トマト準也 様とお題【大賢者】で短編やってみた

 タイトル 大賢者と言い張れば大賢者なんだよ

 

 

 ステータスがあり、称号が与えられる異世界に一人の屈強で筋肉隆々なスキンヘッドな男がいた。ステータスは教会でしか確認出来ないため、嘘を言ってもすぐに確認する術はない。

 

 もっとも、誤差の範囲を超えて嘘をつけば、ステータス値との能力差でバレるのである。そう、戦闘をしなければバレにくいのだ。この男は、大賢者だと偽称する詐欺師の男だ。

 

 もちろん男には魔法スキルも無ければ知識もない。大賢者どころか賢者のけの字もない。脳味噌まで筋肉が詰まってそうな見た目だ。

 

 そして片田舎で大賢者と偽り接待を受けようという腹積もりの、見た目とは逆に小心者な詐欺師である。

 

 もちろん喋れば知性の無さがバレる。そこでこの男はセリフを決めている。それは、「我は大賢者なるぞ」「大賢者は心が広いのだ」「大賢者に任せろ」この3つのみである。理由はこれ以上のセリフを覚えられないからだ。

 

 そして片田舎の人口が百人に満たない村に狙いを定め詐欺師は、村に向かって歩いていく。

 

「あんた誰だべさ?こんなところに旅人はこねぇべ。野党じゃないのかさ?」

 

「我は大賢者なるぞ」

 

「ほえぇー、大賢者さまだべか?気を悪くしただべか?」

 

「大賢者は心が広いのだ」

 

「ありがたゃーありがたゃー、そだなんもない村だけど泊まってくだせぇ。大した歓迎は無理ですけども」

 

「大賢者は心が広いのだ」

 

「そうですかい、大賢者さまは素晴らしいべ」

 

 この国には本物の大賢者がいる。そして本物の大賢者は人々を救い平和を望み報酬を求めない、心優しい人物で大変な人気がある。この人気にあやかり詐欺師は飯と寝床、生活必需品を無料で得ているわけだ。

 

「大賢者さまが来なすったべ」

 

 村人が声をかけると大賢者を一目見ようとわらわら村人が集まってくる。

 

「我は大賢者なるぞ」

 

「大賢者さまだべ」「これで村は救われるべ」「ありがたゃーありがたゃー」「お父さん、大賢者ってなぁにぃ?」「頭良くて凄い強い人だべ」「スッゲーべ」

 

 筋骨隆々なので見た目は、強そうである。大賢者感は全く無い筋肉の固まりだ。本物は爽やか系イケメンで、幼くして魔法を極めた天才である。さらに知性は、幼い頃から大人のようで凄まじい知識量を誇っていたらしい。

 

 全く似てないが、写真も無いため会ったことがない村人には、見分けがつかないのは当然である。

 

「大賢者さま、村の井戸が枯れて困ってるべ。どうにかならんべか?」

 

 村長らしき人物が、詐欺師に無茶振りをする。

 

「大賢者に任せろ」

 

 自称大賢者に断るセリフはない。だから井戸を見つけて、歩み寄ると覗き込む。もちろん井戸に水はない。もちろん土木知識などない。だから掘ることにするようだ。深くなれば水が出るかも?という事だろう。

 

 無言で井戸に筋肉を押し込み底に降りると、筋肉が邪魔で井戸を破壊しないと手が底に届かない。

 

 少し考えて小心者なので破壊は諦め、底をとりあえず思っクソ蹴る。

 

 どごーんと蹴りで音がなり、じゅわ~っと水が出た。よく分からないが解決したので地上に上がる筋肉ダルマであった。

 

「大賢者さま、井戸はどうだべ?」

 

「我は大賢者なるぞ」

 

 詐欺師は、井戸を指差す。万能なセリフのようだ。

 

 復活した井戸に村人は感動する。

 

「水がやっと飲めるべ」「キャーキャー大賢者さまカッコいい♡抱いて」「オメェはババアで結婚してるべ」「祭りじゃ井戸復活祭じゃぞ!!ラーメン作るぞ」「豚骨か?鶏ガラか?どっちだべ?」「やっぱり醤油だべな」「主役はメンマだべ」「なに言っとるか、ラーメンは麺が命だべな」「ラーメンなんだぞ?ラーが主役だべ」「ラーって何だべ?」

 

 村人の視線が筋肉ダルマに集まる。

 

