。……抱きつく必要はないと思うんだけど、どうなの?ミルア。


「いただきまーす」


 カプッ…と僕の首元にミルアが噛み付く。そして、コクコクと血を飲み始めた。


 慣れ…なのか噛まれた時のチクッとした痛みは感じなくなった。代わりになんとも言えない感覚が首元にあるだけだ。


「コク、コク、コク」


 …そういや、この時は歯から麻酔効果と媚薬効果のある毒を血を吸う代わりに僕の血管?体内?に注入してるって言っていた。


 ……たしかに自覚してみれば頭がぼ〜とするような、しないような…あと、眠くなって……これ麻酔効果じゃね?意識をちゃんと保とう。ここで寝たりするのは危険だ。


 一応周りに魔物が居ないのは気配で分かるが、もしものことがあるからな。


「コク、コク」


「…たんと飲めよ」


 僕はそう優しく、ほぼ無意識にミルアの耳に囁いた。すると、ミルアがビクッと震えたのが分かって少し笑いそうになった。


 …今更だけど、ミルア…いや吸血族って大変なんだなと思った。何故か?定期的に生き血を飲まないと死ぬからだ。きっと、ミルアも今まで大変な思いをして生きてきたのだろう。


「…っ!!」


 僕はミルアの頭を優しく撫でた。狐耳がピンッ!と真っ直ぐに立ったのは…緊張?なのだろうか。



 …僕の膝の上に膝立ちになって首元から血を飲むミルア、そのミルアの頭を撫でている僕。…う〜む、周りから見たら誤解されそうだ。


「…コク、コク……ぷはぁ、ご馳走様でした!」


「はい、お粗末……違うな」


 なんて言えばいいのだろうか?…分からん。


 う〜ん、と唸っているとミルアの左手が先程までミルアに血を吸われていた首元に近づいた。何をするのだろうと思ったら…


「えい」


 温かい熱、光が首元に感じ取れた。…これは、回復魔法?


「…よし。これで大丈夫」


 そう言ってミルアは僕の膝から降りた。


「…今のって回復魔法か?」


「そう、今までは傷口に包帯を巻いてたけど…それじゃ目立つから頑張って習得した」


「…そ、そうか」


 習得…たった数日で?…僕は魔法は身体強化系の魔法以外使った事ないからなんとも言えないけど、絶対難しいはず。


「僕のために?」


「そう」


「…ありがとうね」


 僕はミルアの頭を撫でた。


「んっ……」


 …狐耳、触れていいかな?というより触れたい…触れよ。


 僕は頭を撫でている右手を、そのまま横にある狐耳に触れる。


「ひゃっ……」


「ひゃ?」


「…急に触れられたらびっくりする。触れたいならせめて一言言って?」


 顔を赤くしたミルアに怒られました。


「ご、ごめん…つい」


「いきなり耳を触られるのは…例えるなら、いきなり脇腹を突かれるのと同じ」


「あ〜…分かったよ。じゃあ、触っていい?」


「いいよ?…あっ、こういう事は私以外にはしたらダメ」


「?何かあるのか?」


「獣人にとって尻尾や耳を触られるのは一般的には家族にすらさせない事。それを許すのは心を本当に許しているものか、レオみたいな伴侶だけ。それに、知らないひとにいきなり触られたら獣人法では死刑」


「マジか…」


「だから私と、心を許された獣人以外触れたらダメ。…むしろ、私以外の獣人の耳と尻尾に触れたらダメ」


「お、独占欲?」


 僕が若干揶揄うように言うと、ミルアは図星だったようで顔を背けた。そして、少し顔を赤くして恥ずかしそうに呟く。


「ふ、夫婦なんだから……他の女にそういうことするの嫌」


 …ミルアって僕と一歳差なんだよな?僕が15でミルアが14、なんなミルアが凄く子供っぽい感じがする。


「…子供って思った」


「…い、いやぁ?」


「……………夜這いする(ぼそっ)」


「思った!思いました!思ったから夜這いやめて!?」


 目がガチなんだから……それに、寝る時一緒なんだから。


「残念」


「残念!?」


「…ふふっ」


 ミルアが笑った。…何故か妖艶に感じ取れた。



 そのあと、僕とミルアは日が暮れるまで鍛錬や魔物を倒し続けた。



 これは余談だが…今晩、本当にミルアが夜這いしてきた。…ちゃんと阻止したぞ?まぁ、負けそうになったけど。








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次はそうですねー。6月18日ですかね。


とても眠いです。

プロセカ君…最近フィグロスという音ゲーの方をやっていてプロセカ あんまし出来てない。

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