第33話 評議会の理 ②
翌朝。
「リオさんが目を覚ましたってホントですか!?」
「おやおや、病院では静かにお願いしますよ」
サマンタランからリオが意識を取り戻したという報告が来てから僅か一時間後、リオの病室へ駆け込むようにドクターとヒデが来た。
だがしかし、リオが寝ている筈のベッドにはリオがいない。
「おい! リオはどこだ!?」
「あらあらまあまあ落ち着いて下さいヒデさん」
「リオさんを何処に連れてったんですか!」
「う〜〜ん、ドクターも落ち着いてくださいー」
物凄い剣幕で問い詰めてくるドクターとヒデに、いつもひょうひょうとしているサマンタランも流石にタジタジである。
魔法で無理矢理引き剥がしてから、改めて二人に向き直った。
「リオさんはちゃんと目覚めましたとも、正確には今から約六時間前です。深夜でしたので連絡は控えさせていただきました。
それから、今リオさんが何処にいるかですが……リハビリテーションにいます」
「「え?」」
「何せ二ヶ月半もカチンコチンでしたからねぇ、筋肉が弱っているのですよ。まあ今日は一日リハビリを頑張るらしいのでお見舞いは明日以降の方が良いでしょう」
「あ、あはは。そうですか、リハビリ……ですか、ハハハ」
ヘナヘナと近くの椅子へ崩れ落ちるように座り込むドクター。対してヒデはいつの間にかその場で倒れて寝ていた。
サマンタランがヒデを診察したところ、ただ寝ているだけなのだそう。ここ最近の睡眠不足が襲ってきたのか、安心して眠くなったのかはわからないが。ヒデはベッドに移してこのまま寝かせておこうとなった。
「リハビリですが、おそらく一週間もかからずに元の状態へ戻せるでしょう」
「そんなに早くですか!」
「えぇ、エーテルの氷が保存能力が高いというのがワタクシの見解ですが、まあまだ実証できていないので話半分に聞いてください」
「はい」
「それと、リオさんから言伝があります」
「言伝ですか」
「はい、彼凄いですねぇ、目を覚まして間もなく行動を始めてらしたんです。中々意思と使命感の強いお方です」
「リオさんはなんて言ってたんですか?」
「正確にはお願いです。リオさんはあなた達に頼みたいと言っておりました」
彼のことだからおそらくベクタークイーンか援軍の話だろう。何をするつもりなのかはわからない、しかし無意味な事はさせない筈だ。
僅かに逡巡した後、ドクターは「聞かせてください」と言った。
「今すぐエーテル界へ飛んで欲しいとの事です。期限は一週間、詳細なデータはブリタニア号にありますのでそれに従って移動してください」
「わかりました。でもリオさんは何をするつもりなんですか?」
「評議会へ直談判するそうです」
――――――――――――――――――――
五時間前、リオが目を覚ましてから数十分後、寝起きの頭をこき使いながら、サマンタランとリモートでお見舞いに来たドラゴニア国王から諸々の事情と最近の情勢、そしてドクター達の苦難を聞いていた。
一連の話を聞いてから、リオはう〜んと考え込んだ。
「そっかぁ……うーむ、ドクター達には改めてお礼言わないと」
「彼女達も貴方に会いたがっていますよぉ」
「それはもちろん俺も」
「明日には面会できるようにしておきますよぉ」
「私も改めてリオ殿に謝罪と感謝を伝えたい」
「あまり気にしなくてもいいですよ、それより聞きたい事があるのですが、サルベージしたガリヴァーのデータは解析しました?」
「えぇ、もちろん。我々ラボラトリーが隅々まで解析しましたとも」
「なら俺が書いた計画書も見たな?」
「はいそれはもう、中々興味深かったですよ」
「すまない、話が見えないのだが」
ただ一人、ドラゴニア国王だけがわけがわからないと首を傾げている。どうやらこのサマンタランという男はガリヴァーのデータをまだどこにも共有していないらしい。あっさりリオやドラゴニア国王の目の前で解析したと認めているところから、独占するつもりも無いようだ。
「単刀直入に聞くけど、あの計画は成功すると思うか?」
「あのままですと不可能ですが、各方面の有識者を集めて細部を詰めれば可能性はあります」
「そのためにまず何をすればいい?」
「評議会を動かすのが一番です」
「お前達は一体何を企んでいるんだ? 今の評議会は過剰と言ってもいいほど保守的で中々動かすのは難しいぞ」
二ヶ月も評議会と戦って、かつ未だアルファースへの援軍を出せないでいるドラゴニア国王の発言だ。重みがある。
しかしリオもまた無策というわけではない。
「ドラゴニア国王、今から俺が言う計画を聞いてください」
「あぁ、この際だ。とことん付き合おう」
「ありがとうございます……俺は、評議会に俺が立案した計画を提案します」
「ふむ、どのような計画だ?」
「それは……」
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