EPISODE1 『自分は、いったい、だれ』

 自分は、いったい、誰なのか。どこから来て、どんな場所へ行こうと思ったのか。そしてなぜ、この世界へとたどり着いたのか。全くもって何一つ、記憶らしい記憶が無い。



 今から少し前、気が付いた時には既に、自分はここにいた。そして目の前には、似たような背格好をした、郵便屋さんの帽子をかぶって肩掛けカバンを下げているのがいた。

 ――『キミは誰? どこから来たの?』

 その問いを頭の中で反芻してみて、答えるべき回答が見当たらに時が付いた時、自分自身がなに一つの記憶が無いことに気が付いた。


 だけど、だからどう、ってことでもなかった。ただ、自分には記憶が無くて、それ以上でも以下でもない。


 ――『ここに来る前の事がわからないってことは、帰り方もわからないでしょ。思い出すまでボクたちと居ればいいよ』

 フゥロ、という自身の名前しか答えることが出来なかった自分に対して、「アノコ」と呼ばれた目の前のはそう言った。周りの他にも似たような背格好のやつらは少しざわついていたけど。


――『じゃ、改めて。よろしくね、フゥロ!』

 アノコ、に差し出された手の意味が、自分にはわからなかった。それを察したのかアノコ、は少し強引に自分の腕を掴んできた。その時、自分の中に一度消えた変なのが再び目の前に出てきて、自分らの頭上をクルクル回ってまた自分の中に消えていった。


 自分の中に消えていったのはなんなのか。どうして自分はここにいるのか。いろいろなことが起きているけれど、何一つ自分にはわからない。


 でも、だけど。


 だから、なんなんだろう。


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