10. ルビ、振り仮名、傍点

 D1.登場人物などを紹介する場合はルビ、読み仮名を記載する。



■ルビ、振り仮名

 用語:

  親文字ルビ文字

  ルビ文字 = ルビ/ruby text

  親文字 = ルビ元/ruby base


 漢字の名前は、音読み、訓読み、人名読み、豚切ぶったぎり、濁音化などたくさんあり、推測するのが困難なことが多いため、ルビや本文で読み方を明示するとよいでしょう。

 山崎さんも「やまさき」なのか「やまざき」なのかはルビ等がないと分かりません。


 主人公の読み方が違うのに遭遇することも稀にあります。

 例えば「し、白黒」のように直前に一文字目の読みが書かれているシーンがあると発覚します。この場合は推定で「しろくろ」です。

 これが「は、白黒」であれば「はっこく」などと読むと推測できます。


 書く側で最も重要なことは、丸括弧やルビを書いたときには、なろうシステム上で確認をしたほうがいいです。

 よくルビ表示ミスや自動ルビにされてしまう失敗をしているのを見かけます。


 下で詳しく書きますがなろうでは「〇々」は漢字ではないので、縦棒なしでルビになりません。

 ルビの親文字の範囲を指定するには縦棒|が必要です。

 また親文字は10文字まで、ルビはカナなら20文字まで、漢字等なら10文字までの制限に注意しましょう。

 丸括弧()で上に書く文字はカナ専用です。上に漢字を使うときは《》書きが必須です。


 小説家になろうからカクヨムへ移行する場合には以下の3点に注意してください。

 ・()()のルビには未対応

 ・《》は中身がカナ以外でも自動でルビになるので強調表示の括弧として使用している場合には気を付ける

 ・傍点はカクヨム記法のほうが見やすいので検討する




 ルビは一塊として禁則処理、折返し禁止の対象になるので、なるべく短い単位で分割するといいと思います。

 名字と名前は別々にルビにすると、名字部分に名前のルビがズレて表示されたりしないので見た目もいいです。

 一般の単語も読みの文字数が合わないときは分割したほうが読みやすい場合もあります。


  一緒: 高山悟たかやまさとる小川愛おがわあい小野勘助おのかんすけ

  分離: 高山たかやまさとる小川おがわあい小野おの勘助かんすけ

  熟語:意味的いみてき以下略いかりゃく

  分割:意味いみてき以下いかりゃく


 2文字以上にルビを振るとき、一緒にルビにするのをグループルビ、漢字ごとにルビにするものをモノルビといいます。

 また文字ごとにルビを与えつつ単語全体を1つのルビにするものを熟語ルビといいますが、小説家になろうなどでは表現できません。


  グループルビ: 仕事しごと/仕事(しごと)

  モノルビ: ごと/仕(し)事(ごと)


 仕事などはモノルビ化することもできますが、全体で読み仮名が当て字、熟字訓になっている「今日きょう」「田圃たんぼ」「五月蝿うるさい」などはグループルビを使います。

 音声読み上げの都合や未対応端末の()の見た目では、グループルビのほうが優れています。

 モノルビではルビ対応の場合の見た目が漢字ごとに対応している点が有利です。


 一般的には「島嶼とうしょ」のように単語単位でルビを振り「島しょ」のように難読漢字単独にはルビ振りはしないようです。


 送り仮名がある場合は、漢字の部分のみルビにすることが一般的だと思われます。

 しかし、場合によっては送り仮名をルビから除くと、変な感じのする熟語などもあります。



 ルビ文字には、拗促音の小書き文字(ゃゅょっ等)を従来からの出版では使用しないことが多かったです。

 しかし、コンピューターでの出版、webやネット小説などでは小書きも使うことが多くなっています。

 これには音声読み上げで小書きのほうが正しく読めることや、人間も「つ」なのか「っ」なのか判断しづらいことから、広まりつつあります。

 例えば「しゅっぱん」は小さい「つ」ですが「しゅつげき」は大きい「つ」です。

 なろうではどちらでもよいと思いますが、個人的には小書きを推奨しておきます。


  大書き: 学校がつこう胡椒こしよう出版しゆつぱん出撃しゆつげき

  小書き: 学校がっこう胡椒こしょう出版しゅっぱん出撃しゅつげき



 連載の全体を通して、初出だけにルビを書く人もいます。

 連載の章などの一定の範囲で最初のときだけ、ルビを振る人もいます。

 連載の部分(話)、ページごとの最初のときに、ルビを振る人もいます。

 全体を通して、全ページで記載されているたびに全部にルビを振る人もいます。


 個人的には連載で毎日分けて読んだり、途中で一度小説から離れて、続きから読んだりする場合や、ページごとに処理される読み上げブラウザを考慮するなら、ページごとの最初に一度ずつまたは全てにルビを振るのがいいんじゃないかと思います。

