第2話

「今日はテスト返しかあ…」

今日はテスト返し。周峯は、意外と天才型で、2週間前から毎回勉強を始めている。そのやり方で、毎回いい点数はとっているのだが怖いものは怖い。

「今度こそ悪い点数を取って来いよ!」

だが、そんな周峯のやり方を姉の澪は、当然いい思いをしなかった。

「まあまあ」

「なんで私のほうが3倍勉強してんのに周峯の点数に勝てないんだよぉ!」

澪の言う点数とは、澪が2年生の時のテストの点数のことだ。周峯は、いつもは、1時間弱。テスト前は、2時間で勉強しているのだが、澪は、テスト前、後関係なく5時間半もやっている。

澪は部活をやっていないので、その分のすべてを勉強に捧げている。

だが、結局困ったときには勉強を教えてくれるいい姉である。

「だから、澪は頑張りすぎなんだって。根詰めすぎると逆効果だぞ?」

「そうかいそうかい。天才にはわからないってかい」

「天才ではないだろすごくいい点数なわけではないし」

「はあ…嫌味だ。よし現実逃避しよう…」


「ついに来たか…」

緊張の瞬間。テストの答案用紙が一気に9枚渡された。

「数学A98点、数学B96点、現代文92点、古文85点、世界史71点、日本史65点、英語92点、生物89点、化学96点」

「しゃかい…むり…」

毎回周峯は社会が苦手で6,70点台を取ってくるのだ。だが、とりあえず高得点を撮れていることに周峯は安堵する。

「またお前は社会か…」

周峯の数少ない友達の犬山悠は、クラスの中心的な人物。きれいな茶色の髪が今日もつやがある。悠は男子の中では、美的な方で、髪の毛や肌荒れを気にしている。

「地理だったら行けるのに!」

「ってか、やっぱ数学すごいな…」

「いつものことだよ悠は?」

「数学A60点、数学B71点、現代文98点、古文99点、世界史100点、日本史100点、英語78点、生物81点、化学76点だよ」

「今回数学は簡単だったぞ?」

「いや、社会のほうが簡単だぞ?」

「「ぐぬぬ」」

「まて、お二人さんよ」

「紬様ぁ…」

「私はオール赤点だ。それに比べればどうってことない」

神々しく降臨してきたのは、悠の彼女の朝比奈紬。テストではいつも赤点常習犯で、こうやって起きた争いを止めてくれる。

「じゃなくてさ、お前赤点って全教科40点以下ってことなのか!?」

「そうだが?」

「悠に勉強教えてもらいなさい」

「親みたいなこと言うなよ~……」

「まあ、紬が良ければ俺はいいけど」

「まあ、悠君がいるし頑張りますか」

テストでは、赤点常習犯だが紬が5年間ほどやっているテニスでは全国大会で活躍するほどの実力だ。

「寄り道せずに自分の席につけー。今回のテストで一教科でも赤点をとったら危ないと思えよ。今回の平均点は52点といつもより高くなっている。ゴールデンウィークがあるからって浮かれるなよ」

と厳しめな先生の言葉に、紬は「げぇ…」と、机にもたれかかる。

「紬ー。寝てる暇あったら英単語の一つでも覚えたらどうだー?」

「す、すみませーん」

「はあ…まあ、今年はまだ余裕があるからな存分に遊んで来い」

先ほどのきつい言葉から一転。皆からは、「しゃあっ!」という声が聞こえてくる。

(まあ、俺は、ずっと働かなきゃいけないけどな…)

雪乃の顔を思い出しながら、大きなため息をついた。

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