第11話 買い取り店にて

 スライムを倒した――記念すべき日から1週間が経った。


 僕はフィーテに言われた通り、宝物庫のアイテムを盗むことに注力した。


「最初の一週間は、カードの補充と宝物庫のアイテムを集めをして、体力を温存するの! 本番は、装備が整ってからだからね!」


 というわけで、僕はこの1週間、スライム、ゴブリン、ジャイアントバットの3匹の討伐のみを行っていた。


「ステータスオープン」


――


 レシオ・ブースト 16歳 男

 レベル4


 スキル

 <カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。


――


 ジャイアントバットはそこそこ強いモンスターなので、レベルは4に上がった。


 だけど……本当にあと3週間でレベル20になんてなれるのか?


 レベル20といえば、冒険者の中でも中堅クラスだ。レベル30になるには、そこからさらに才能が必要と言われる世界。

 もちろん、冒険者になりたての1か月ちょっとの僕がなれるような領域ではない。


「でも、頑張るしかないよな……!」


 強くなるのは、アイシリアに会うためであり、僕のためだ。

 レベル20だって、いつか通る道なら――絶対に、フィーテから提示された目標を超えてやる!


「いらっしゃいませ!」


 いつものように宝物庫のアイテムを買取の店に持っていくと――一人の少女が元気よく挨拶をしてくれた。


「メルラさん、今日も買取をお願いできますか?」


「はい! 喜んでなのです!」


 彼女は、このお店で働いているメルラさん。茶色のショートヘアーと僕の胸ほどまでしかない背丈から、リスのような印象を受ける。

 この1週間でダンジョン産アイテムを売っていたので、すっかり名前を覚えてしまった。


「このアイテムもとても貴重なものなのです! 傷もないので状態は最高ランクなのです!」


 メルラさんはアイテムをじっくりと凝視して、品質を見極める。


「名前は……なるほど、『デモンズアーマー』と言うみたいなのです。そうですね、12万ギルってところだと思うのです」


 『いかがですか?』と促すメルラさんに、僕は即決で頷いた。

 メルラさんの目は確かなものだ。実際、このお店が一番高く買い取ってくれる。


「レシオさん……でしたよね。最近売ってくださったものはどれもダンジョン産アイテムなのです。お強い冒険者の方なのですね」


「いえ、僕はそんな……って、僕の名前、覚えてたんですか」


「はい。毎日来てくださるお客様の名前は覚えているのです!」


 メルラさんはにっこりと優しく微笑むと、2品目の査定に入った。


「このアイテムも、とても状態がいいのです。ペンダントなので、装飾品として人気があるのです!」


「すごい、なんでもわかるんですね」


「私は<鑑定>スキル持ちなのです。店長から査定の仕事を任せてもらっているのは、この力のおかげなのです!」


 メルラさんは子どものようにえっへんと胸を張り、自信たっぷりな様子だ。


「アイテムを見ると、その価値がわかるんですか?」


「価値というよりかは――素材や状態、レア度などなど、いろいろな要素を加味して考えているのですよ」


「レア度?」


「アイテムには、それぞれレア度が割り振られているのです。下からノーマル、レア、スーパーレア、ウルトラレア、レジェンダリーレア。レシオさんの装備や、持ち込んでくださったものは全部レアに該当するのです!」


 あれ――それって。

 僕は懐のカードを手に取って見てみた。


 やっぱり――右上に『ノーマル』って書いてある。

 これって、アイテムのレア度と同じなのか? だとしたら、レア度が高いカードはそれだけ強力な効果を発揮するということだ。


「それは――カードですか?」


 カードを眺めていると、メルラさんがそれに気づいて指をさした。


「まあ、そんな感じです」


「レシオさんはそういうのが好きなのですね。であれば、これをサービスするのです」


 そう言って、メルラさんは奥の棚から箱のようなものを取り出し、僕に差し出した。

 ちょうど手のひらに載るほどのサイズ。一緒に、ベルトのようなものがくっつている。


「それを腰に巻いて、カードを箱に入れてみるのです」


 よくわからないまま、メルラさんの言う通りにしてみる。

 すると、すぐにその意味はわかった。


「なるほど……これ、カードケースか!」


 箱の中にはちょうどカードが入り、ベルトとくっついていることですぐに取り出せる。

 戦闘中、ポケットから出すのは大変だったんだよな。これがあるだけで、ぐっと携帯が楽になった。


「こんな便利なものを、ありがとうございます!」


「ふふ、いつもごひいきにしてくれるからそのお礼なのです。それから――多分、私の方が年下なので、普通に喋っていいのですよ」


「えっ……メルラさ――メルラって何歳なの?」


「15なのです」


 1歳下だったのか――! しっかり査定してくれるから、もう少し上かと思ってた――!


「じゃあ、これが今日のお金なのです。はいどうぞ」


 メルラは僕に23万ギルを手渡してくれた。僕は金貨の数が正しいか、枚数を確認する。


「――確かに、23万ギルだ。今日もありがとう」


「そうだ、レシオさん。今、当店では買取キャンペーンをしているのです!」


 そう言うと、メルラさんは壁に貼られたポスターを示した。


 そこには、『アンデッドモンスター系アイテム、買取強化!』という文字と共に、おそらくメルラさんが描いたと思われる、可愛らしいお化けの絵が載っている。


「実は、今アンデッドモンスターが多く出現しているらしいのです。だから、ギルドからの依頼でアンデッドモンスター関連のアイテムの買取額が上がってるのです! よかったら、また持ってきてほしいのです!」


「わかった。機会があったら持ってきてみるよ!」


 僕はメルラにそう言うと、店を後にした。

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