 特殊な読みをさせる場合には、毎回ルビを振るほうがいい場合もあるでしょう。



 親文字に「漢字」、ルビに「外国語発音/カタカナ語」を指定して、単語の意味を示しつつ、英単語等を発音するという用法は、かなり普及していて、合意(コンセンサス)が得られていると思います。


 親文字に普通の語句、ルビ読みに心の中の呼び方、説明などを記載したりする使用方法も見られます。

 代名詞的用法の単語に使うと何を指しているか分かりやすい効果があります。

 一方で、これを台詞で使用すると、どちらを発音しているか曖昧で分かりにくい可能性もあります。


 なお、本来の漢字の読み方を指定するのを「正ルビ」、独自の読み方を「略ルビ」というそうです。

 海外では発音ではないルビは「DEEP-FURIGANA」と呼ばれているようです。


 ▼▼▼略ルビ例

「くらえ、絶対零度アブソリュートゼロ

→『アブソリュートゼロ』と発音。


あいつミキと、今日は一緒じゃないのな」

→『あいつ』と発音を推定。


大蔵大臣母ちゃんに聞かなきゃPCなんて買えないよ」

→これはどちらだろうか。

 ▲▲▲


■ルビの目安

 漢字にはその学習年などにより、難易度が異なります。


 従来からの常用漢字の常用読み:三、漢字、異世界、転生

 従来からの常用漢字の常用読み(特殊なもの):もっぱら、おのおのれる

 従来からの常用漢字の表外読み:わかる、かかわらず、こな

 新常用漢字の常用読み(簡単):俺、誰、椅子、鍵、貼る、膝、喉、尻、釜、挨拶、隙、鍛冶、蜂蜜、諦める、潰す、匂い、嗅ぐ、痩せる、呪い

 新常用漢字の常用読み(難しい):語彙、麓、憂鬱、謙遜、蓋、塞がる、腫れる

 人名漢字:綺麗、噂、稀、同棲、馴染、碧眼、鞄、斧、杖、槍、巫女、櫛、絆、穿く、窺う、撫でる、汲む、儲かる、尖がる、揃える、嬉しい、捧げる

 それ以外(漢検準1級/漢字第1水準):飴、石鹸、叩く、繫がる、怯える、覗く、掴む、刺繍、晩餐会、諜報

 それ以外(漢検1級/漢字第2水準):揉む、眩しい、咥える、曰く、胡椒、罠、絨毯、顰蹙、贅沢、瑕、贔屓、捌く、梳く、靡く、濾す、轢く


 2010年制定の新常用漢字は、中学卒業で読めるレベル、高校で書けるレベルとされているようです。

 学習対象ではなかった1995年生まれだいたい25歳以上の人は、新常用漢字の中には読み書きが難しい人も多くいます。


 常用漢字や人名漢字の中にも、読めそうにない言葉もあります。

 逆に漢検1級でも、簡単そうな言葉もあります。


 どの字を読めそうにない文字として、ルビを振るかは、なかなか難しい判断です。


■傍点

 小説家になろうでは、強調表記の点、傍点、圏点、脇点を打つ場合にもルビを使います。

 文字列をまとめてルビ化すると、環境フォントにより文字と点がずれることがあるうえ、改行禁止の問題もあるため、1文字ずつ別々にルビにしましょう。

 改行禁止というのは、一度のルビで指定した範囲はすべて禁則処理で途中改行禁止になってしまうため、次の行にすぐ追い出されて右側がスカスカになってしまいます。文字毎に好きなように折返しさせるためには1文字ずつの指定が必須です。


  まとめての傍点:あいうえおかきくけこ・・・・・・・・・・あいうえおかきくけこ・・・・・・・・・・あいうえおかきくけこ・・・・・・・・・・あいうえおかきくけこ・・・・・・・・・・

  一文字ずつ傍点:


