第7話 再びざまぁ
「うんぁ」
今田は意識を取り戻した。
彼の視界が徐々に明瞭になった。
「あいつは!あの生意気な中森はどこにいる!」
今田は勢いよく立ち上がり、周囲をぐるっと見渡した。
「気絶から目覚めて第一声に俺の名前を出すなんてある意味すごいな」
潤一は壁にもたれながら、苦笑いを浮かべた。
潤一の右手にはスタイリッシュな茶色の学生カバンがあった。
愛莉を保健室に連れて行った後、また戻って来て、今田が目覚めるまで待機してしていた。
「あ?何を言っている?」
「覚えてないの?君は俺の回し蹴りを食らって気絶していたんだよ」
潤一は壁から腰を離し、地面に学生カバンを放置した。
「はっ」
今田は潤一の言葉を契機に記憶がフラッシュバックした。
今田は潤一の回し蹴りを食らい、1時間ほど気絶していた。これは紛れもない事実であった。
潤一は歩を進めた。
一歩ずつ着々と。
「ひっ!?」
潤一の方が自身より圧倒的に強いと記憶を通じて認知した今田は、怯えて後ずさった。
しかし、不幸なことに、数歩下がる途中で、今田はバランスを崩し、尻餅をついてしまった。
今田は立ち上がろうとするが、恐怖で身体がすくんで動かなかった。
そうこうしている内に、潤一は今田の元に悠々と辿り着いた。
「おい」
潤一は今田の胸ぐらを掴み、意図的に低音ボイスを発した。
今田の顔に大量の冷や汗が速攻で噴出した。
「お前が今まで俺にしてきた行いは許してやる。だがな、今後、今日告白していたあの子にも俺にも関わるな。この約束ができるなら、俺は何もしない」
潤一はより一層、腕に力を込めた。
今田の身体がより潤一側に引っ張られた。
「わかった?」
潤一は目が決して笑っていない笑顔を作った。
この笑顔は不思議なことに、彼が無意識に作ってしまったものだった。
「・・ぅん。ぅん。」
今田は息を荒しながら、2度も3度も頭を振り上げた。
「そっか。よかった!約束だよ?」
潤一は今田の表情を確認すると、胸ぐらから手を開発した。
そのせいで、今田は盛大に尻餅をついた。
「今田君どうしたんだろう?」
「本当だね。もう1週間も学校に来てないよ。今まで無遅刻無欠席だったのにね」
女子生徒が2人で雑談をしていた。
潤一は小説を読み耽けながら、その話に耳だけを傾けていた。
彼らが口にした通り、今田は愛莉に告白した日を境に学校に登校していなかった。
しかも、先生に連絡は一切寄越していないそうだ。
今田は潤一と丸井三波と同様、不登校に陥ってしまった。
その理由はおおよそ推測が可能だった。
しかし、今田が愛莉に告白した事実は潤一と愛莉と今田しか知らない。
そのため、誰が今田を不登校に追い込んだのかは、これら3人に話を聞かない限り、謎に包まれることになるだろう。
潤一はアンテナを張り、次から次へと発生する今田の話題に何度も耳を傾けた。
その話を聞くたびに、不思議と彼の気分は良くならなかった。
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