恋人なんだから


「や、やっと終わった……」


 文化祭前日。色々なことがありすぎてなかなか進めることができなかった文化祭の準備をようやく終わらすことができた。二人しかいない文芸部とはいえ、ここで手を抜いてしまったらこれから誰も入部しなくなるかもしれないし、やっぱり出すんだったら良いものを完成させたい。


 そんなことを思ってあれこれこだわった結果、下校時間ギリギリまでかかっちゃったんだろうけど。


「お疲れ様です、先輩。いい感じに仕上がりましたね」


「ああ、花蓮も色々手伝ってくれてありがとな」


「いえいえ、これくらい当然です。では先輩、無事終わったご褒美にぎゅーしてあげますね」


「え!?」


 真顔でそんなことを言った花蓮は俺のことをぎゅーっと抱きしめてきた。突然のことで俺はびっくりしてしまうも、なんだかこうやって花蓮に抱きしめてもらうことがクセになってしまったのかとても心地よく、つい身を委ねてしまいそうになる。


「先輩、どうですか?」


「い、いや……すごくいいけどさ。花蓮にこんなことさせるわけにも……」


「何を今更。いっぱい泣いていたじゃないですか」


「そ、それは……」


「それに、今の私たちは恋人同士。これくらい、些細なことですよ。こんなことだって、しちゃいますから」


 花蓮がクスッと笑うと、突然俺の頰にキスをしてきた。あの時激しくキスをしあったとはいえ俺はキスに慣れているわけじゃない。だからされた時にびっくりして心臓が飛び跳ねそうになるし、顔は自分でも分かるくらい真っ赤になっていた。


「ふふっ、顔真っ赤にして可愛いですよ先輩」


 してやったりという顔をしながら、花蓮は抱きしめるのをやめて人差し指で俺の頰をつつき始める。くそ、なんかやられっぱなしってのも嫌だな。花蓮も照れさせたい。


「花蓮だって可愛い」


「え?」


「相変わらずすごい美人だし、スタイル抜群で肌も白くて髪も綺麗で、本当に可愛いと思っている」


「い、いきなりなんですか先輩」


 唐突に誉め殺しし始めたことにびっくりしたのか、花蓮はわずかながらあたふたする。よし、このまま押し切ってしまおう。


「それに、普段クールな感じを出してるけどたまに見せる笑顔が本当に素敵だと思ってる。花蓮の書く小説も、俺は大好きだ」


「せ、先輩……」


「花蓮の彼氏になれて、本当に俺は誇らしいよ」


「!!!」


 ついに我慢の限界がきたのか、花蓮は顔を真っ赤にして俺と目を合わせてくれなくなった。あれ、もしかしてやりすぎてしまったか? でもこれ全部本心なんだけどな。


「……先輩、褒めすぎです」


「い、嫌だった?」


「……いえ、すごーく嬉しいですよ。大好きな先輩からいっぱい褒めてもらえて嬉しくないわけないです」


「なら良かった」


「……もう。こんなに褒めて私を辱めた責任は絶対取ってもらいます。文化祭終わったら、一緒にどこか遊びに行きましょうね」


「ああいいよ。花蓮と遊べるの、楽しみにしてる」


「私もです。そのためにも、文化祭も成功させて、事件からも逃げ切りましょう」


「だな。よし、帰ろっか」


 そうして無事に文化祭の準備を終わらせ、花蓮にもやり返すことができて俺は家に帰った。明日の文化祭、うまくいくかなとドキドキしながらも、事件のことが何も進展しないでほしいと願いながら。


 そんな中、ある病院で。


「……あ、あれ……こ、ここ……は?」


「ま、真衣! 母さん、真衣の意識が! 先生を!」


 花蓮に重傷を負わされた真衣の意識が戻ったことなんて、この時の俺は知る由もない。


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