 ルビ非対応ビューアーではまとめてルビになっていると傍点が非常にわかりにくいです。


  まとめ: あるもののけ(・・・・)の話

  分 割: あるも(・)の(・)の(・)け(・)の話


 漢字などの場合、発音の数ではなく、文字の数で傍点を打つのが普通です。

 また、文章に傍点をつけるとき、句読点、括弧には例外として傍点をつけないのが慣例になっています。


  例えば、


 横書きでは圏点は「ビュレット」で、Shift_JISの範囲では「中黒・」で代用されています。

 多くの縦書き書籍では読点のようなスタイルの「傍点の黒ゴマ」を使っているようです。

 なお、カクヨムでは《 《文字列》 》のように二個ずつの二重山括弧で表記すると、わりあい見やすい大きさの四角形で表示されます。

 中黒では理想より小さく、大きい黒丸●は大きすぎる感じがします。読点では左よりでAndroid等だとめちゃくちゃ細く小さいです。

 なお、なろうでは、なろう標準の「中黒」以外はほとんど見かけません。

 ビュレットはJIS X 0213およびUnicodeの記号です。


  なろう標準: U+30FB[・]

  カクヨム記法:  専用の小さい四角

  横書き: U+2022[•]ビュレット

  縦書き: U+FE45[﹅]


 以下参考:

    U+25E6[◦]白ビュレット

    U+FE46[﹆]

   U+25CF[●]

   U+25CB[○]

    U+25B2[▲]

   U+25B3[△]

    U+25CE[◎]

    U+25C9[◉]


   U+30FD[ヽ](不明)

   U+3001[、](非推奨)



■なろうルビ表記

 以下、なろう固有のシステム面の話をします。


 なろうのルビシステムはかなり複雑で分かりにくいです。一応、オフィシャルマニュアルはこちらです。

 https://syosetu.com/man/ruby/

 しかし一部の記述が正しくないように読めます。

 以前はさらに変な仕様でしたが、規約が改訂された後、たまに仕様変更があるようになりました。


 丸括弧()または二重山括弧《》の直前が漢字等でルビ読みが仮名20文字以内では、|なしで自動的にルビになります。

 ここでいう「漢字等」とは「漢字、全半角アルファベット」の混在可です。

 なぜかアルファベットには記号U+005B〜U+0060の「[\]^_`」が含まれています。

 また漢字等には漢数字のゼロ「〇」および|同(どう)の|字点(じてん)「々」シメ「〆」が含まれません。

 同じの「仝」は漢字のようです。

 ここでいう「仮名」とはひらがな、カタカナ、伸ばし棒「ー」、中黒「・」、三点リーダー「…」、全半角空白です。

 「ヴ」小書き「ヵヶ」もカタカナです。

 仮名には「ゔゕゖヷヸヹヺ」濁点半濁点「゛゜」および合成用濁点半濁点、踊り字の一の字点「ゝゞヽヾ」は含まれないようです。

 丸括弧()では、ルビ読みに仮名しか使えません。

 ルビ読みが仮名ではない場合は二重山括弧《》を使う必要があります。

 二重山括弧《》の場合は、ルビ読みが仮名以外を含むときは10文字以下の制限があります。

 ルビ対象の文字列は10文字以下しかルビ扱いになりません。

 括弧書きが自動でルビになるのを防ぐには「漢字||(かんじ)」のように縦棒を直前に記載しますが、ルビの条件に合わない時に縦棒を書くと縦棒がそのまま表示されてしまいます。

 二重山括弧《》でルビ読みが仮名以外の場合は、《》の表記でエスケープすることができないので、二重山括弧《》を普通の用途に転用することは難しいでしょう。

 丸括弧は全角半角両方受け付けますが、混在しているときはルビになりません。

 縦棒は半角「|」でも全角「|」でもどちらでも問題ありません。


 なおオフィシャルマニュアルなどで「親文字が漢字なら縦棒なしで自動ルビになる」(意訳)と書かれていますが、実際にはルビが仮名でないと、なりません。


 他にもスペースを含む場合の特殊仕様があるらしいです。

 また文字数では、<>&などHTMLの「文字参照」になる一部記号は、参照後の文字列で文字数を数える変な仕様になっています。


 非対応端末の多くではルビ指定のときの()なり《》がそのまま表示されます。入力時にはあった縦棒はおそらく表示されません。

 FirefoxとChromeではルビの横のスペースの取り方などに違いがあります。

 一部のなろう系リーダーアプリでは、ルビ表示に未対応です。


 いくつかあるAndroidのアプリ、なろう用リーダーで確認したところ、現在のウェブのルビ仕様と同じように表示できるアプリはあまりありません。再現性は低いと思ってください。なかには見切れたり、表示が明らかにおかしいものもありました。


