28. 付録-文章テクニック

番号が飛んでいますが、中間は「小説家になろう」固有の話なので、とりあえずカクヨム版では欠番として飛ばします。

次以降も、同様の理由で番号が飛びます。


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 偉そうなこと書いていますが、ほとんど聞きかじりです。


■三人称と一人称

 一般的には一つの意味段落の中では、人称を固定して書くのが普通です。そうでないととても分かりにくい文章になります。

 視点を変えるときは、固有のマークや数行以上の空行を入れるなどすると分かりやすいです。


 「僕は」「私は」と登場人物の語り手視点で書かれているものは「一人称」といいます。

 この書き方では語り手の見たもの、感じたもの、考えたものをそのまま書きます。

 制約として語り手から見えないもの、知りえないものを書いてはいけないことになっています。

 例えば「僕は驚きのあまり顔が青くなった」と書いてあると「誰が青くなったのを見たのか」という問題がでてきます。このような表現はできません。自分の顔は鏡などがないと見えないということです。

 ホームズのように語り手は助手の「ワトソン」視点、しかし主人公は「ホームズ」のように語り手と主人公が異なることも可能です。

 また「信頼できない語り手」と言って、何らかの理由により嘘をつく語り手ということもできます。小説の内容がその話の中で真実であるとは限らないということです。

 ここでいう嘘には「酔っ払い」「狂言回し」「嘘つき」「勘違い」「思い込み」などがあります。

 類似に「ミスリーディング」「叙述トリック」などもあります。


 主要人物にたいしても「アリスは」「ボブは」と言う風に、第三者的視点で書かれているものを「三人称」といいます。

 完全な古典的三人称では、登場人物の内面を書くことはできず、しぐさなどから類推することになります。

 内面なども含めて、なんでもありのものを「神視点」などと言う場合もあります。しかし複数人物の内面をごちゃまぜに記載すると、読む側がどういう視点で見ているか分からなくなるため、かなり難しい表現の仕方です。


 三人称のうち、主に特定の人物から見た書き方をするものを「三人称一元視点」といいます。背後霊タイプなどとも言います。

 この三人称一元視点では「自由間接話法」という方法を使って、その視点の人物の内面を直接書き記すことができます。

 「アリスは内心楽しくて仕方がなかった」のように、外部から見ているにもかかわらず、内面を記載できます。

 その場合でも、視点ではない人物の内面を書くことは基本的にはできません。できないこともないですが、分かりにくくなってしまいます。


 ゲームブックなどで使われる「あなたは」で書かれた「二人称」というものもあるにはあります。


 なろう系小説では一人称または三人称一元視点で書くことをおすすめします。


■第四の壁。メタ表現


 一人称小説でいきなり自己紹介をはじめるのはおかしいと昔は言われていました。現在では割と普通です。細かいことは気にしないほうがいいです。

 このような読者を意識した表現を「第四の壁」または「メタ表現」といいます。好みが分かれるものなので、ほどほどにするか気にせずに書いてしまうか作風を考えましょう。


■主語と述語の対応を見る


 例を出すのは難しいのですが、長文だったりすると、主語に対応した述語が全然関係ないことになっている場合があります。そういう文は分かりにくいので、分解したりして、しっかり対応しているように書き換えます。


■主語などと受動態、能動態の対応を見る


 二人以上の人物がいる場合、どちらの視点からその動作を表すかで、受動態と能動態が変わります。

 例えば「アルはビービーの手を引いて歩いた」「ビービーはアルに手を引かれて歩いた」という風に主語が変われば状態は入れ替わります。

 たまに、文章内に両方の人が出てくるときに、この受動態と能動態がおかしな関係になっている文を見かけます。どちらが主語、視点か意識して使い分けるようにしましょう。


■適度に読点をはさむ


 文章が長くなってきた場合、適度な間隔で読点をいれます。変なところに入れると非常に読みにくいです。入れすぎもよくありません。

 また、一文が非常に長かったり、その逆ですべての文が短すぎたりするのも気になります。


■修飾関係


 例文「大きい赤い目のウサギ」。さて、大きいのは目でしょうかウサギでしょうか。日本語では修飾語が二つ以上ある場合に、並び順によってどちらを修飾しているか分からない場合があります。

 「赤い目の、大きいウサギ」であればおそらく大きいのはウサギであると考えられます。「赤い大きな目のウサギ」なら大きいのは目です。読点を打ったり「の」ではなく別の表現で書いたりすることで、曖昧さを減らすことができます。

