夕暮れの君と共に ①

「…暇ですね」


「…うん」


梅雨がすぎ季節は、夏に入るこの日

二人は、いつもの様に図書室で当番をしていた。


「そう言えば花園さん

 今日の体育大丈夫でした?

 足怪我していた様ですけど」


「…えっ?何で知って!?」


突然こんな事言ったら驚くよな

まぁ驚いた反応を見たくてわざと

主語を抜いたんだけど。


「俺たち実習で外にいたので

 その時見かけたんですよ」


「もしかして、あの暑そうな所にいたの?」


暑そうな…あぁハウスの事か

確かに今日は、地獄だったな。


「えぇいましたよ」


「そうなんだ…でも大丈夫だよ

 少し転んだだけだから」


「そうですか、保健室に行く様子も見えたので心配してたんです。」


「…そうありがとう

 でも…そんなに私の事見てたの?」


「へっ!?あっいやそんな事は!!」


「あるよ」

「あるよね〜」


幸紀が否定しようとするとそれに待ったをかける声がする。

その方向を見るとそこには、

一色姉妹がいた。


「やっほ〜幸紀っち」

「どうも幸紀くん」


「二人ともどうしてここに?」


「どうしてって…て」

「本を借りる為に決まってるでしょ?」


「あっそうね」


一色姉妹は、そう言って本を選びにいく。

その背中を見送っていると

今まで黙っていた隣の花園さんが

少し機嫌が悪そうに話しかけて来た。


「…仲良いんだね」


「えっ?まぁクラスメイトですから」


「……好きなの?」


「へ!?いやいやそう言うのじゃないですよ」


「でも…名前呼んでた」


「いやそれは、話の流れで」


ふぅんと言って花園さんは、本に視線を戻す。


(何か機嫌が悪いなさっきから

 もしかして嫉妬?…いやいやそれはないか)


「どうしたの幸紀っち?」

「そんな変な顔して」


「そっそんな変な顔してないと思うけど」


そう言って二人から本を受け取った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る