 もちろん彼の脳筋な知能に答えはない。

 

 因みにラーメンのラー中国語で引っ張るで、麺の製法によりラーメンなのだ。

 

「大賢者に任せろ」

 

 詐欺師は、ラーメン作りを始める。セリフ的にこうするしかないというか、逃げたというか、何にしても怪しまれる事は、回避してみせた。

 

「おい!!あれはツインベッドルームだべ!!大賢者さまなんとかなるべ?」

 

 村を襲うために魔物が現れたらしい。

 

「ツインベッドルームじゃなくてツユダクラーメンだべ」「ばーさんや。ラーメンジャンキーすぎるべ。あれはツインヘッドベアだべな」「強い魔物だべ逃げるべ」

 

 魔物は、双頭の熊らしい。ツユダクラーメンって旨いのだろうか?

 

「大賢者に任せろ」

 

 詐欺師なのに何故か魔物に素手で立ち向かう。そして相撲のように当たる筋肉の塊によりツインヘッドベアは吹き飛ぶ。

 

「我は大賢者なるぞ」

 

 そう雄叫びを上げた詐欺師な筋肉はツインヘッドベアに追撃でタックルを、決めると顔面を殴り陥没させる。

 

「大賢者さますごいべ」「大賢者さまの魔法は強いべ」「どんな魔法だべ?風魔法だべか?」

 

 誰がとう見ても物理攻撃、タックルとパンチでしかない。

 

「大賢者は心が広いのだ」

 

「大賢者さまに秘密をきいて許してくれるとは優しいべ」「キャーキャー大賢者さま結婚して♡」「お前はまだ3歳だべな犯罪者に大賢者さまがなるべ」

 

 心配しなくても詐欺師なので立派な犯罪だ。

 

「大賢者は心が広いのだ」

 

「「「「!?!?!?」」」」

 

「大賢者は心が広いのだ」

 

「犯罪者にしようとしても許して下さるとはさすが大賢者さまですじゃ」

 

 こうして詐欺師は今日も無事に村を救い、食事と屋根付きの寝床を無料で手に入れたのだった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 その頃、本物の大賢者は偽物を捕捉し監視していた。

 

「異世界チート転生した僕の偽物なんて許さないからな。さて仕上げにステータスチェックしますか」

 

 こうげき 筋肉

 ぼうぎょ 筋肉

 まりょく 筋肉

 かしこさ 筋肉

 すばやさ 筋肉

 えむぴー 筋肉

 すきる  筋肉

 称号   自称詐欺師な聖人

 

「・・・なんでだよ!!バグってるやん!!聖人って魔王討伐の仲間じゃん!!あれかぁ、あれなのかぁ」

 

 なお大賢者の魔力、知能、MPは10億と完全なるチートでも筋肉には生涯勝てなかったという。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 あとがき

 

 本作は トマト準也  様

 https://kakuyomu.jp/users/tomato23jun

 

 タイトル 勇者は大賢者の助手をします。

 https://kakuyomu.jp/works/16817139555309040551

 

 

 1、新作で完結すること。

 

 2、1文字以上、1万文字以下

 

 3、ジャンルは自由

 

 4、期間は2022年6月13日まで

 

 5、お題は【大賢者】です。ヒントはなしです。

 

 今回はエイルよりも先に書き下ろしていたので、完全に後出しになりました。ネタは前回の穴と似たもののありますが、主人公のセリフが3つといつ謎縛りな作品となりました。

 

 これは予想外に難しく2600文字ほどで挫折しました(;^ω^)今回もツッコミが不在です。まぁ主人公にツッコミを入れると作品がご臨終しますね(笑)

 

 エイルは、自分の得意なフィールドに持ち込みます。つまり異世界ファンタジー、現代ファンタジー、そしてコントですね。なので大賢者は得意な方のお題になりますが、ダンジョンマスターで登場させてるため、イメージが引っ張られてそれで、こんなネタに走りました。

 

 というか恋愛系とか、ラブコメとかは書けませんからなにがなんでも避けますし、現代ドラマとか感動系とかはエイルの筆力で勝てるとは思いません。

 

 自分の強さを活かす。長所を徹底的に伸ばすのがエイルの作戦です。まぁ日本の学校は平均点を重視しますが、社会では特化してる方が評価されますし強いと思います。

 

 何かつかめてると良いなぁと、思いつつこのあたりで締めさせていただきます。

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