 「の」が二つ以上連続していると特に分かりにくいとされます。同様に「が」「を」が連続している場合もそうです。


 他にも修飾語と被修飾語の単語間の距離は近いほうが良いと一般的には言われています。


■同じことは何回も書かない


 短い文章で言うと「重言」といいます。「馬から落馬した」「まず最初」などが有名です。しかし同じ字を使うから「重言」でよくないというわけではありません。「朝食を食べる」はややおかしいと感じるかもしれません。「朝食を摂る」「朝ご飯を食べる」などとすると普通っぽくなります。

 いっぽう「歌を歌う」「筋肉痛が痛い」など同じ字を使っていても、意味しているものが異なったりする場合は問題がないとされています。「違和感を感じる」などは人により賛否が分かれます。「違和を感じる」ではおかしいので表現として問題はないとする派閥もあります。


 わざと強調するために、繰り返し表現をすることもあります。

 例えば典型例として「食った食った」「危険が危ない」「断トツの一位」「はろはろ、おはよう~」「すごく、すごく、強い」などです。


 繰り返しは重言だけではありません。「特徴は朝早く起きることが特徴です」のように「特徴は~特徴です」みたいに、はじめと終わりに同じ言葉が続く文章などもおかしいでしょう。この例では「特徴は朝早く起きることです」で十分です。

 また、同じ文または前後の近い文に、同じ表現が登場するだけでも、変に感じることも多いです。例えば短い間に「したがって」が複数回登場する場合などです。

 長い固有名詞などは略称などを設定したり代名詞を使用することで、繰り返しを抑えることができます。

 ただし「なろう系小説」では、代名詞を使用すると読者が理解できないとされる場合もあります。女性が二人以上いるシーンで対象の異なる「彼女」などを複数回使うと混乱してきます。


 会話で説明した事柄を、もう一度または先に内面描写として繰り返して書くのも、わりあい冗長に感じます。なるべくなら地の文または、会話のどちらかのみで説明しましょう。もちろん補足などをする分には構いません。


■対象はわざと同じ表現をする


 特定の単語を繰り返し使うことを避けるため、人物やモンスターなどを異なる表現を使って文章を書くこともできます。しかし「なろう系小説」というくくりでは、このような文学的な表現は、かえって分かりにくさが目立つため、どちらかというと非推奨です。

 「スライムが現れた。このぶよぶよは水まんじゅうみたいでプルプル震えていた。俺はそのゲル状モンスターに一撃を加える」のような感じになります。

 しかし分かりやすさで言えば「スライムが現れた。スライムは水まんじゅうみたいでプルプル震えていた。俺はスライムに一撃を加える」と統一したほうが、頭の中で関連付けする作業が不要なので、読書の難易度が低くなります。

 これは程度問題ではあるので、いい塩梅を探してください。


■Side使いによる同じシーンの繰り返しを避ける


 Sideという手法で、同じシーンを繰り返すのも、やはり「同じ」であるとみなされ、非難されやすいです。よほどそれぞれで違うことを考えていて、完全に読者から見て推測できない場合などに限って有効です。

 一人称であっても、他者の顔つきやしぐさでその人の考えを表現できます。そして読者は気がつくのに、なぜか視点主は気がつかず見当違いのことを考えていると言う風にすることで、わざわざSideなどを使わなくてもすれ違いですらある程度表現できます。

 またSideを使いつつ物語の次のシーンを書いて、話を進めるなら、問題にならない場合が多いです。


■文末表現の繰り返し


 繰り返しには「~た。~た。」と言う風に「た」の連続といわれるものもあります。

 文末が同じ形で何回も終わっていると、気になってきます。適度にいろいろな表現を使い回避するといいでしょう。

 「~た。~る。~た。~る。」と完全に交互になっているのも気になるそうです。

 体言止めや「~だった。~だ。~る。~でない。~だろう。」または五段動詞系の「思う」「歩く」「行く」「動く」「立つ」「問う」「話す」のようにバリエーションを増やしましょう。

 もっとも全然気にしないという作者、読者のかたも多いです。


■難しい表現を避ける


 必要でない専門用語などはなるべく避けましょう。ファッション、料理関連、魚や草木の名称、四文字熟語などなど。

 例えば「転生したらそこにはトゥニカを着た女神様がいた」ではトゥニカが何か分かりません。そういうものは調べてくれる人はあまり多くありません。その名称を使用したい場合は、テクニックとしては一言説明を加えることです。「転生したらそこには古代ローマ風の服のトゥニカを着た女神様がいた」のようにすることです。それだけでずっと読者にやさしくなります。