 他のサイトに転載する場合、原稿をそのまま掲載すると、このルビ仕様が異なっていて、予期せぬルビや、ルビにならないところなどが出てきます。

 一度、プレビューや投稿後の本番表示で確認するといいでしょう。まれにプレビュー環境と本番環境で仕様が異なるサイトもあります。ご注意ください。


 おそらく一番汎用性が高いのは「|と《》」によるルビです。これは青空文庫形式でもあります。


 最後に字が小さすぎて用途があるか不明ながら、ルビ中にルビを書くと三段表示の二重ルビができます。


 ▼▼▼例ソース

 青山|(あおやま)高音《たかね》

 万年|無職《ニート》

 |強|(・)|調|(・)|文|(・)|字|(・)

 回復||(ヒール)の魔法

 範囲回復魔法|(エリア・ヒール)

 再構築再起動|(リビルド スタート)

 三〇二|(サンマルニ)飛行中隊

 黒々|(くろぐろ)

 仝|(おなじ)

 〆切|(しめき)り

 SSS等級|(クラス)

 濁点(あ゛) 半濁点長崎(なか゜さき) 狒狒(ひゝ)

 |あのハゲ《僧侶様》 ※

 自動漢字試験振仮名


 試験|(あいうえおかきくけこさしすせそたちつてと)です

 試験|(アイウエオかきくけこさしすせそたちつてと)です

 試験(あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとな)です

 試験(アイウエオかきくけこさしすせそたちつてとな)です

 ひらがな特殊 漢|(ゎ)漢|(ゐ)漢|(ゑ)

  漢|(ゔ)、漢|(ゕ)|漢(ゖ)

 カタカナ特殊 漢|(ヮ)漢|(ヰ)漢|(ヱ)漢|(ヴ)

  漢|(ヵ)漢|(ヶ)漢|(ヷ)漢|(ヸ)漢|(ヹ)漢|(ヺ)

 

 |試験《一二三四五六七八九十》 ※

 |試験《一二三四五六七八九十一》 ※

 試験|(あいう……)

 |二重表示《特殊|(ルビ)》 ※

 [\]^_`|(へんなきごう)

 |試験《<》、|試験《<テスト>》、|試験《&12345》、試験&123456  ※

 |親文字《(丸括弧)》※

 |縦棒|縦棒《たてぼう》


 ※の部分の《は表示の際には縦棒は記載していません

 ★★★表示

 青山(あおやま)高音たかね

 万年無職ニート

 |強(・)|調(・)|文(・)|字(・)

 回復|(ヒール)の魔法  ※エスケープ

 範囲回復魔法(エリア・ヒール)

 再構築再起動(リビルド スタート)

 三〇二(サンマルニ)飛行中隊  ※失敗(二にしか掛かってない)

 黒々(くろぐろ)  ※ルビ失敗例

 仝(おなじ)

 〆切(しめき)り

 SSS等級(クラス)  ※失敗(漢字以外の英語も自動ルビになる)

 濁点(あ゛) 半濁点長崎(なか゜さき) 狒狒(ひゝ)

 あのハゲ僧侶様

 自動漢字試験振仮名  ※ルビ失敗例


 試験(あいうえおかきくけこさしすせそたちつてと)です

 試験(アイウエオかきくけこさしすせそたちつてと)です

 試験(あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとな)です  ※自動ルビにならない

 試験(アイウエオかきくけこさしすせそたちつてとな)です  ※自動ルビにならない

 ひらがな特殊 漢(ゎ)漢(ゐ)漢(ゑ)

  漢(ゔ)、漢(ゕ)漢(ゖ)

 カタカナ特殊 漢(ヮ)漢(ヰ)漢(ヱ)漢(ヴ)漢(ヵ)漢(ヶ)

  漢(ヷ)漢(ヸ)漢(ヹ)漢(ヺ)

 試験一二三四五六七八九十

 試験一二三四五六七八九十一  ※ルビにならない

 試験(あいう……)

 二重表示特殊(ルビ)

 [\]^_`(へんなきごう)

 試験<試験<テスト>試験&12345試験&123456

 親文字(丸括弧)

 |縦棒縦棒たてぼう

 ▲▲▲


■HTML/CSSの圏点

 なろうではrubyタグで圏点を表現しています。

 CSS Text Decoration Module Level 3 では、rubyとは別にtext-emphasisのプロパティが追加されています。

 カクヨムの圏点はrubyでもこのCSSの指定でもなく、CSS背景画像による擬似表示です。

 HTMLのrubyタグは本文の一部です。そのため、コピーをすると圏点の点もブラウザによってはコピーテキストに含まれます。また読み上げブラウザでは読み上げようとします。

 CSSでの圏点はアンダーラインなどと同じスタイルなので、本文には影響がありません。


 CSSでは縦書きではゴマ「﹅﹆」、横書きでは丸「●○」がデフォルトスタイルになっていて、ビュレットではありません。


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