散光標本

最後の装飾 ②

【旅の景色】

さあ一緒に出かけよう

空を 海を 草木を 花を

同じ景色を見にいこう

【夢旅行】

踏み入った瞬間からまるで別世界

なのにこんなに心落ち着く夢世界

不思議ね 音が身体に滲んで溶ける

【家族を結ぶ】

たとえシルバーがくすんでも

たとえ宝石片が欠け落ちても

たとえこの手に皺が増えても

感じる体温は変わらぬままで

36.5度で結ばれてはなれない

【誇り】

朽ちても遺るは骨か魂か死の影か

【水平線に想ふ】

心はそうであったとしても

人間としてここにある限り

この水面から1歩も先へは

まだ行くことはできなくて

せめてあの日みた水平線と

この景色が水面に泳ぐ船が

全て繋がっていればいいな

【あの日の旅】

はじめて空から雪をみた

苦痛からようやく逃げて

辿りついたのは北の大地

凍てつく空気が肺を喰う

優しい場所が心を満たす

【夜包】

海の彼方からやってくる

夜が夜の色を連れてくる

すべてがつつみこまれる

その前にはやくおかえり

【舞台の太陽】

その場にいるものをすべて照らしだせる

まるで太陽のようで眩く隠れようもない

【枯息】

ヒトの吸い殻　死に焚き殻

【隠れ露】

雪解けのあと 水滴達の談笑

いつの日にか 共に降る日を

期待しながら 葉陰でわらう

【落雪】

昨夜一晩降った雪　朝陽に解かされる

一緒に消えて　そんな提案あったかも

【富を殺す】

家族は富か？仕事は富か？

力があってお金があっても

自分自身で得たものですら

簡単に壊す様なあなたには

富など不要だったでしょう

あなたが富だと呼んだ私は

とうに心に傷を負いました

次は私があなたの富を壊す

あなたが富だと呼ぶすべて

処されて道端のゴミらしく

野垂れ死んでしまえばいい

【海の欠片】

様々な紺碧　遠い青碧

世界の海壁　託す白璧

【最敬礼】

新たな冬の女王へ舞を捧げて最敬礼

豊かに揺れているドレスの裾先から

生命の余韻が消えていかないように

【雪の蚕】

大人になれる春を待って高ぶる気持ち

昇れば昇るほど陽に溶かされることも

知らないでいる無邪気な存在、消えて

【一滴】

冷たい雪の降る夜を越えて

見上げた朝日が柔らかくて

雪解けとも涙ともつかない

一滴がこぼれ落ちていった

【忘れない】

あまりにも小さな生命

あまりにも小さな機微

簡単に忘れられるほど

だから君を忘れず撮る

朽ち果てて骸になる迄

【凝縮体】

水 光 雪 時 熱 空 溶 氷

【夢の夜】

水面に反射する光 夢の写鏡のような

水上 散光 時間 夢 あまりに幻想的で

もうすぐこの夢が 冷めることすらも

信じられずにいる もう少し居させて

【仄暗い部屋の朝】

朝日が差し込んで　コップの水に散光

まだまだ世界中は　眩く美しいのだと

暗がりの僕に対し　言ってるみたいで

【枯れた湖畔】

忘れ去られてしまえば

無かったことと同じだ

【徹夜明け】

罪の味が五臓六腑に染み渡る

朝ご飯なら軽減する気がする

【自然色】

あるがままの栄枯盛衰

ただそこに生きるだけ

【護身護心】

悪意から 脅威から 失意から

護ってください、いまはただ

【覚悟の表れ】

正装で来るだけの理由があって

だからこそ呼んでもらえたんだ

神様、どうかこの声があなたへ

届きますように、響きますよう

【理由の所在】

あるかときかれたら「ない」けれど

ないかときかれたら「ある」んだよ

好きの中身は曖昧に「なる」けどさ

【変哲】

彼らはなにということもなく

ただそこにあっただけの景色

気づかなかったらそれまでの

【回想】

あの日の夢を僕達は忘れない

あの日の幸せに満ちた景色も

【飢餓と血流】

秘めた獣の咆哮と激昂が

数多の心臓を貪り食って

それでも尚、喉の渇きは

潤うことなく満たされず

【姿の数と名の数と】

魅せたいものを魅せるため

生きやすく、生きるために

瀬戸際にて、かたちを成す

【水平線でキスしよう】

僕はやっとしあわせになれます

海となり月を望むのが夢でした

人生ではその夢は叶わなかった

でも僕は海になったのですから

生きる姿に理由や固執は不要だ

しあわせならばそれでいいのだ

誰にも分からなくていいんです

どうせわかりゃしないんだから

僕はいまから沖へと向かいます

水平線で僕は月とキスをしたい

【いつか言ってた】

自分の足で踏み出し

今いざ、壁を超える

【染色の意義】

君を慕う僕らしい色

アイデンティティと

誇りと敬愛と、糧を

【猛々雷撃】

この手から生まれ落とせるものなら

すべてを使って世界をつくりあげる