EPISODE2 『温かいけど、なんかチクチク刺さるな……』

 今日もふと空を見上げてみる。すると落ちてくるソレを見た。地面に落ちてきたソレの傍によって、じーっと目を凝らして見る。


 先日落ちてきた変なソレの事があってから、なんだか今回は少し自分の中で警戒心が芽生えている。それくらい衝撃的だったんだ。あのソレ……『フゥロ』と自身の名前をそう言った影みたいなのに吸収されたのは。


 目の前に新しく落ちてきたソレは、なんだか少しだけトゲトゲがあった。そのことがわかっただけでも少し安心して、ようやくソレに手を伸ばす。チクチク刺さりはするものの、とても心地の良い温かさを持っている。チクチクと温かさって、基本的には相反するはずなのに。……まぁ、でもソレにはよくある話ではある。


 「とりあえず良かった~……」

 つい、本音が漏れてしまう。またこの間みたいな“何も感じられない”ソレが落ちてきたらどうしよう、なんて不安はこの時ようやく解決された。同時に温かいソレをギュゥッと抱きしめたいのに、チクチク刺さる小さなトゲトゲがボクの腕と胸に刺さって小さな痛みを感じる。うーん……ちょっと厄介だなぁ。


 「いててっ」

 小さな痛みを我慢しつつ、とりあえずいつものようにソレを抱える。辺りを見回すと、今日も近くには誰もいなかった。でもこれだけ温かくて、だけどチクチクするソレは、いったい何色に見えるだろうか。ボクは不思議に思って、まずはシカクを探すことにした。


 丸メガネをした、ボクら仲間の一人……シカクを探す。……。この時間はたぶん、自宅で読書でもしているだろう。そう目星をつけて歩いた先、ボクの勘は当たったようで目当ての人物をいとも簡単に見つけ出すことが出来た。


 「おーい!シカクー!」

 シカクは自宅の窓辺にイスを置いていて、そこによく座って本を読んでいる。たくさんの文字が色々な色を見せてくれるから、とてもキレイで楽しいのだという。


 ボクが声をかけると本から視線を上げたシカクは、ボクの腕の中のそれに気が付いて目を凝らした。

 「今回は、前回とは違うみたいですね」

 「うん。だから持ってきた」

 ボクは素直にそう返す。

 「今日のはね、凄く温かくて、だけどなんでかさぁ、小さなトゲトゲがあって、触っているとチクチクするんだよ」

 「ふむ……、なるほどですね」

 シカクは手に持っていた本をテーブルの上に置くと、椅子から立ち上がってボクの目の前まで来た。

 「チクチクする……んですか。あまり積極的に触れたくはない表現ですね」

 「でも本当の事だし。まぁ、ケガをするっていうような感じではないよ。なんて言えば良いかな……桃の皮、ってイメージ湧く?」

 「桃の皮、ですか?」

 「そう。あれってさ、ほっぺたにつけてこすると、小さなトゲトゲが刺さってチクチクするでしょ? あんな感じ」

 「ますます触れるのに躊躇しますね……。ま、そこまで詳しく感じ取れるのはショッカク、キミだけなんですけど」

 そう言ってボクの抱えているソレを指さして

 「お借りしても?」

 と聞いてきた。

 「うん。はい」

 ボクは素直にソレをシカクに渡す。シカクは優しく受け取ると顔の前に近づけてじっと見つめた。

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