第13話「やり方いろいろ」

 すみません、更新再開すると言いながらぶん投げてました。

 エッセイそっちのけで『逆異世界転移物語』の外伝(R-18編。まだ非公開)の執筆に熱を上げておりました。大変申し訳ありません。その分トータル3万字超えの凄いのが書けてます!

 え?「エッセイだけ見に来てる人には関係ねぇよ、このタコ!」って?はい、おっしゃる通りでございます。

 前回更新してから日本語教師養成講座に復帰しました。久しぶりに日本語母語話者を相手に教えましたが、やはり新鮮でいいですね。最近はその授業用のパワポを作り続けています。


 そう、パワポ。これをお読みの皆様方はパワーポイントが使えるだろうか。もし授業なり発表なりする立場になったとして、何を使うだろう。

 私の授業はまちまちで学校の設備が充実していればパワポ、そうでなければ板書だ。

 今回はこのパワポと板書について軽く比べてみたい。


 まずそれぞれの簡単な特徴を私なりに挙げてみよう。

 

【パワポ】

メリット

・一度作れば繰り返し使えるので、その授業に関して授業準備の時間が大幅に減る

・言葉だけでなく写真やイラストを入れて視覚的な授業が作れる

・説明が理解できていない学生のために少し戻って説明し直すのが簡単

・ネット環境があれば、パワポだけでなく動画を見せるなどの応用も可能


デメリット

・1つ作るのにも慣れるまでとにかく時間がかかる

・教科書毎に作らねばならないので、年度が変わって教科書が変わるとまた0からのスタート

・見やすいパワポ作りにもまた経験を積む必要がある

・教室に環境がないと無意味(パソコン、プロジェクターが必須)


【板書】

メリット

・教科書の内容を確認すればいいだけなので、準備にかかる時間が短い

・授業の都度板書するため、その日話題に出た内容を使った例文を書くなど臨機応変に対応できる


デメリット

・板書に時間がかかると学生を待たせる時間が長くなるので無駄な時間が生じやすい(学生に練習させる、書きながら学生と雑談するなどで回避可能)

・字が汚い、まっすぐ書けない、漢字が苦手だと悲惨なことになる



 ささっと思いつく内容を書くとこんな感じ。

 私は大学で教えていたときはパソコンを持参してプロジェクターに繋ぎパワポで授業をしていた。コロナ禍以降はWi-Fi環境も整備されたのでGoogleマップで学校の周りの料理屋を紹介なんてこともできて便利。


 一方の日本語学校はパソコンもプロジェクターもあるにはあるが、大学ほど使い勝手が良くないため板書で対応している。Wi-Fiも学校備え付けのパソコン用には用意されているが、私が自由に使える回線はない。

 また、私は日本語教師と思えないほど漢字が苦手なので板書しようとして慌てて電子辞書で確認するなんて日常茶飯事。横にまっすぐ書くのも苦手だ。そう、板書のデメリット2つ目は私のこと。ノンフィクション。

 開き直って私の書いた漢字を指差して中国や台湾の学生に「これで合ってる?」なんて聞いたりも。まぁ、これはギャグのようなものだが。


 とはいえ慣れてしまえば板書はそこまで苦労することはない。

 結局のところ普段の忙しさとパワポを作る時間や手間を天秤にかけての判断が重要。

 コロナ以降はオンラインでのリモートクラスもあるので機械への適正が高いに越したことはない。


 Twitterをフォローしてくださっている読者様は春頃から私がパワポ作りにヒーヒー言っているのをご覧になったはず。解説が少なめなテキストを使っていたのでパワポに例文や解説を入れて作っていたわけだが、例文もページの構成もひらめきとセンスが九割くらいを占めるので勢いが出ないとただひたすら時間が過ぎるだけで辛かったのを覚えている。まあこれは小説執筆と同じことか。

 この仕事はこれの繰り返しだ。


 他にも新しい語彙の導入で絵カードを使ったり、漢字の読み練習でフラッシュカード(FC)を使ったりする。絵カードは単語が意味する絵が大きく描かれたカード。初級ではよく使う。『みんなの日本語』という老舗の有名教科書を使っている学校ならたいてい置いてあるはず。

 FCは例えば漢字が書かれていて学生に読み練習をさせるときに使うカード。ササッと出して読ませてすぐに次のカードを見せて読ませて、そんなスピーディな練習をしたいときによく使う。以前、新しい教科書用に100均で画用紙を買ってきて切って自作したっけ。

 

 これをお読みの方で日本語教師志望の方はどれくらいいるだろう。教師全般に言えることだが、週末や平日の夜、趣味を我慢してこれらの授業準備をすることも我々の仕事の一つだ。しかもこの準備時間に給料は発生しない。もう一度言う。たとえ5時間かけてパワーポイントを作ってもその時間の収入は0。なので準備に要する時間が短い板書に頼るのもよくわかる。

 だが、大切なのは自分がわかりやすく教える手段を研鑽することだ。パワポが適した授業ならパワポ作りに妥協してはいけないし、板書向きの授業なら教科書や手帳に大量のメモ書きを加えて授業の進行がスムーズに行えるようにしなければならない。できないと学生に申し訳ない。

 私はこの準備時間の長さを踏まえてよく学生に「忙しすぎるから、教師にだけはならないほうがいいよw」なんて言ったりしている。ただし、必ず「私はやめたいと思ったことなんて一度もないけどね」とも付け足すが。先日教えたクラスでこれを言ったら想像以上に感心されてしまった。ちょっとカッコつけただけで、そんな大したことは言っていないのだが……。


 この「やめたいと思ったことがない」点はまたそのうち書こうと思う。

 今回は以上。

 

 できるだけ「日本語教師の仕事について」「日本語教師倒して経験したこと」「タイ生活で経験したこと」という三本柱で書きたいのだが、経験は自分で普通と思っている(実際はけっこうレアな経験)なんてことが多くネタ選びに難儀している。それでもこのエッセイにお付き合いいただければ幸い。

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