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「にゃー。」


 男性の足元に、ネコがやって来ます。



「悪い、立て込んでいて帰りが遅くなった。ところで、……これはどういう状況だ?」




 と、辺りを見回しました。



 土が掘り返されていたり、シャベルが転がっていたり、鏡が落ちていたり…、散々な有様です。




「ごめんなさい……。おじさんの大事なお花が元気なくて…、元気にさせたくて頑張ったんだけど、全然元気にならなくて……。」



 女の子が、消え入りそうな声で、必死に話します。



「……。」



 男性は、腕組みをしながら、花を見つめています。女の子は溢れ出る涙が止められません。





 やがて、女の子が話し出します。



「おじさんがいなくなって、『あたいがココを守るんだ』って…。」




 震える声で、訴えました。



「そうか、ありがとな。」


 男性は、女の子を見て、にっこりと微笑みます。





 予想外な男性の優しさに、女の子は目を丸くし、やがて大きな声で泣き始めました。



「えーん。ひっぐ、ごめんなざいーーー。」






 女の子は、流れ出る涙を止めようと、必死に手で顔を拭いますが、ちっとも止まってくれません。




 そして、男性は、女の子の頭に手を置き、こう切り出しました。



「花は、そういう時期だ。気持ちだけ受け取っておく。」



 女の子の頭をポンポンと、優しく叩きました。




「えーーん、おじさんいなくなって、ざみじがったー!」



「すまない。挨拶できなくて。」



「えーーーん。」



「よしよし。」と、隣に移動した男性は、背中をトントンと、軽く叩きます。





「にゃーーーー。」



 ネコも鳴きました。





「…キミも、寂しかったか?」



「にゃー。」


 男性の足元から離れません。




「にゃー。」と、鳴くネコの頭をなでる男性の背中に、女の子が、おぶさるように抱きつきました。




「えーん。」


「…まったく……。」



 男性は、天を仰ぎます。





「紅茶を淹れてくるから、少し待ってなさい。」



 無造作に、女の子を引き剥がしました。




「えーん。あたい、麦茶がいいー。」


「にゃー。」




「…キミにはミルクか。」



 わかったというように、頷いた男性が、その場から離れました。










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