第12話 壮大な目標

 翌日、僕とフィーテはギルドに集合し、作戦会議を始めた。


「まずは、1週間アイテム集めお疲れ様。まず、この1週間の狙いを話すわね……」


 フィーテは指をチョキのような形にして立てた。


「1つ目は、宝物庫のアイテムから装備品を見つけて、レシオの装備を整えること。そして、お宝を売ってお金にすること」


 この1週間で、僕の装備はかなり充実した。今装備している剣と鎧は、ダンジョンで手に入れたものだ。

 そして、貯金もこれまでからは考えられないほど増えた。ざっくり40万ギルほど。


「そして2つ目は、レシオの体力を温存しつつ、基本的な身体能力を高めること。レベル4になったんでしょ?」


「うん。3日前に」


 倒したモンスターはスライム、ゴブリン、ジャイアントバットの3体だったが、ちゃんとレベルは上がっている。


「この1週間は、これから先の2週間のための準備運動みたいなものね」


「2週間? 目標の1か月までにはあと3週間あるよ?」


「その説明のためにも、今日から2週間の目標を発表するわね」


 フィーテはゴホンと咳ばらいをすると、もったいぶった様子で話し始める。


「名付けて――『楽々レベルアップの源泉を探しちゃいましょう大作戦』!!」


「……もしかして、1週間ずっとネーミングを考えてたとかじゃないよね?」


「考えてましたぁー。ちぇっ、もうちょっとくらい褒めてくれてもいいと思うんだけどなあ」


 フィーテは咳ばらいを――今度は流れを変えるためにする。


「この2週間で、レベルアップの効率化の鍵になるようなカードを探すの?」


「ちょっと何言ってるかわからないなあ……レベルアップの効率化って何?」


「今持ってる3枚のカードを見ればわかると思うけど、モンスター効果は強力。それこそ、絶体絶命のピンチでも覆せるほどにね」


 僕は腰のカードケースを見やった。

 確かに、カードの効果はどれも強力。これから強くなるために、このカードを使わない手はない。


「そこでアタシは考えたの。もしかしたら、レベルアップの効率を上げてくれるようなカードがあるんじゃないか、ってね」


「つまり、レベルアップを助けてくれる効果を持つモンスターを見つけるってこと?」


「そういうこと。あるいは、効率が上がるコンボを見つければいいの」


 なるほど、それならレベル30も目指せるかもしれない。


 多くの人が、何年も時間をかけてレベルを上げる。レベルは、数字が増えれば増えるほど上がりにくくなっていくそうだ。

 だから、時間をかけないでレベルを上げるためには、何かしらの工夫をしなければならない、というわけだ。


 もし、誰にでも出来るような効率化の手段があれば、既に広まっているはず。それを探そうとするのは期待できない。


 しかし、<カード化>はユニークスキル。新しい方法を開拓できるかもしれないというわけだ。


「で、具体的にどうやるの?」


「そこが問題なのよねー。とりあえずは、ダンジョンのモンスターを倒すところかなって」


 今の僕たちなら、ダンジョンの4層くらいまでなら自力で攻略できるだろう。

 その辺りにいるモンスターを倒して、効率化コンボを探す……か。確かにこれは2週間くらいかかりそうだな。


「まあゴチャゴチャ言っても仕方なし。まずはいつも通りダンジョンに行ってみようか!」


 フィーテの言う通り、ここで考えても答えが出るわけじゃない。

 僕たちはギルドを出て、ダンジョンへと向かった。



 ダンジョンの2層。いつもなら液状化で通り抜けていたここを、今日はフィーテと二人で冒険する。


「じゃあ、モンスターを探すわけだけど……最初はあいつね」


 フィーテが指した方向には、二足歩行の獣がいた。

 コボルトだ。オレンジ色の体毛の、狼のようなモンスター。特徴的なのは、ゴブリンのように人型であることだ。


「よし……やってみるぞ!」


 僕が剣を引き抜き、コボルトに向かって行くと、向こうもこっちの存在に気づいたようだ。


「ウォン!!」


 その時、コボルトは鳴いた瞬間、手に持った何かを横なぎに振るった。僕は咄嗟に後ろに下がる。

 それは、木製の短剣だった。


「なにあれ!?」


「コボルトは人型だから武器を使うよ! 当たると能力強化バフかかってても痛いと思うから、気を付けて!」


 奴の得物に当たらないように、こっちの刃を当てろということか。

 だったら、僕の方が剣の使い方は上手いことを教えてやる!


 僕は再び肉薄すると、剣を思い切り振り下ろした。

 正面からの兜割り。しかし、コボルトは短剣でそれを弾き返した。


「……意外とやるな!」


 今度はコボルトの反撃だ。だが、太刀筋は案外わかりやすく、目で追えば避けることが出来る。

 上からの斬撃。次いで、俺の喉元を狙った刺突。


「そこだッ!」


 攻撃の瞬間に隙を見つけた僕は、剣を奴の首に向かって薙ぎ払った。


 攻撃が――通った! 首を刃が穿つと、コボルトは絶命して膝から崩れ落ちた。


「まずは一枚目、だね」


 コボルトの死体がカードに変わるのを確認すると、僕は裏側に落ちているそれをめくり、内容に目を通した。


「――!?」


 そして、息を呑んだ。

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