 もしくは厳密性などは求めないで「白い一枚布の服を着ている女神様」ともう単語そのものを出さないというのも手です。


■なるべく標準語を使用する


 「撫ぜる」「三角座り」「カッターシャツ」のように、分かるものもあれば分からないもの通じないものもあります。なるべく標準語を使用しましょう。「撫ぜる」は標準語では「撫でる」です。

 方言だと知らないと気がつかないことも多いですが、読者からすればかなり強い違和感を抱き、雰囲気を一気にぶち壊す力があります。

 関西弁キャラであっても、動詞や物の名前など、ネイティブ以外では理解しにくいものも多いので、注意して使用しましょう。

 コテコテのキャラにしたくても分かりやすさの前には妥協して、似非関西弁とするのも、いたしかたないと思います。


■固有名詞を避ける


 創作では一般的に固有名詞は避けるものです。とくにサービス名、製品名、会社名は避けます。「LINE」と書かずに「チャットアプリ」などとしましょう。Twitter、Facebook、Yahoo、GoogleなどのWebサービスから「コカ・コーラ」ではなく「コーラ」。「ヤクルト」ではなく「乳酸菌飲料」などと置き換えます。

 一部の製品では、製品名が一般名詞化していて使用しても問題ないとされるものもあります。

 地名や駅名は固有名詞ですがそのまま使用することも多いです。

 下手なトラブルを避けるためや、マナー、相手への配慮、自主規制などです。

 ただし「ステイプラー」「ケフィア」とかいっても理解されなければ意味がありません。そういう場合は「ホチキス」「カルピス」と製品名を承知で使用することもあります。

 また安易なサービス名の使用を避けることで、そのサービスなどが衰退した未来でも、違和感なく読むことができるという利点があります。時事ネタはそのときが過ぎれば過去になってしまうということです。

 VR小説のような未来の話で「LINE」や「スマホ」が出てくるのも違和感があります。

 ただし実際のところ小説の場合、商標登録などは分野が異なれば関係はありません。それはライバル製品や偽物に対する規制です。ですから記載じたいは犯罪行為ではありません。

 どうしても出したいというときは多くの場合、出しても問題ないと思います。ただ批判などは避けたほうが無難です。


■一部文字の伏字は意味がない


 伏字のなかでも、第三者が見てその名称などがなにであるか容易にわかる場合、それは伏字であったとしても、「内容を伏せている」ことにはなりません。

 誹謗中傷や名誉棄損などになるような文章は規約でも禁止されていますが、このような批判のために、一部文字のみ伏字にしていても意味はないということです。

 これには歌詞の無断転載行為などでもそうです。

 批判ではなく、特に意味のないニュートラルなまたはいい意味で使われている場合には、わざわざ伏字にせず、直接書いても一般的には問題ないとされます。これは上で固有名詞は避けると書いたことと反対のようですが、状況によって異なるということです。

 特に伏字で書く行為は「作者が罪悪感を感じている」=「悪意を認識している」「後ろ暗く思っている」と考えることもできます。安易な伏字での記載はかえってよくない場合もあります。ご注意ください。

 ネタなどを除き、わざわざ伏字にしたほうがいいようなことは、そもそも書いてはいけない場合が多いでしょう。

 場合により、もっと自主規制した遠回りな表現にするか、モノゴトを特定しないように分からなくして書くなどしたほうがいいです。


■三人以上のシーンは難しい


 会話にせよ、地の文にせよ、登場人物が三人以上になると、とたんに難しくなります。なるべく一対一になるようにすることで、文章の難易度を落とすことができます。

 会話文ではキャラ語尾などを使うことで三人以上でもある程度は書くこともできます。また一人称をその人物の名前や固有の表現にすることで、話者を固定する方法なども使えます。また相手の名前を呼ぶ、固有の口癖を加える、なおのテクニックもあります。

