第5話 変化は自分の周囲でも起こっていて……

『今までは、周りからの非難に、ずっと耳を塞ぎたかったかも知れないけど……大丈夫よ、自信を持って! 君は、正しかったんだから!』


 僕が、正しかった……?

 本当に、そうだったのだろうか……?


 今でも、まだ自分の取った選択肢が、正解だったなんて自信は、無い……


『君は、正しかったの! いつだって、君は、自分の心の声に素直に従っていたのだから! 流れに逆らわずに生きている方が、どんなにラクかは、誰だって知っているわ! そんな誰もが周りに流されて、自分を見失う事が多いこの世の中で、君は、例え孤独になっても、周りに染まる事無く、自分の色を守り抜いたの!』


 僕が不登校を決意した事で、まず母が泣いた。

 父が、考えを取り下げさせようと、僕に何度も説得を試みた。


 それでも、僕が応じようとしなかったせいで、2歳年下の妹の真由実が、同級生達から陰口を叩かれるようになった。


 自分のワガママで、家族みんなを傷付けてしまってたのは、すごく心苦しかった。


 真由実まで、自分も学校へ行きなくないと訴え出したけど……

 僕と違って、喘息のような持病は無く健康体だから、両親に聞き入れてもらう事が出来なかった。

 毎日、嫌な思いをしながら泣く泣く登校し続けている真由実……


 だから、真由実に対しては、他の誰よりも申し訳ないと思っている!


 登校を再開出来るようになったら、まず真由実に、今まで辛い日々を過ごした分も何かの形で返したい気持ちでいる!


『真由実ちゃんも、心では、君の事をちゃんと理解出来ているの。ただ、あの時は心無い中傷で傷付けられて、その矛先を君に向けてしまっただけ。それに、真由実ちゃんを陥れた生徒達は今、『フロムET』ワクチンの副作用に苦しんでいるわ』


『フロムET』ワクチンを打っても、人によって、副作用を生じる場合と、無反応な場合が有る。


 もちろん、ワクチン成分内容の違いや濃さにもよるらしいが、同じロットのワクチンを打っていたとしても、その後の体調の変化には個人差が見られていた。


『フロムET』ウイルス自体も、空気感染するもので有りながら、同じ室内にいても、発症する場合としない場合が有る。


 どちらも、見えないながらも何らかの法則性が有るのだと推測されていた。

 まだ推測の域だが、よく言われているのが、その人自身の体質と、免疫力や食生活や習慣などの違いだった。


 僕は、宇宙からETが持って来たウイルスなんだから、何か、僕らには見えない世界系の事が原因なのだと勝手に勘繰っていた。


 脳の普段動いてない部分が、何かのきっかけで活動し出すと、今までは不可能だった事が出来るようになると言われている。


 その脳を動かす作用は、その本人の心、精神性による違いなのかも知れない。

 今まで固まっていた脳が動き出すと、異能力が使えるようになると同時に、どんな病魔にも侵される事のない、超人のような屈強な身体になるのでは……と想像していた。


 ただ、それが精神性の違いによるものと仮定すると……


 真由実をけなしていた相手達はともかく、僕の優しかった友人達が亡くなったのはどうにも腑に落ちない!

 何か、もっと別の要因も有るのだろうか?


『君の推測通りよ! 現代人は、目に見える物しか重要視しないけど、本当は、目に見えてない内面の方が、とても大事なの! だから、正しく潔い心を持って、世の中を客観的に判断出来る、君のような人間こそが、これからの時代を担っていく大切な存在なの!』


 そんな風に、やたらと褒められまくっても、僕には何も実感がない……


 僕に有るのは、周りの同級生達と一緒に学べなくて……それで家族を傷付けてしまったという、負のレッテルだけ!

 だから、僕は、家族に対して、これから先、今まで迷惑かけて来た分を一生懸命に償っていかなくてはならないんだ!


 それに、彼女の言い分を認めたところで、僕の頼れる優しい友人達の死については、未解決のまま……


『それについては、現世での行いだけではなく、因果応報のようなものが有ったり、カルマを清算した段階だった可能性も有るのよ』


 因果応報……

 過去世の悪業を現世で償うような感じだっけ……?


 カルマ清算……

 過去世までの罪が、全て清算出来た状態の事だろうか……?


『そう、そういう目に見えない括りが、実際にこの世には存在しているの。そして、清算済みの人は、肉体を持ってこのまま留まるか、肉体を捨てて、次なる次元で活躍するか選べるのよ。君の友達は、後者で、君達からは見えないけど、君達の為にパワーアップした存在となって、見守る道を選んだ立派な人達よ!』


 僕の友達が、肉体的には死を迎えた事になるけど……

 彼らの死が、『フロムET』ウイルスという災いの犠牲となっていたわけではなく、次なる大きな飛躍の為に選んだ過程だったって事なら、納得できる!

 

 ありがとう!!

 そうやって、これからも僕達を支えてくれようとしているんだね!


『あともう1つ、言っておかなくてはならない事が有るの。正確に言うと、実はまだ、君が正しかったと力説出来るような時代の流れにはなっていないわ……残念ながら、それは、もう少し先送りになりそうなの。でも、今のうちに心の準備をしていないとね!』


 心の準備って……?

 一体、何についての準備なのだろう……?

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