子供っぽい恋愛じゃイヤ(NTR注意)


「ああっ……んんっ……」


「ほんと、そそる顔するよな真衣」


「も、もう……だ、だって、気持ちいいんだもん……」


 地獄はここにあったんだ。そう、二人の会話と行為を覗き見ながら俺は実感した。一心不乱に快楽を貪りあう二人の姿はあまりに衝撃的で、俺はもう息を潜めて隠れることで手一杯だった。


 堂々と部屋に殴り込んで二人を問い詰めるのも選択肢としてあったのかもしれない。でもさ、そんなことしたところでなんの意味があるんだろうか。


「ちゅっ、ちゅっ……えへへっ」


 真衣の透き通るような綺麗な裸体が夏樹を抱きしめながら、舌を絡ませながらキスをしている。当然、俺は見たことがない光景だ。ためらうことなく何度も繰り返しているその様子を見ると初めてではないことは明白で、俺にしてくれた頰へのキスなんて、所詮子供の類いであることを実感させられる。


 こんなのを見てしまったら、もう俺は何を信じていいのかわからない。問い詰めたところで、どうせ真衣は夏樹をとって俺を捨てる。花蓮と選んで買った誕生日プレゼントも、何の意味も持たない。


 俺は負けたんだ。夏樹にも、真衣にも。


「随分と上手くなったなぁ、真衣」


「だ、だって……夏樹がいっぱい私に教えてくれたから」


「ははっ、最初は【明彦を裏切りたくない!】とか抜かしてたくせになぁ」


「そ、それは……な、夏樹が私にいっぱい気持ちいいことしてくれたからでしょ! あ、ああっ、ああんっ!」


「そうだったな、俺が真衣をこんなにしちまったんだったな!」


 キスを終えた後、慣れた様子で夏樹は腰を振り、真衣は気持ち良さそうな声を出していた。激しく肌を重ねる二人の姿を見れば見れるほど、血の気が引いていきどんどん気持ち悪くなる。早くここから離れるべきなのはわかっている、わかっているけど……惨めなことに、身体の力が入らず俺は二人の行為を見続けるしかなかった。


「ほんと、明彦には感謝だな! 真衣みたいな上玉に手をつけないでずーっと放っておいてるんだから。子供みたいな恋愛脳で、大助かりだぜ」


「あっ、んんっ……そ、そんなこと言っちゃ……かわいそうだよ……あっ」


「なーにを今更。こうして俺と浮気してるくせに。真衣だって、子供っぽい恋愛がイヤだから、俺とこうしてセックスしてんだろ?」


「……うん、そうだよ。明彦のことも……ああっ……好き、だけど、夏樹みたいに、ちょっと強引に引っ張ってくれて、気持ちいいこといっぱいしてくれる方が……しゅき」


 豊満なボディを激しく揺らしながら、甘ったるい声で言った真衣の言葉を聞いた瞬間、俺にやり場のない怒りが降り注いでくる。


 俺なりに、真衣のことを大事に思っていた。だから、無責任な性行為なんてするつもりもなかったし、真衣が喜んでくれるのが一番だから、なるべく彼女の意見を尊重するようにした。


 でも、真衣はそれを望んでいなかったんだ。夏樹のように、引っ張ってくれる男の方が真衣はよかったらしい。だからこうして肌を重ねることに何の抵抗も持たずに、甘い声を出し続けて性行為を続けているんだろう。


 ……なら、早くフってくれればよかったのに。


 たくさん、真衣に喜んでもらえるために色々と準備してきた。花蓮と選んだプレゼントも、文化祭が終わった後に一緒に食べるピザの種類も、いつか行きたいねと話していた遊園地のプランも。


 でも、全部二人に言わせれば子供っぽい恋愛なんだろう。そんなものに満足できないから、真衣は夏樹を選んだ。そんなことに満足しないことを知っていたから、夏樹は真衣を手なずけることができたんだろう。


 所詮、俺は真衣にとってつまみ程度の存在だったんだ。たまに味わえればいいくらいの扱いで、本命は夏樹。俺とのこれからなんて、何も考えていなかったんだろう。だから、俺が来ることなんて考えもせずに、家の鍵も閉めないでひたすら快楽を求めているんだ。


「ははっ! 誕生日だってのに彼氏と会わないで俺とこんなことしてるビッチらしい台詞だな、真衣!」


「ああっ……ああんっ! う、うるさい……! こ、こんな私にした夏樹が悪いの……! も、もっと……もっと激しくして!」


「いーねー、ならお望み通り……ほらっ!」


「!!!!!!!」


 俺が見ていることなんて思いもしないで、二人の行為はどんどん激しくなっていく。夏樹は近くに置いていたスマホを取り出してハメ撮りを始める始末。真衣はよほど快楽に溺れてしまったのか、もう声にもなっていない喘ぎ声をひたすら発し続けていた。


「もうイクぞ、真衣!」


「いいよ……出して!」


 そこから先は、もう頭に霧がかかったかのように何も認識できなかった。ただ、二人が行為を終えてこちらに気づくかもしれないと本能が感じたのか、真衣の家から出て行ったことだけは分かった。


 足元がおぼつかない。どこに向かっているのかもわからない。雨が降っているのか、俺の足元が濡れている。何だか、大きな音が聞こえてくる。うるさいなぁ……でも、まぁいっか。もう何もかもどうでもいい。これから先のことなんて、俺には関係のないことだ——


「先輩!!!」


「……あ、あれ?」


 突然、身体が後ろに引っ張られる。その反動で俺は地面に倒れ、顔が真上を向く。その視界に写ったのは、息を切らしながら青ざめた表情をしていた、花蓮の姿だった。


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