 例は三人ではなく二人ですが、


「おはよう」

「おはよう、エルダ。ところで、これなんだけど見てくれ」


 このように相手の名前を言えばどちらか分かります。


「マリアは焼きおにぎりが食べたいデス」

「フラルはお味噌汁が飲みたいです」

「あ、えっと、エリーはデザートにみかんを」


 主語を自分の名前とする人物が出てくることもあります。

 安易ではありますが、手段としては有効です。


「おはよう、なんだな」

「おぅおう、おはよう。昨日どうだった?」

「問題なかった」


 とかくかくしかじかと進んで、


「では行ってくる、なんだな」

「おぅおう、じゃあな」


 ここでは「なんだな」「おぅおう、」がそれぞれの口癖のように作用します。


■行動だけでなく気持ちも表現する


 見たままをつらつら書いていくと、どうしても行動についての記載が多くなります。しかしどんな表情をしているのか、どういう気持ちなのかを書き表すことも重要です。

 五感、味、匂い、まぶしさ暗さ、色、温度など小説ではいろいろなものを表現できます。


■プロローグ一番でポエムなどを避ける


 出だしのポエムは避けるべきです。意味が分からないからです。できれば全編を通してポエムは避けてください。

 できればプロローグというものそのものも避けた方がいいでしょう。いきなり本編として始めましょう。

 プロローグで歴史年表や神話、詳細すぎる地理などを語るのもよくないとされます。

 最初に設定を語りたいところですが、ぐっと我慢して可能な限り本編の必要な場面で紹介しましょう。


■導入部における見せ場を作る


 導入部そのものや、その次の早い段階、導入1話から数えて3話目程度までに、読者が面白いと思ってもらえるような売り要素を配置します。

 同様になるべく早い段階で、物語を続けていく上での、主人公の目的を明示すると、その後のストーリーの予告にもなり趣味が合う読者に興味を持ってもらえる要素となります。

 そのためには、時系列を入れ替えたりすることもあります。

 導入部が異常に長かったり、いきなり本編の長い、起承転結でいう承あたりに入ってしまうと、導入からいきなり中だるみになってしまい、読者は飽きてしまいます。

 とにかく話のなるべく早い段階で興味を持ってもらえるように書くといいということです。

 ミステリーには「冒頭で、死体を転がせ」という言葉が端的にこのことを表しています。

 ただし「開幕戦闘は悪手」「開幕サービスシーンは悪手」とも言われています。戦闘とくに異能バトルは、その世界のルールが分からない中、知らないキャラクターが戦闘していて意味不明に見えます。サービスシーンも同様に感情移入も何もない名前だけのキャラのサービスシーンを見せられても困るようです。

 戦闘とかサービスシーンとかではなく、その書き方、開幕の意味不明なシーンがだらだら続くならなんでもよくないとすることもあるようです。戦闘シーンでも意味が分かり簡潔に書かれていれば、それなりに読者に興味を持ってもらえるということです。

 なかなか難しい冒頭ですが、重要です。小説を書き進めた後に冒頭を書き直すのも手です。ただし書き進めてから書くと、作者だけは理解している先で提示する内容に依存している書き方になることもあるので、そのあたりには気を付けるといいと思います。


■ワンクリックの重み


 読者はクリックしてページ移動する際「次へ進むか」「やめて他を見るか」を考えるものです。このように前出の通り特に最初3話目までのブラバ率は、高くなりやすいです。

 クリックするたびに人は減るものだと、お考え下さい。そして対策でその減る人数は軽減できます。

 タイトルあらすじに気を遣うのは当然として、上の「導入部」の話と同じですが「1話目」には気を遣いましょう。だから「プロローグ」には批判的なのです。導入部として1話から3話と書きましたが、理想を言えば1話目で、読者への「ざまあ」などの報酬シーンや次話以降への期待感を抱かせる内容などを書いておくと、この最初のブラバを減らせるので、その後の読者数も増加することができ、ブクマ率向上にも関係してくるはずです。

 特に山もない、どこにでもあるような「つまらない」とされる1話は正直、web投稿サイトで戦うには厳しいものがあります。谷はあったとしても、それだけでは逆効果ですらあります。

 例えば、面白い感じの読者受けがいいヒロインが序盤で出てくるとして、1話目と2話目なら1話目から出てきたほうが、良い結果を生むことがあるということです。1話ラストでのちらみせでもかまいません。

 プロローグでは、神話など場合によってはヒロインどころか主人公の主の字すら出てこないことがあります。これでは小説の戦闘力を高くするのは難しいのです。

 どんなにその後ろの続きは面白くなると作者が叫ぼうが、続きを読む前に引き返した読者の目にはとまりません。

 導入部以降も、筆者自身は1話完結型エピソードも手軽に読めて好みなのですが、継続して次ページを見てもらうという視点でいえば、次話への期待感のあるつながりを見せるのもテクニックとして有効です。「引き」というやつです。

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